平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第28回

このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。

条項 4.8 製品の識別及びトレーサビリティ
どのレベルの部品にまでトレーサビリティを確保するかは下位標準にゆだね,基本的な考えた方を記述している。

  1.  製品の識別
    • 1)会社は,製品が工程にある場合,半完成品の場合,完成品の場合,検査・試験にある場合,梱包,品質監査下にある場合のすべての場合において,製品の識別に必要な手順を確立し,維持する。
    • 2)すべての契約型商品には,顧客から注文書に割り振られた連続した認識番号がつけられている。この番号は,すべての会社のスケジュール表,計画書,製造工程仕様書およびすべての関連した記録に使用される。
      製造工程の終わりには「製造流動表」を完成させる。
    • 3)会社は,すべての完成品には個別の製品番号(機番)をつける。
      この製品番号(機番)により,製造,検査および出荷に至るすべての工程で,製品別に識別ができる仕組みになっている。
    • 4)工場は「製造流動表」を使用して,製造段階のすべての工程から梱包に至るまでの製品の合格・不合格の記録をとる。
      梱包終了後に「梱包票」を完成し,そのコピーを送品コンテナーの中に添付する。
    • 5)工場には,不適合品の回収についての手順書が存在し,1週間以内の製品については,識別ができるようになっている。
    • 6)会社は,購買先および外注加工先に対して,資材の識別方法について指示書を発行し,購入品,加工品,材料の部品番号,部品名を現品票,マーキング表示,ラベル表示,札表示などを使用して確実に実施させる。
  2. トレーサビリティ
    • 1)会社は前述1.項の製品に付与する製品番号によって,トレーサビリティ(追跡性)を確保する仕組みを確立する。
      このトレーサビリティ管理は,重大な品質問題が発生した場合には,必要製造工程にまで遡って,製造ロットを追えることを確実にする。
    • 2)この製品番号に基づいて,製造工程履歴,製品検査結果履歴および購入品,加工部品のロットが追跡できるようにする。
    • 3)トレーサビリティが顧客の要求条件の1つである場合には,顧客別に製品の識別とトレーサビリティ記録を作成する。
    • 4)この識別の結果は記録すること。詳細は,トレーサビリティ管理標準に基づく。

サポート文書類
トレーサビリティ管理標準 QM 0703

条項4.9 工程管理
製造メーカーにふさわしく“工程管理”については詳述している。

  1. 会社は,新製品の導入において,旧来の製造設備と工程が共通使用できるような工程管理を極力推進する。
  2. 現有の設備に据付け変更や工程変更がある場合,文書による変更管理を着実に行い,特に検査と試験に関しての変更は,直接品質に影響するところが大きいだけに重点をおいて管理する。
  3. 会社は工程管理の要諦を製造仕様書に記述する。
    この製造仕様書には,製造工程における重点ポイントが記載されており,該当業務を通じて製造に関係する全従業員に徹底される。
    製造仕様書には次のことが含まれている。
    • 1)部品構成表。
    • 2)製造工程。
    • 3)図面と参照文書。
    • 4)検査規格および試験基準。
    • 会社には3種の製造仕様書が存在し,それぞれ色によって識別している。
    • 1)基本仕様書   →赤色
    • 2)少量生産仕様書 →緑色
    • 3)その他仕様書  →青色
  4. 会社は,工程管理および機械,設備装置の管理などに統計的手法を活用する。
    この統計的手法には工程能力チャート,X-R管理図,パレート図,ヒストグラム分析などが含まれる。
  5. 会社の製造工程は次の通りである。
    • 1)工場のサブ組立部門は,加工図,作業指示書に基づき,加工工程順ごとに加工を行う。
      • ① 重要な加工工程については設備の精度を定期的に点検し,精度を維持する。
      • ② 重要な加工機は,毎日作業開始前に日常点検を行う。
      • ③ 治工具は置き場所を定め管理する。
    • 2)工場の組立部門は,組織図,作業指示書に基づき,組立工程順に組立を行う。
      • ① 組立作業は,組立図または作業標準吾に基づき,加工部品および購入品を組み立て,1台の製品に仕上げていく。
      • ② 組立工程のなかで重要と思われるところではチェックポイントを設け,品質検査を行う。
    • 3)工場の組立部門は,試運転後の製品(本体製品)について,1台ずつ製品検査を実施する。
    • 4)品質管理部は,社内立会いを行い,顧客の仕様と製品の仕様(性能仕様を含む)合否を確認する。
      • ① 仕様に問題があるときは,営業部が顧客と契約内容の見直しを行う。
    • 5)工場の組立部門は,最終検査としての製品検査を行う。
      • ① 品質管理部は,組み立ての検査結果に基づき「検査成績表」を作成し,「出荷チェックシート」に基づいて「出荷承認書」の承認を行う。
      • ②品質データ(検査成績表など)の取扱いは条項4.16の通りに実施する。
    • 6)生産部の組立部門は,定められた標準に基づき,錆止め・梱包を行い,運送業者へ引き渡す。
  6. 各工程の責任部門は,製造・据付け・付帯サービスの各工程については,例外処理を含めて管理し,維持する。
  7. 品質管理部は,品質に関することの最終責任を負い,生産管理部は納期に関する最終責任を負う。
  8. 工程終了後の検査および試験では検証できない工程は,工程の規格に適合しているかどうか確認できる方法で監視管理する。
  9. 工程管理項目には次の事項を含む。
    • 1)製造・据付け・付帯サービスの方法を明示した手順書(作業標準など)を備えていること。
    • 2)製造・据付け・付帯サービスのための適切な設備を使用し,適切な作業環境を保つこと。
      • ① 設備台帳,計測器台帳,レイアウト図が存在し,台帳管理,維持がなされていること。
      • ② 設備の運転要領書,保守点検要領書,取扱説明書が完備されていること。
      • ③ 設備は毎日始業点検を行い記録が残っていること。
    • 3)使用する規格,標準,品質計画書,手順書(作業標準書)に適合した作業と管理が行われること。
    • 4)製造・据付け・付帯サービスのあいだ,適切な工程の変動条件および製品特性を監視・管理すること。
    • 5)必要に応じて工程および設備を承認すること。
    • 6)作業の出来栄えの基準を,できるだけ明確な実際的な方法で,たとえば規格書,標準見本,図解などで規定すること。色,塗装,板金仕上げの出来栄えなどの官能特性については「限度見本」による。有効期限などの管理は,品質管理部が行う。
    • 7)設備を適切に保全して,工程能力を確実に継続させること。
      認定された工程,設備,作業者については,適宜,記録を維持すること。
  10. 日常管理については次の通り行う。
    • 1) 生産管理部は,製造工程の日程を立案し,発行する。
    • 2) 生産管理部は,加工および組立日程の維持をはかり作業実績を報告する。
    • 3) 生産管理部は,問題が発生した場合は,関係部門と協議の上,調整を行う。

サポート文書類
工程管理標準 QM 0501
設備管理標準 QM 0202
治工具管理標準 QM 0203
限度見本管理標準 QM 0810
受入検査標準 QM 0809
工程内検査標準 QM 0204
出荷検査標準 QM 0811
仕様書管理標準 QM 0601

条項 4.10 検査・試験
受入検査,工程内検査,最終検査および出荷検査について基本的な手順を詳述している。

  • 4.10.1 一般
    1. 会社は,製品に対する規定要求事項が満たされていることを検証するために,次の各段階において定められた規定に従い,検査・試験を実施する。
      • 1)購入検査:購入品,材料および外注加工品の外部からの受入時に検査を行う。
      • 2)工程内検査:製造工程中に検査標準にそって検査を行う。
      • 3)最終検査(出荷検査):出荷の可否を決定するために最終検査を行う。
    2. 検査記録は,条項4.16“品質記録の管理”に従って管理する。
  • 4.10.2 購入検査・試験
    1. 品質管理部は,すべての納入部品について,受入検査および試験を含む何らかの方法による検証を行う。
    2. 購入検査および試験は,受入検査標準にそって実施される。
    3. 購入検査で不適合品が発見された場合は,検査担当者は検査不合格連絡票を作成し受入検査標準に従って処置する。
  • 4.10.3 工程内の検査・試験
    1. 各製造部門は,検査および試験の方法を明確にした工程内検査標準に従って工程内の検査および試験を実施する。
      各製造部門は,工程内検査および試験が実施された証拠として,検査スタンプを製品またはその付属文書に押す。
    2. 各製造部門は,検査および試験の終了後,記録をまとめ,定められた期間保管する。
      すべての不適合品は不合格ラベルで識別し,赤色の「NG」とマークされた不合格品箱に収納される。
      合格品には,検査スタンプが製品かその付属文書に押され,はっきりと識別される。
  • 4.10.4 最終検査・試験
    1. 組立部門の検査担当者は,製造工程での作業が完了した製品に対し,最終検査として製品検査を実施する。この検査は,工程内検査標準に基づいて実施され,その製品が顧客の要求事項に適合していることを確認する。
    2. 品質管理部は,工程内検査標準に従い,工場において実施した製品検査の記録を検閲することにより,出荷検査を完了する。
    3. 顧客の要求による製品の立会検査がある場合は,立会検査も製品検査の1つに含める。
    4. 品質管理課長は,出荷検査終了後,出荷可否の判定を行う。
    5. 品質管理部は,組立の検査結果に基づき「検査成績表」を作成し,「出荷チェックシート」に基づいて「出荷承認書」を作成する。
  • 4.10.5 検査・試験の記録
    1. 各製造部門は,受入検査および工程内検査の結果を記録に作成し,おのおのの責任で,定められた期間保管する。
    2. 品質管理部は,出荷検査の品質記録をチェック後,4.16の条項に従って保管する。

サポート文書類
受入検査標準 QM 0809
工程内検査標準 QM 0204
出荷検査標準 QM 0811
品質記録管理標準 QM 0812