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平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第7回
このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。
条項 4.2 Quality system(品質システム)
条項 4.2.1 General(一般)
- 【ポイント】
- ① ISO 9000シリーズ規格の要求事項に適合する文書化した品質システムを確立,維持する。
- ② 文書化した品質システムを総括的に書き表した品質マニュアルを作成する。
- 【背景】
- ① 日本ではややもすると文書化されずに,暗黙の了解のもとに仕事が進められることが多いが,ISO 9000シリーズ規格では,きちんと文書化することを求めている。
- ② 文書には「品質マニュアル」を頂点とする各種標準類があるが,誰が読んでも理解できるように平易な文章で記述し,特に5W1Hを明確にする。
- ③ 従来の日本式の品質管理で培ってきた品質システムは極力そのまま使い,ISO 9000シリーズ規格による品質システムとの融合をはかる。
- 【企業内実施例】
- ① 品質マニュアルが作成されている。
- ② 品質マニュアルを関係者に徹底する方法が定められている。
- ③ 品質マニュアルに盛り込まれた規程,基準,ルールが徹底され,実行されている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 品質マニュアルを見せてください。
- ② 品質マニュアルに盛り込まれた規程,基準などの説明をしてください。
- ③ 品質マニュアルの配布先を見せてください。
- ④ 品質マニュアルの改訂の履歴を見せてください。
- 【不適合】
- ① 品質マニュアルにISO 9000規格の条項4.1~4.20に対応した内容が盛り込まれていない。
- 〔注〕品質マニュアルと現状の不一致(たとえば職制名など)は数カ月以内なら良しとする。ただし品質マニュアル改訂の基準があり,そのように規定されていること。
条項 4.2 Quality system(品質システム)
条項 4.2.2 Quality system procedures(品質システムの手順)
- 【ポイント】
- ① ISO 9000シリーズ規格の要求事項および品質方針に適合する手順書を作成する。
- ② 作成した手順書,品質システムを効果的に実行する。
- 〔注〕ここでいう手順書とは第2次,第3次文書のことをいう。
- 【背景】
- ① 品質マニュアルは品質システムを概略,説明しているにすぎず,業務の実際は手順書を 書き表しておかなければならない。
- ② どのような業務を手順書化するかについて,各企業で十分に検討しておくことが重要である。ややもすると過度に手順書化してしまい,結局,実際の業務に活用されないケースも出てくる。
判断基準としては,ISO 9000シリーズ規格の要求事項は最低限文書化しておく必要がある。 - 【企業内実施例】
- ① 手順書として文書化すべき業務が決まっている(なんでもかんでも文書化するということではない)。
- ② 手順書が作成されている。
- ③ 手順書の実行に必要な帳票類が定められている。
- ④ 手順書を関係者に徹底する方法が定められている。
- ⑤ 定期的に手順書を見直し,時代に応じた技術,技能,装置,計測に改善している。
- 【審査時の質問事項】
- ① 手順書などの標準書類の一覧を見せてください。
- ② どのような業務を手順書化しているのか説明してください。
- ③ 手順書などの標準書類をどのように従業員に教えていますか?
- ④ 従業員が手順書通りに仕事を行っているかを,どのようにチェックしていますか?
- ⑤ していなかった場合の再教育について説明してください。
- 【不適合】
- ① ISO 9000シリーズ規格の要求事項が文書化されていない。
- 〔注〕文書化の程度は,業務内容,従業員レベルなどによって各企業が判断する。
条項 4.2 Quality system(品質システム)
条項 4.2.3 Quality planning(品質計画)
- 【ポイント】
- ① 要求品質を満足させるためにその方法を明確にし,文書化する。
- ② 品質規格を,他のすべての品質システム要求事項と矛盾することなく,かつ実施方法に 適した様式で文書化する。
- ③ 品質計画書を作成する。
- ④ 製品,プロジェクトまたは契約を満足するように,時宜を得た配慮をし,そうした活動の品質記録を明確にして作成する。
- 【背景】
- ① 今まで製造していた製品,あるいは今まで供給していたサービスとは異なった新製品,新サービスを計画するときには,それまで考えられなかった品質問題が起こる可能性がある。
- ② 特に新材料の活用,新設備の導入,新技術の採用,新構造の採用などにあたっては,常にこうした危険を抱えていると考えなければならない。
- 【企業内実施例】
- ① 品質計画書が作成されている。
- ② 品質計画書を作成する基準が(どのような場合に品質計画書を作成するかを含めて)制定されている。
- ③ 管理手段,工程,検査装置,取付具,資源および技能が明確になっている。
- ④ 製造中の検証方法が決まっている。
- ⑤ 購入品の受入基準が明確になっている(主観的要素も含めて)。
- ⑥ 品質記録が明確になっており,作成されている。
- 〔注〕ここで品質記録とは,個々の製品,サービス,契約またはプロジェクトについての品質業務,経営資源および活動順序を定めた文書のことをいう(ISO 8402の3.15項.ISO 9004-1の5.3.4項)。
- 【審査時の質問事項】
- ① 品質計画書を見せてください。
- ② 品質計画書を作成する基準について説明してください。
- ③ 製造中の検証活動を聞かせてください。
- ④ 主観的要素の受入基準を見せてください。
- ⑤ どんな品質記録をとっていますか?
- 【不適合】
- ① 品質計画書が作成されていない。
- ② 品質記録が明確にされていない(品質記録としてどのような記録をとり,作成しているかが明確になっていない)。
条項 4.3 Contract review(契約内容の確認)
条項 4.3.1 General(一般)
- 【ポイント】
- ① 契約内容確認の手順を確立し,それを文書化し,維持する。
- 【背景】
- ① 顧客の仕様書を吟味せずに受注して,あとから自社内の工程能力不足から契約不履行とならないように,受注するまえに社内の関係部門とよくその仕様を検討しておくことが大切である。
- ② このような契約内容の確認の手順を文書化することによって,その業務の必要性を明示するとともに,確実に実施する基盤を作る。
- 【企業内実施例】
- ① 新規・現流品の受注の仕方を定めた基準書がある。
- ② その基準にそってすべての関係部門で受注検討が実施されている。
- ③ 受注に際して事前検討すべきチェックリストがあり,すべての項目が確認されている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 今まで受注した契約の注文書を見せてください。
- ② 受注の窓口,情報の伝達ルート,決裁部門を説明してください。
- ③ 仕様書の検討の仕方を教えてください。
- ④ 問題を含んだ受注の場合の対応の仕方を説明してください。
- 【不適合】
- ① 受注の情報が窓口部門のみに止まっており,たとえば技術部門に直ちに伝達されていない。
条項 4.3 Contract review(契約内容の確認)
条項 4.3.2 Review(内容の確認)
- 【ポイント】
- ① 顧客からの要求事項を明確に文書化する。
- ② 見積時と異なる要求事項はすべて解決し,それを達成する能力が社内に存在することを確認する。
- 【背景】
- ① 製品には市場型製品と契約型製品とがあるが,市場型製品の場合はすでに市場に出回っているものをカタログを見て注文してくる場合が多いため,ここでいう内容の確認はほとんどされない。契約型製品の場合は受注生産することが多く,設計に入るまえに,ここでいう顧客の要求事項の内容確認をする必要がある。
- 【企業内実施例】
- ① 市場型製品と契約型製品とが明確に区分されている。
- ② 契約内容の確認の仕方が基準書として文書化されている。
- ③ 要求項目を満たす能力を保有しているかどうかを確認する方法が決められている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 契約型製品の受注の仕方を説明してください。
- ② 要求事項を満足させる能力の把握の仕方を説明してください。
- ③ 口頭で受注した場合の文書化の方法を説明してください。
- 【不適合】
- ① 受注した内容が文書化されていない。
- ② 要求事項を満足させる能力の把握がされていない。
条項 4.3 Contract review(契約内容の確認)
条項 4.3.3 Amendment to a contract(契約内容の修正)
- 【ポイント】
- ① 契約内容の修正の方法およびそれに伴う社内への情報連絡,徹底の仕方を定めておく。
- 【背景】
- ① 契約型製品の場合,契約内容の修正があっても,往々にして,要求事項に変更があるにもかかわらず,その吟味が十分にされないことがある。特に技術的な要求事項の変更を見逃すと最終的に大きな禍根を残すことになる。
- 【企業内実施例】
- ① 契約内容修正の仕方が定められている。
- ② 契約内容の修正があった場合の社内への徹底方法が定められている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 契約内容修正の仕方を説明してください。
- ② 契約内容修正の検討に加わる組織はどこですか?
- ③ 契約内容修正後の社内への徹底の仕方を説明してください。
- 【不適合】
- ① 契約内容修正の仕方が定まっていない。
- ② 契約内容修正後の社内への徹底がされていない,または不十分である。
条項 4.3 Contract review(契約内容の確認)
条項 4.3.4 Records(記録)
- 【ポイント】
- ① 契約内容の確認記録を保管する。
- 【背景】
- ① 日本においては,欧米と比較して,契約という概念が一般に薄いといわれる。ましてや契約内容を確認することは,社内でのルールを徹底させないと実行が困難である。こうした困難な要求事項をきちんと実施しているという証拠に確認記録は不可欠なものである。
- 【企業内実施例】
- ① 契約内容を確認した記録が残っている。
- ② 確認記録の保管責任部門が定められている。
- ③ 確認記録の保管期限が定められている。
- ④ 確認記録は見やすく,取り出しやすく管理されている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 契約内容の確認記録を見せてください。
- ② 確認記録の保管責任部門はどこですか?そこへ連れていってください。
- ③ 確認記録の保管期限はどのようにして決めていますか?
- ④ この契約書の確認記録を取り出してみてください。
- 【不適合】
- ① 契約内容の確認記録が保管されていない。
- ② 保管されていても保管の状態が悪い,またはすぐに取り出せない。
- 〔注〕“すぐに”というのは,常識的にいって,保管場所が離れている場合も考慮して,20~30分以内であろう。