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平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第12回
組織レベル
パフォーマンスの人間的側面を効果的に分析するためには、組織全体の状況を確かめる必要があります。組織レベルでは、事業の性格、方向及び運営管理の状況を検討します。(第4章で特定のツールを示します。下記は組織レベルの3つのパフォーマンス変数(variables)に関する議論です)。
組織目標:組織レベルにおける目標は経営戦略の一部です。3レベルと他のパフォーマンス変数(variables)の全ては、組織目標によって確立された方向付けに従って設定されます。この例において、我々が最初に質問したいことは、Computec社は、次のことに関しての決定を反映した明瞭な組織目標を策定していたかどうかです。(1)組織の競争優位性、(2)新しいサービスと市場、(3)製品、サービス及び市場に関する強調点(4)事業に投資するために準備された資源、及びこれらの投資から期待される見返り。この一連の質問を通じて、我々は、Computec社が、明瞭な戦略を策定してこなかったことを悟ります。
会社は2年前まで、古くからある隙間市場(航空宇宙プロジェクトマネジメント市場)を支配していたため、最高経営層は次期戦略の策定や、激しい競争と「平和における経済」に対する準備をしてきませんでした。経営チームは、最近、戦略とその戦略から導かれる全社的な一連の目標の必要性を認識しました。経営者は、この戦略策定分野で行うべきことは多い自覚しましたが、取りあえず次の3つの目標を設定しました。それらは、積極的に新製品を開発すること、Computec社を競合相手から差別化する顧客支援サービスを提供すること、標準ソフト製品の品質と納期における競合相手との不利な立場をなくすことでした。これらの目標は、まだ評価指標をもっていませんが、Computec社が既存の製品とサービスでまだ存続できると思っており、顧客サービス無しでも、競争優位性は価格にある(品質と納期よりはむしろ)と思っている従業員に対し、方向付けを与えます。
組織設計:この変数(variables)は組織構造に焦点を当てています。しかし、我々の言うパフォーマンスのシステム的見方においては、「組織構造」とは、どこに部門の境界線が引かれるとか、誰が誰に報告するか以上のことを意味しています。組織構造とは、仕事がどのように行われるか、それが意味をなすかというもっと重要な次元を含んでいます。Computec社の機能間のインタフェースを示す関係マップを作ることから始めます(Computec社の組織図と関係マップは第4章に示します)。
重要な質問は2つです。Computec社には、戦略を達成するために必要な機能要素は全て備わっていますか?インプット-アウトプットの連係(供給者-顧客関係)は、追加されたり、除去されたり、又は変更されるべきですか?
Computec社は時に新しいサービスを導入しましたが、ほとんど成功してきていません。会社創立時に開発された2つのパッケージソフト製品、及び3つのサービスに依存しています。組織構造は、新製品開発及び導入、製品納入後の顧客支援、注文処理等を迅速かつ効果的に行うようにはなっていません。Computec社の3つの組織目標に基づいて、これら3つの戦略的強化分野を支援するための組織構造を再編成しなければなりません。
組織マネジメント:組織は、効率的なシステムとして機能するため、適切な目標と体制を備え得ます。しかし、効果的かつ効率的に運営していくために、組織は運営管理されなければなりません。組織レベルでのマネジメントには次のものを含みます。
目標マネジメント:全社目標の達成を支える部門目標を設定することを要件とします。組織全体の目標達成に貢献する部門目標の設定がうまくいかないと、以前に述べたサイロ文化の部分最適に陥ります。
パフォーマンスマネジメント:定常的に顧客からのフィードバックを入手し、目標に決められている指標に沿って実際のパフォーマンスを追跡し、そのパフォーマンス情報を該当するサブシステムにフィードバックし、もしパフォーマンスが目標を達成していなければ是正処置をとり、組織が継続的に内外の現実に適応するように目標を再設定することを要件とします。
資源マネジメント:システムを横断して、要員、設備及び予算の配分バランスをとることを要件とします。適切に資源配分することで、各部門はその目標を実現し、その結果、組織全体のパフォーマンスに期待通りの貢献をすることができます。
インタフェースマネジメント:部門間の「空白」が確実に管理されることを要件とします。この領域で、部門間の「縄張り」争いを解決し、効果的で効率的な内部顧客と内部供給者の関係で表せる協力関係を支援する基盤を確立します。
組織マネジネントへの質問は次の通りです。Computec社の経営陣は、目標、パフォーマンス、資源及びインタフェースを運営管理していますか?
Computec社は、この運営管理の分野に問題があります。部門目標の多くが対立し、そして製品開発、顧客サービス及びオーダー処理を中心に置く戦略目標より、どちらかと言うと短期収益を目指しています。会社にはパフォーマンスを追跡し、フィードバックし、及び改善するシステムがありません。資源は「声の大きさ」の基準で配分されて、製品開発、マーケティング及び事業部門の周りのサイロは高く要塞化されています。Computec社の戦略を成功させるには、組織マネジネントの4分野すべてを対象にしなければなりません。