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平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第16回
パート2:3レベルのパフォーマンスの検討
第4章 組織レベルのパフォーマンス
-すべては、すばらしい全体の一部として存在する。
– Alexander Pope
裕福な野球チームのオーナーは、しばしば非常に優秀な選手(かつ年収が高い)を補強し、なぜ自分のチームがワールドシリーズで優勝しないかと不思議に思うでしょう。チャンピオンチームは、個人々の比較においてはしばしば見劣りしますが、ゲームには勝ちます。なぜなら、「すばらしい全体」の方が、個人個人の集まりより強いからです。その差は、勝利チームは、個々のプレーヤーの機能(打つ、投げる、守る)ではなく、チーム全体として運営管理されているというところにあります。
同様に、組織が全体として運営管理されると、個人個人の集まりよりすばらしいことがあります。組織には経験と学問に卓越した要員がいるかもしれません。マーケティング、製造及び研究のような部門は、他組織の同じ部門を基準にベンチマークすると、優れているように見えるかもしれません。しかし、結果は一流企業に比べあまり良くないでしょう。理由は、経営者が機能(部門)や要員をより大きな組織の視点に立って運営管理しないからです。この状況は、部分最適を表しており、全体がその部分の集まりより劣ることになる状況です。組織パフォーマンス(3レベルのレベルⅠ)を運営管理する第一歩は、現在の状況を描写する視点を認識することです。
顧客が組織を見る見方。「この人たちは何をしているのでしょう?なぜ彼らは私の欲しい製品を、必要な時に提供してくれないのですか?利用できると言われたフォローアップサービスは、どこにあるのですか?なぜ私のほうが彼らより製品について知っていると感じるのですか?なぜ私は連絡するたびに、違う人と話をしなければならないのですか?なぜこの人たちは、もっと上手く活動できないのですか?」
供給者が組織を見る見方。「なぜ、どの部品が必要になるかを3日前になるまで分からないのでしょうか?
殆ど全ての注文に対し緊急対応しなければならないので、結局高い額を支払うことになっていることを、彼らは理解しているのでしょうか?
なぜ彼らは仕様を変え続けるのでしょうか?
そなぜ彼らは多くの部品返品の原因となる生産中止を、6カ月毎に複数の製品で実施するのでしょうか?
我々が彼らのビジネスで何が起きているかを学ぶことができるように、我々が我々の費用で彼らのプラントを訪問するという申し出を、なぜ彼らは受け入れないのでしょうか?
なぜこの人たちは、もっと上手く活動できないのですか?」
従業員が組織を見る見方。「なぜ我々は検査を劇的に増加する(天井を突き破るほどコストがかかる)ことによってしか競合相手の品質と肩を並べることができないのでしょうか?
我々がそのサービスに応じ、納期を守る能力を持っていると誰が営業に言ったのでしょうか?
製品開発の要員はこれらのアイデアをどこで考えつくのでしょうか?
では、今週の我々の優先事項は何でしょうか?
セクションのマネージャーは、はなぜ互いに協力しないのでしょうか?
ビジネスを行う方法を変えなければ我々は生き残れないことを理解していないのでしょうか?
月末毎に「いいからそれを出荷しなさい!」と言うトップマネジメントが、どうやって品質が第一であると我々が信じることを期待するのでしょうか?
業界平均以上に給料が支払われるのに、なぜ十分に動機づけされていないのでしょうか?
なぜ我々は、もっと上手く活動できないのでしょうか?」
株主が組織を見る見方。「頻繁に組織の再編成、経営幹部の異動、新製品売出しと改善キャンペーンが行われているが、なぜ私にお金が回って来ないし、株価が上がらないのでしょうか?
なぜこの人たちは、もっと上手く活動できないのですか?」
組織レベルの調査
我々が取り上げた、見通しが暗く多くに共通した状況に効果的に取り組むためには、その状況について理解しなければなりません。組織がどのように機能するかを理解するために我々が見つけた最良の方法は、それを適応型のシステムとして見ることです。第2章(図2.4、p.10参照)で詳しく述べたこの見方は、あらゆる組織がインプット(資源と顧客注文などの)を顧客に提供するアウトプット(製品とサービス)に変換するプロセスを持つシステムとして運用していると主張しています。組織は、市場、競合相手、利用可能な資源及び組織が活動する社会経済的な状況を含む環境と均衡を保つために常時適応を続けます。我々が第2章で議論したように、すばやく適応する組織は成功する可能性が高く、ゆっくりと適応する組織は失敗する可能性が高いのです。
システム的見方は、会社全体とか政府公的機関全体だけに適用されるものではありません。組織の内部を見れば、我々は組織が何重ものシステムの階層で構成されていることが分かります。図4.1が示すように、自動車会社におけるシステムの1つはその製造システムです。製造システムの要素の1つはもの造りのシステムです。もの造りのシステムは多くのシステムで構成され、その1つが予定管理です。このように玉ねぎの皮むきのように組織の皮をむくことによって、パフォーマンスに影響する変数と共に、システムがどう運営されているか、どこまでも詳細に理解できることを発見しています。
図4.1 自動車会社における、組織システムの階層(略)