平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第30回

例が示すように、図6.3における質問の最も有効な使い方に、トラブルシューティングチェックリストとしの使用があげられます。ノー回答の夫々が、「パフォーマンスエンジンの汚れ」とパフォーマンス改善の機会を表しています。我々の経験は、パフォーマンス改善の可能性の発見は、最も高い比率で、遂行者が業務を行う環境(要素1-4)にあることを示しています。それがどの程度かは、業務、産業及び国で少し異なりますが、80%のパフォーマンス改善の機会が業務環境の中にあることがわかっています。通常、15~20%がスキルと知識領域にあり、個人の能力の欠陥に起因するパフォーマンス問題は、1%未満にすぎません。
我々の経験は、パフォーマンスの問題の15%が労働者の問題であり、85%がマネジメントの問題であると主張する)Deming(1982)のものと一致しています。多分、遂行者がヒューマンパフォーマンスシステムの問題点であることが少ないため、一般的なマネージャーがパフォーマンス問題(この章の始めに示されている)に対し、適切に対処していないことが多いと考えられます。
我々は診断ツールとしてヒューマンパフォーマンスシステムとそれに関連する質問を診断ツールとして提示しました。残念なことに、状況を診断することがそれ自身でパフォーマンス改善を引き起こしません。しかし、うまい具合に、診断された6つの要素の中の欠陥(それぞれのノーという答え)が各々に対する処置を提示しています。
明確なパフォーマンス仕様の必要性を検討するに当たり、プロセス要求事項に連係しているアウトプットと基準を規定する業務モデルを作成することを推奨します。(業務モデルフォーマットは第12章に提示されています。)
タスクサポートを確実にするために、明確なインプット、論理的な活動順序、最小の障害及び十分な資源を持つように業務を再構築してください。業務設計は困難ではあるが、ほとんどの大きな組織ではこの領域に関するスペシャリストが居ると理解しています。もしこれらのスキルが利用できないなら、当事者、監督者及びアナリストからなる作業チームを結成することにより、通常、高度な技術なしで、タスク支援障害を取り除くために必要な変化を起こすことが可能です。
望ましい反応を得るため、プラスと受け止められる考課・評価を加え、マイナスと受け止められる考課・評価を取り除くことによって、考課・評価の欠陥は排除できます。こういうと心理学における1つか2つの学位を必要とするように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。業務遂行者は、彼らにとってどんなことが制裁で、どんなインセンティブが彼らに有効かを、聞いてくれる人がいれば積極的に話したいと思っています。この領域に固有の専門的技術を持っていない組織は、この点においても、当事者、監督者、及び場合によってはアナリストを含めたチームの知恵を結集することができます。
効果的なフィードバックシステムを設計することは、より専門的な背景を必要とする傾向があります。しかしながら、非公式のシステムで十分なことが多いと考えられます。目的は定期的、かつ頻繁に特定のパフォーマンス情報を要員に提供する効率的な手段を開発することです。多くの組織の唯一のフィードバックメカニズムは、年に一度の業績考課プロセスです。しかしながら、多くの考課システムがその頻度と具体性という2つの主要なフィードバック領域で弱点を抱えています。正式な業績考課様式やそのプロセスを変えることができないマネージャーかアナリストは、要員が必要とするフィードバックを彼らがそれを必要とする時に与えられる他の方法を開発しなければなりません。
スキルと知識の不足を克服するためには、教室での教育訓練、オンザジョブトレーニング、及び/又は業務援助を提供しなければなりません。教育訓練と業務援助の設計には、専門的知識体系を必要としますが、通常それらのスキルは組織の人材能力開発部の中に備わっています。
個人の能力不足に対する処置は、不足するものの質によります。3つの対応の1つが、人に適応するように業務を変える(例えば、車椅子を備えた職場を再設計する)、業務に適応するように人を啓発する(例えば、ストレスに対処するためのカウンセリングを準備する)、又は業務から人を外す(例えば、彼か彼女を、数学を必要としない業務に移す)の様な、適切化を図ることです。
世の中には、多くのすばらしい薬物治療的な処置が存在します。例えば、教育訓練は効果的な療法です。しかしながらそれは、スキルと知識不足という疾病だけを治療し、たぶん他の5つの苦悩による痛みを緩和しないでしょう。別の一般的な処置は組織再編です。効果的な組織再編は、タスクサポートに対するいくつかの障害を取り除くことができますが、その他のニーズに関しては殆ど何もなさないでしょう。要するに、解決策を実行する前に、何が必要かを診断するべきであるということです。