平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第44回

フェーズ1:プロジェクトの明確化

フェーズ 1へのインプットは、重要経営問題(CBI)とそれに著しい影響与えると特定されたプロセスです。フェーズ1では、重要経営問題(CBI)は、プロセス特有の重大プロセス課題(CPI)に変換されます。例えば、「シェアを32%から38%まで増やす」という重要経営問題(CBI)は「製品を売り出すまでの時間を9カ月に短縮する」などの重大プロセス課題(CPI)につながるでしょう。その重大プロセス課題(CPI)は製品開発プロセス改善プロジェクト(PIP)の推進力となるでしょう。
また、フェーズ1では次のことを特定します。

運営チーム、このチームはプロジェクトのスポンサーが代表を務め、プロセスに関わる組織の部署の責任者から構成されています。チームは活動の方向性を示し、監視し、必要な承認を行ないます。推進チームはフェーズ1に対し責任を負います。
設計チーム、このチームは、プロセスの範囲をこえて活動しており、また必要な変革を行うやる気のある、信頼でき、知識があり、チーム指向の、人達で構成されています。彼らは、分析と設計(フェーズ2)を行い、実施(フェーズ3)に深くかかわることになります。我々は、プロセスの再設計は、部外者によって行われるべきではなく、今実行されているプロセスのやり方に深くかかわり、かつ再設計されたプロセスを実施し、維持していくチームによって行われるべきであると、確信しています。(もしこれらの人達が現在のプロセスをあまりにも知りすぎていることを心配するならば、それは無用です。これらのチームが、彼らの使命が現状を守るものとして見なさないようにし、古い考え方や居心地の良い場所から引き出すのに役立ち、並びに創造的なアイデアを刺激するための手法があります。)

ファシリテータ、そのプロセスの中にいない人達で、役割は、方法論を提供し、推進チームと設計チームの両方を指導し、喚起し、及びアウトプットを文書化することにあります。
プロジェクト目標、それは、重要なプロセス課題より一歩進み、現在及び求められているプロセスパフォーマンスを数値的に規定します。これらの目標には、財務、サイクルタイム、顧客満足、安全、またはプロセスの健全性に関わるその他の指標を含めても良い。
プロセスの境界(開始と終了のポイント)。製品開発や注文遂行のように異なった場所で始まり、かつ終わるプロセスの「適用範囲」は、運営管理可能で、重要プロセス問題(CPI)に該当していることが特に重要です。関係マップ(第4章参照)は、プロセスの境界の確認、及び、すべての重要な部門が推進チームと設計のチームに代表を出していることを確実にする手助けになります。
プロセスの前後関係。前後関係は、プロセス関係マップを通して、このプロセスが影響を与え、及び、影響を受ける関係を表示しています。
プロジェクトの前提条件と制約条件。チームは、基本的な前提条件(顧客の80%は航空宇宙会社であり続けるというような)を理解する必要があり、またどのような解決策(例えば、コンピュータのプラットフォームを再編成したり変更したりする)も許されるのかどうかを知る必要があります。
推進チームと設計チームメンバーに要求されるプロジェクトのスケジュールと期限。

フェーズ2:プロセスの分析と設計

フェーズ2では、設計チームがファシリテータに誘導され次のことを行います。

「Is」(現在)プロセスを文書化します。
「Is」プロセスにおける「断絶(欠陥)」を特定します。「断絶」は、どんなものでもプロセスの有効性や効率を阻害するものです。それは、欠落、不要なもの、又は標準以下の、インプット、ステップ、又はアウトプットです。それは、何か間違ったタイミングで(例えば、同時にではなく順次に)行われるものかもしれませんし、またそれは、間違った組織や人達が行なったり、適切に実施されなかったり、自動で行えばよいところを手動で行うということかもしれません。
断絶の「根本原因」を、必要なら「特性要因図」(石川氏、1982年)や「ケプナー・トリゴー問題分析」(ケプナーとトリゴー、1981)のツールを使用して、分析します。
いわゆる「現状‘Is’からあるべき姿‘Should’へ橋渡しする」一連の活動に取り組みます。
これらの活動の目的は、プロジェクト目標に再び焦点を合わせて、古いモデルを一掃して古い前提条件の正当性を調べ、そして設計チームが分析的な思考から創造的な思考に変わること事を手助けすることです。
あるべき姿“Should” プロセスの手動と自動の両方のステップを設計します。
あるべき姿“Should”に対する、プロセスの終わりと上流に対する評価指標を設計します。
費用対効果分析によりサポートされた勧告をまとめ、推進チームの承認を受けます。
(現在“Is”からあるべき姿“Should”に移行する)高水準の実施計画を策定します。

ソフトウェアとシステムエンジニアリングの会社であるComputec社の現在“Is”プロセスマップ、断絶のリスト、 あるべき姿“Should”プロセスマップ、及び注文遂行プロセスの一連の評価指標の事例については、第5章を参照してください。
大きいプロジェクトでは、フェーズ2は、推進チームの一連のチェックポイントを含み、再設計に関する提案書の提示で最高潮に達します。