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平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第47回
「リエンジニアリング」について
この本の初版が発行されて以来、「リエンジニアリング」が、急速に広まりました。そして、その他の広く使われている言葉のように、それが意味するところの正確さを失ってしまいました。組織の再編、解雇、からコンピュータ・システムの購入までみんなリエンジニアリングと呼ばれています。
元々、Michael Hammer(1990)によって考案され、HammerとJames Champy(1993)によって普及されたリエンジニアリングは、仕事がどう行われるかに関する根本的、基本的、かつ白紙状態からの再検討です。リエンジニアリングは作業プロセスに焦点を合わせているので、この章のテーマとこの本の主要なテーマに直接的に関連しています。
我々の反応。
ちょうどPhilip Crosby(1979)が品質を追求する必要性を会社に目を覚まさせたように、Hammerは業務プロセスを再構築する必要性を人々に気付かせるという大変大きな仕事を行ないました。また、彼は、全ての階層の人達に、kaizen(小さい改善)では彼らが到達する必要があるところへ到達することはないと理解させる手助けをしました。
Hammerはリエンジニアであるというコンサルタント業を生み出しました。彼らの大部分は方法論に疎く、彼ら自身のために再設計を行なうというよりは、顧客のために分析/設計を行い、次の問題解決法が登場し普及するまでリエンジニアリングに取組んでいると思います。
多くの会社では、リエンジニアリングは人員削減の婉曲的な表現として使われています。我々には、二つの関心事があります。一番目は、人員削減や異なった形のコスト削減は、確かにリエンジニアリングの正当な適用の1つです。しかし、あまりにも多くの組織が、プロセスの合理的なリエンジニアリングよりむしろ、従来の「一律20%の削減」というアプローチを取っています。二番目に、組織は、その競争力を削ぐような人員削減を行なう可能性があることです。前向きな会社は、彼らのやり方を続けられると仮定するのではなく、コストを管理して収入増を図ることに、リエンジニアリングの焦点を当てています。
本章のはじめに説明した例のように、我々が既に概説した5段階のアプローチは、積み上げ式改善(微修正)のためのツールであると同様に、リエンジニアリング(根本的な変化)のための実証された方法論です。そのことを知らずに、我々は1985年以来リエンジニアリングのビジネスをしていました。
すべてのプロセスをリエンジニアリングする必要があるというわけではありません。フェーズ0は、どのプロセスが仕事にふさわしいのかを理解させます。フェーズ1で詳細化された重大経営問題(CBI)、重大プロセス問題(CPI)及びプロジェクト目標にふさわしいプロセスは、必要とされる変化の度合いを表しています。フェーズ1は、プロセスがリエンジニアリングされるか、又は調整することにされるのか推進チーム、設計チーム、及び残りの組織に伝達します。ステップとツールは同じであっても、考え方はかなり異なっています。
Hammerの特筆すべき例外はあるが、多くのリエンジニアリング専門家は、彼らの顧客をコンピュータソリューションに誘導しようとしています。我々は、情報技術(IT)の使用による変化はしばしばあるべき姿“Should”の一部であることが分かっていますが、しかし、ITが解決策だとか、さらにそれが解決策のかなり重要な部分であると見なすのは危険です。プロセス再設計において、設計チームが、ITが将来演ずるべき役割を決定します。
もしプロセス再設計が重要な影響を組織に与えるなら、核となるプロセス(それがリエンジニアリングされる必要があるか、徐々に改善される必要があるか、どちらもでもないかにかかわらず)はフェーズ4のインフラストラクチャを必要とします。これについては第13章で議論します。
会社単位で広く展開することに伴う弊害にもかかわらず、リエンジニアリングはビジネスと行政の両方に良い影響を与えました。リエンジニアリングは、ここ30年間のどんな経営理念よりも、パラダイムを大きく変えました。組織の人たちは、業務がどのように行なわれているかを今や日常的に検討しており、「私たちはどうしたらこれをもっと上手にできだろうか?」だけにとどまらず、「私たちは、そもそもなぜこの業務をやるのだろうか?」そして「全く違ったやり方はないのだろうか?」としばしば自問しています。
フェーズ4:プロセスマネジメント
プロセス改善プロジェクトは終わりではなく、始まりです。進行中のプロセスの管理のインフラストラクチャが確立されないと、そのプロセスは調整されていない車の再生エンジンと同じくらい早く破損状態に陥るでしょう。プロセスマネジネントは、鍵となるプロセスが継続監視され、改善されることを確実にするための一連の手法です。このテーマはそれ自体に一つの章に値します。評価がフェーズ4の基礎なので、まず(第12章で)それを説明します。第13章はフェーズ4の二つの部分(プロセスマネジネントとシステムとして組織を運営管理すること)に充てます。
要約
プロセス改善プロジェクトは、最終的にそのそれぞれの目標が達成される組織レベルと業務/遂行者レベルの戦略的目標をつなぐ役割を果たす、プロセスレベルのパフォーマンスを体系的に改善します。パフォーマンス改善ビジネスにおける我々の30年間で、その影響がプロセス改善とプロセスマネジメントの影響と同じくらい深く長続きするツールは他に見出せません。
プロセス改善は決して馬鹿よけには、なっていません。第11章は最もよくある落とし穴について概説します。