平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第5回

パフォーマンスの改善

組織図の空白を運営管理する方法

第1章
序論:アメリカのビジネスが直面している課題


-変化以外に、この世で普遍なものはない。
– Jonathan Swift

地球規模で展開される驚異的な競争、要求を強める顧客、技術革新等、マネジメントへの重圧に関しては、多くの書物が発行されている。これらの重圧を統合するテーマは変化です(冷酷で、多方面にわたる、容赦ない、目の眩むような急激な変化です)。
変化するというメッセージは知れ渡っています。我々は満足しない顧客、自動化の影響又は四半期業績志向主義の危険性についての過去の「戦闘記」は、もはや必要ないと思っています。我々は、十分に気づいています。今や、我々は、何か行動を起こすという、もっと実践的な仕事をする必要があります。我々は、変化への挑戦に直面する必要があります。
多くの企業は、頻繁に次のような一時凌ぎの活動で外部圧力に対処しています。

経営理念、経営戦略を作り発信する。
企業文化変革プログラムを始める。
経営幹部に「リーダーシップ」教育を行なう(巷でよく見られる発展のない「マネジメント」教育に反対し)。
組織全体に品質意識及び顧客意識向上キャンペーンを張る。
従業員に統計的工程管理ツールの教育訓練をする。
作業を自動化する。
規模縮小及び他の形で行われる経費削減運動を意味する「リエンジニアリング」を実施する。

もしマネジメントの目的が、従業員、顧客、株主及びマスコミに、経営者が課題を認識しそれに対して何かしていると見せることにあるならば、上記の活動は目的に沿っているといえるでしょう。しかし、もし包括的かつ持続的に課題を取り扱おうとするならば、改善活動が標榜しているような、性急で表層的な活動を追求するわけにはいきません。
上記のような活動が高い意識のもとに行われた場合、それぞれの活動は断片的な問題又は機会(opportunity)に関わることになります。我々の心配はそこにあります。変化への挑戦(自己主張し要求を強める顧客、どこにでもいる非情な競合相手)を運営管理することは、複雑で困難な課題です。問題への回答になるだろうと思われる断片的な、アプローチは、何もしない位に危険なことです。断片的アプローチは組織を欺いて、あたかも組織のニーズを取り扱っているように思わせ、莫大な資源を吸収してしまいます。

組織の関心がクオリティ、顧客志向、生産性、サイクルタイム又はコストであるか否かにかかわらず、根底にある問題はパフォーマンスです。我々の見方では、ほとんどのマネージャーはパフォーマンスの体系的かつ継続的改善の基盤を作ることに失敗しているので、その課題に効果的に対応できずにいます。我々は、そのマネージャーの欠点はその問題を理解することや、その問題を取り扱う意志や、その問題解決への資源の配分にあるのではないと信じています。そうではなく、大多数のマネージャーは、単純に、組織及び個人のパフォーマンスに影響を及ぼす変数(variables)を、理解していないだけなのです。彼らは、操作すべきそして他の人達にも操作するよう勧めるべき「パフォーマンスのレバー」に気付いていないのです。彼らにこれらのレバーが見えていないとすると、それは多分、実際の業務を反映していない形でビジネス像を描いているからです。
経営幹部とマネージャーは、組織行動の権威者から十分にいろいろなことを言われてきています。それら多くの批評は我々も同意するところですので、それ以上のことを言う必要性を我々は感じません。むしろそのニーズを取り扱えると実証された取組みを、組織の方々と共有する方が、我々にとってより重要な貢献だと思っています。この本の残りの部分は、3レベルのパフォーマンスについて述べています。

3レベルのアプローチは、組織が実際に業務で行なっている活動を反映する世界観に基づいています。
3レベルのパフォーマンスは、(断片的ではなく)包括的な方法でパフォーマンスを取り扱います。
3レベルのアプローチは、マネジメントパフォーマンス改善のレバーを代表する9つの変数(variables)に焦点を当てています。
3レベルのアプローチは、パフォーマンスの単なる理論とか、モデルとかではなく、ツール類も提示します。
3レベルのアプローチは、ヒューマンパフォーマンスと組織パフォーマンスの間の繋がりを解明します。
3レベルのアプローチは、製造業、サービス業及び行政機関における大組織、及び中小規模の組織によって成功裡に活用されてきています。
最後に、3レベルのパフォーマンスを使えば、課題が達成されるであろうという楽観論の根拠を提供します。