044-246-0910
平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第50回
大罪4:トップマネジメントチームは、既存の組織を徹底的に破壊する(「リエンジニアリングする」)をしなければ、大幅な改善はできないと考えています。過去の2年間、プロセスリエンジニアリングの概念は、アメリカ国内に旋風を巻き起こしました。リエンジニアリングの提案者は、我々がどのように働いているかを根本的に、且つ、先入観に捕われずに見ることを提案しています。今の所はうまくいっています。しかしながら、リエンジニアリングは、組織再編、人員削減、又は新しいコンピュータ・システムの導入としばしば同一視されてきました。
我々は、経験により以下のことを知りました。
本来、組織再編によりパフォーマンスが向上することはめったにありません。誰が誰に報告するかを変えること、仕事の仕方を変えることにつながるべきです。しかし、業務プロセス改善は、体制の変化を必ずしも必要とません。実際の所、プロセスに視点を置けば置くほど、組織構造は重要でなくなるのです。アメリカの1年間の組織再編に伴う財務上のコストと精神的コストを見積もることはできませんが、その数字は落ち着きつつあると確信しています。
ビジネスに蔓延している人員削減に対する熱狂は転換期に近づいています。国際競争市場は、過去には隠すことができた無駄を排除することを明確に求めています。しかし、あまりにも多くの会社が、競争優位性を得る武器としてより、品質を扱ったのと同じ方法で、むしろサポート部門の無駄低減ツールとしてリエンジニアリングを使用しています。ダウンサイジングが、名誉の印であるべきではありません。最も成功しているプロセス改善の活動は、自ら創り出した需要増に合わせ、スタッフを維持するか又はふやすことを、会社として可能にしています。
自動化は解決策の一部になることがありますが、それ自身が解決策となることは滅多にありません。最初に、プロセスを直し、それからコンピュータについて議論しなさい。
加えて我々は、「急進的な変化が漸進的変化より必ず健全である」とは思っていません。急進的な再設計、さらに改造を必要とするプロセスもありますがが、そうでないプロセスもあります。重要経営課題が、変化がどれ程の改革が必要かを決定すべきです。現在のプロセスの分析により、将来のプロセスの設計に関する洞察力を手にすることができます。
ダウ欧州社のトップマネジメントは、プロセスリエンジニアリング擁護者による売り込みが終わるまで聴いていました。彼らの応答は「我々が如何に混乱していて、我々が長年かけて築いてきたものを全て捨てるべきだと言う君たちはいったい何者なんだ? 品質とコストに関して改善を図らねばならないことは知っている。しかし、我社は成功しているし、これからの長い道のりとはいえ、我々は非常に上手くやっている。我々は、取りこわすより、むしろその上に構築したいと思っている。」
組織図でいくつの箱が変更されたか、そして、何人のヘッドが入れ替えられたか、どれ位のお金が自動化に費やされたか、又は状況がどう変わったか等の観点でプロセス改善活動の成功を評価してはいけません。問題を解決し、戦略を達成するツールとして、プロセス改善をどれくらい活用したかの観点で成功を評価してください。
もし新聞に取り上げられるような変革や変化に対し準備ができていないなら、「勝利」の数がわずかだとか「勝利」のために時間がかかっても、がっかりしないでください。(第10章の終わりの「リエンジニアリングについて」参照)
大罪5:プロセス設計者は、変化が新しいプロセスで働かなければならない人々にどのような影響を及ぼすのかを、十分に検討しません。プロセス再設計者は、しばしば「夢の空間」のアプローチ(高度なプロセスを構築し…そして実現する)を追っかけます。我々の経験上、そんなことは滅多に起こりません。人々は、どんなに素晴らしく設計されたプロセスであっても、自動的に調和することはありません。
新しいプロセスは、影響を受ける人達が健全でいられる場所か、彼らの能力に対して正しくチェックされる必要があります。工業用ガスの会社は、正確で見事な新しい財務報告プロセスを設計しました。付加価値の無いステップは全て除かれました。直列につながっていた業務が、並列処理されるようになりました。自動化が、流れを加速します。しかしながら、設計者は、この会社又は他のどこにもそのステップを実行できる人は一人もいないという問題を明らかにしました。その会社は、実際の人間の能力に適応するように、プロセスを調整しなければなりませんでした。
一旦そのプロセスが実施可能であると決定されたら、新しいプロセスの中で仕事をする人々とそのマネージャーは、次のことを理解することが必要です。
彼らの仕事はどのように変わるのか。彼らは、コンピュータを使える必要があるのか? 異なった書式に記入する必要があるのか? チームの一員になる必要があるのか? 判断をする必要があるのか?
彼らの評価指標/目標はどう変わるのか?彼らは、顧客満足に関して評価されるのか?チーム内でいかによく機能するかによるのか?予算に対するパフォーマンスによるのか?
新しいプロセスの設計者と実施者は、ヒューマンパフォーマンスシステムの要素-資源、ツール、教育、フィードバック、報酬-が、新しいプロセスをサポートするために、どのように変わる必要があるのかを特定しなければなりません。もし新しい行動が期待されるなら、それは必ずサポートされていなければなりません。
例えば、設計変更された配送プロセスを効率よく行うために、配送マネージャーは、注文、在庫、信用状に関する毎日の情報、新しい手順の訓練、コンピュータの専門技術のサポート、そして“サイロ”内でいかに仕事をよくやったかではなく、販売部門、製造部門、財務部門といかに連携をうまく取ったかということ対する報酬を必要とします。
もしあなたが、仕事と業務環境を変える準備ができていないなら、業務フローを改善することに、時間を浪費してはいけません。私たちは、第2フェーズ、及び特に第3フェーズで、ヒューマンパフォーマンスシステム(第6章参照)の要素に十分に取り組むことで、この罪を避けることができます。