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平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第52回
第12章 パフォーマンス評価及びパフォーマンスマネジメントシステムの設計
-パフォーマンスを評価せずにパフォーマンスは管理できない
– 不明
評価は、プロセスマネジネントと「システムとして組織を運営管理する」ことの基礎となるもので、第10章フェーズ4で紹介し、第13章で説明している継続的改善の基盤を提供します。指示伝達、責任の確立、役割の明確化、資源の割り当て、パフォーマンス評価と監視、3レベルの関連付け、改善処置の実行の基本的なツールは、評価です。
評価指標とそれに関連する目標の選択は、システムとしての組織の有効性を決める大きな要素です。例えば、我々が経験した事例でいうと、塗料を製造し小売店に卸すある組織は、資金と市場シェアを失いつつありました。その基本的な業務のフローは、販売窓口担当者が塗料小売店から注文を取るというかなり単純なものでした。販売窓口担当者は彼らの担当地域配送センターにその注文を出し、配送センターは小売店に塗料を供給します。配送センターは、製造工場から塗料を取り寄せることで塗料を補給します。
我々は新任の事業部長と話し合いをして、次のことが分かりました。
販売窓口担当者は、予約数(注文数)に基づいて評価される(そして報酬が決まる)。
配送センターは、出発する前のトラックが満載かどうかの程度、出荷時の負荷率に基づいて評価される。
製造工場は、一製造ライン毎の塗料の生産高、生産効率に基づいて評価される。
もしこれらの各部門(販売、配送、及び製造)を単独に見るならば(サイロとして)、この評価指標は意味を持ちます。しかし、ビジネスのパフォーマンスに関してこれら評価指標の効果を見てみましょう。配送センターの評価システムによって、製品出荷日は顧客が製品を必要とする時ではなく、トラックが満載になる時によって決定されました。その結果、納期が遅れることになりました。製造工場の評価システムの結果として、製造ラインは別の製品に切り換わる前に多量の製品を製造しました(生産効率を最適化するために)。工場が別の製品を製造している時、配送センターは、現行の注文を満たすために、頻繁に在庫を補充する必要がありました。結果は再び納期遅れでした。この状況においては、内部効率の評価指標が、顧客満足の指標より優先されています。だれがこの評価システムの被害を受けることになるのでしょうか?先ずは顧客ですが、最終的には会社ということになります。
すべての組織は、十分すぎる程の財務指標のネットワークを備え事業を開始します。それらの指標に、過去の問題、新しいマネージャーによる強化点の移動、及び品質/サイクルタイム/顧客サービスに関する新しいプログラムに喚起され追加がなされます。結果は、無関係で管理不可能な評価の寄せ集めになってしまい、1つの評価指標をプラスの方向に動かすためには、他の2つの評価指標がマイナス方向に動いてしまうことによりるマネージャーをマヒ状態に陥らせる「評価指標の渋滞」の原因になってしまいます。
我々は、組織レベル(第4章)、プロセスレベル(第5章)、及び業務/遂行者レベル(第6章)のそれぞれのパフォーマンスにおける目標とマネジメントの取り扱いの中で評価に付いて議論をしています。しかし、評価はパフォーマンスマネジメントと改善の中枢のツールであり、特別の扱いをする価値があると信じています。
評価なしで望ましいパフォーマンスを得られません。誤った評価指標では組織パフォーマンスを部分的にしか最適化できません。もうお分かりのように、我々は3レベルの枠組みは、我々に、評価の渋滞状態から「最も重要」指標の特定へ、また単なる評価指標の寄せ集めから評価システムへと変えていくことができます。その結果、組織パフォーマンスに影響するすべての変数(variables)を管理することができます。
図12.1 組織システムの中にある3レベルのパフォーマンスの評価(略)
なぜ評価するのか?
我々は、組織は1つのシステムであり、一貫したハイレベルなアウトプットを得るために運営管理されねばならない、組織レベル、プロセスレベル、及び業務/遂行者レベル3つのパフォーマンスが存在することをはっきりさせてきました。図12.1に示すように、我々は、すべて3レベルのパフォーマンスを監視し、制御し、改善できるように評価を行ないます(図12.1と本章の中ではシステムの評価ポイントをメーターとして示している)。
評価をしなければ、マネージャーは次のことの基礎を持つことはできません。
部下に具体的にパフォーマンスの期待値を伝える。
組織で今何が起きているかを知る。
分析し除かれるべきパフォーマンスギャップを明確にする。
パフォーマンスと基準の比較のフィードバックを提供する。
報酬が与えられるべきパフォーマンスを明確にする。
資源、計画、方針、スケジュール、及び組織構造に関する意思決定を効果的に行い、それをサポートする。
評価をしなければ、すべての階層の従業員は次のことの基礎を持つことはできません。
何が期待されているか明確に知る。
パフォーマンスを監視し、自身にフィードバックする。
独自の報酬を作り、また、どんなパフォーマンスが他者からの報酬につながるかを理解する。
パフォーマンス改善すべき領域を明確にする。