平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第53回

組織システムの効果的な運営管理のための要求事項

単に評価指標を確立するだけでは不十分です。もし我々が組織をシステムとして運営管理するつもりなら、次のものを持たなければなりません。

正しいことを監視していると確信できる、合理的な評価指標
無関係(そして潜在的に非生産的)な評価指標の集まりでない、総合評価システム
評価システムによって提供されるデータを知的活動に変えるパフォーマンスマネジメントプロセス

我々は経験に基づき、これらの3つの領域それぞれについて、次のようなガイドラインを提案したいと思います。

合理的な評価指標の開発

我々が評価したいのは、3レベル全てのパフォーマンス、すなわち、アウトプットです。レベル(組織レベル、プロセスレベル、業務/遂行者レベル)にかかわらず、以下の順序に従って評価指標を開発することを推奨します。

組織、プロセス、又は業務の最も重要なアウトプットを特定する。
これらアウトプット(Gilbert、1978を参照)に関するパフォーマンスの「重要な次元」を明確にする。品質における重要な次元としては、精度、使いやすさ、新規性、信頼性、修理の容易さ、及び外観等がある。 生産性の重要な次元としては量、率、及び納期等がある。コストにおける重要な次元としては、労務費、材料費、及び間接費等がある。重要な次元は、アウトプットを受入れる内外部の顧客ニーズと事業上の財務ニーズから導き出されるのがよい。
それぞれ重要な次元の評価指標を策定する。例えば、「使いやすさ」が与えられたアウトプットの品質の重要な次元として特定されれば、「顧客が我々の製品・サービス(アウトプット)を使いやすいと感じているかどうかを、どの指標が示すのか?」の質問に、複数の評価指標が答えるべきです。
評価指標ごとの目標、又は基準を開発する。目標とはパフォーマンスに対する期待の具体的な水準である。例えば、使いやすさの評価指標が、「製品使用に関する質問数/苦情の数」ならば、目標は「1カ月あたりの質問/苦情は2つ以下」でも良い。継続的改善活動の成果が上がるにつれて、目標はより高いものにすべきである。

表12.1にこのようにして策定されたいくつかの例を示します。評価指標策定における重要な特徴は以下の通りです。

アウトプットを中心にしたものであること。これは、重要なアウトプットの達成を支援するからという理由ではなく今話題になっているとか、評価が簡単であるという理由で設定する、頻繁に行われている決め方とは対照的である。
顧客志向であること。アウトプット、重要な次元、及び目標は、すべて顧客要求事項からみてどの程度であるかによって決められる。
殆どのアウトプットは複数の重要な次元を持っており、多くの場合評価指標は多次元的でなければならないという事実を反映している。我々は、もはや「質と量とは両立できない」という考えから抜け出さなければならない。我々は納期も含め、質と量を両立できる。これが新しい顧客の要求事項である。

表12.1 「合理的な評価指標」の例