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平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第54回
理想的には、全ての評価指標と目標/基準は次の順序で開発されます。
評価システムの構築
組織の有効性は組織レベル、プロセスレベル、及び業務/遂行者レベルがすべて同じ方向に向かっている時にだけ発揮されます。鍵は、3つのレベルを1つのシステムに結びつける評価指標のネットワークにあります。このような評価システムは、次のことを可能にします。
すべてのレベルのパフォーマンスを監視して、機能不全に対して問題解決を行います。例えば、ある組織レベルのアウトプットが不十分であったということを追跡し、不完全なプロセス、不十分なプロセスステップ、及び業務アウトプットの誤りや欠落など、是正処置が可能な箇所を特定する。
一連の業務チェーンに関わる全ての担当者が、組織の重要なアウトプットへの自分達の影響を理解し評価する。
評価システム構築プロセスには次の2つの段階があります。
組織アウトプットからプロセスアウトプット、更に業務/遂行者アウトプットまでの、アウトプットの繋がりを確立する(我々のマッピング技術はこの段階で特に役に立つ)。
2.上で説明した、一連の「論理的な評価」の順序に従うアウトプットに対応する適切な評価指標を割り当てる。
評価システムをどのように構築するのかを説明するために、第4、5章、及び第6章で使用したソフトウェアとシステムの統合会社のComputec社の例を再び検討してみましょう。
組織レベル。評価システムの開発は、組織レベルで始まり、重要なアウトプットと目標を決定します。Computec社の戦略目標の1つは「3年以内に航空機分野のプロジェクトマネジメント市場の60%を獲得」することでした。
組織レベルの目標に関しては、これがすべての評価指標を決めていくという意味で、次の事項が特に重要になります。
外部顧客の文書化された要求事項、及び組織の戦略的事業要求事項に基づいている。
組織内すべてに理解されている。
すべてのシステム要素(プロセス、部門、及び業務)が貢献すべき組織規模のパフォーマンスを反映している。
プロセスレベル。プロセスの評価指標を組織の評価指標に繋げる第一歩は、組織のアウトプットをプロセスレベルのアウトプットに連動することです。Computec社の場合、組織のアウトプットは「プロジェクト管理用ソフトウェア」製品です。そして、経営者はこの特定の市場に入り込んでシェア目標を達成する鍵は、プロジェクトマネジメント管理用の一連の新ソフトウェア製品の投入であると理解しています。したがって、組織レベルの目標を達成する重要なプロセスは、新製品開発プロセスです。Computec社がプロセスの評価指標を決定する最初のステップは、新製品開発プロセスをはっきりさせることです。Computec社は、第10章で概説した手順に従って、図12.2に示される新製品開発のあるべき姿“Should”プロセスを作成しました。このプロセスマップは、プロセスのステップからサブプロセスそして最終プロセスにおける全てのアウトプットの繋がりを示すアウトプットのチェーンといえます。
いったん組織レベルへの繋がりを確立すると、例えば図12.3でM1(評価指標1)が最終プロセスのパフォーマンスを示すように、適切な評価指標を割り当てることができます。これらは、顧客要求事項を直接反映するM1―外部評価指標(例えば「顧客苦情数」)と、組織ビジネス要求事項を反映するM1―内部評価指標(例えば「導入から1年以内の利益」)の両方がありえます。M2評価指標は、M1―内部評価指標かM1―外部評価指標、又はその両方に関連して決められます。これらはサブプロセスのパフォーマンスを評価することになります。例えば、「4半期ごとに3種類の提案書を提出すること」という評価指標は、「提案書作成」というサブプロセスのM2評価指標となります。
M3は重要なプロセスステップのアウトプットを評価します。例えば、「試験データは妥当性基準に合致すること」は「製品アイディアのテストマーケッティング」ステップの評価指標です。評価指標に溺れないよう、プロセスマネジネントチームが監視しなければならないほど重要なステップだけにM3を設定することです。(第13章参照)。
この評価のネットワークは、期待される組織のアウトプットに影響を与え、プロセスの健全性を表す「最も重要」な指標に焦点を合わせており、プロセスパフォーマンスを監視し問題解決を可能にする顧客志向であり事業戦略重視になっています。
いったんプロセス目標が確立されると、経営幹部(特にプロセスオーナー)はプロセスのパフォーマンスを追跡するための手段を必要とします。(プロセスオーナーは第13章で説明します。Computec社のマーケティング担当副社長はたぶん製品開発と導入のプロセスオーナーです。) 簡単な追跡フォーマットを表 12.2に示します。
図12.2 Computec社の製品開発と導入:“Should”プロセスマップと目標サンプル(cont’d)(略)
図12.3 アウトプット評価(略)