平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第63回

最高経営者の役割

組織は、プロセスマネジネントを一気に実行する必要はありません。プロセスマネジネントに興味を持っている最高経営者は、2つか3つのプロセス改善プロジェクトを立ち上げることから始めるべきです。これらのプロジェクトが首尾よく重要経営問題に取り組むことができたならば、プロセスマネジネントを、少なくとも組織のコアプロセスに定着化することを考えればよいのです。定着化における最高経営者の役割は次のものを含みます。

コアプロセスを特定する。
プロセスオーナーとなるか、任命する。
定常的なプロセスチームを任命する。
9つのパフォーマンス変数の背景について質問し答えを尋ねる。
パフォーマンス評価指標を、報酬、及び問題解決の基礎として活用する。
プロセスオーナーパネルの議長を務め、伝統的なオペレーションレビューと類似したプロセスレビューを実施する。
典型的な事業計画と類似のプロセス計画システムを導入して、管理する。
作業環境(報酬、フィードバック、資源)が、プロセスの有効性と効率をサポートすることを確実にする。

プロセス改善、マネジメント、及び3レベルのパフォーマンス

効果的なプロセス改善はプロセスレベルのパフォーマンスに制限されません。最も大きい影響を伴うプロセス改善プロジェクトは、最重要プロセスに関連している重大な経営問題とは何かを特定することからスタートします。問題とプロセスの明確化は、組織レベルにおける戦略的目標に基づかなければなりません。プロセス改善は、それがプロセスレベルだけに制限されるなら、その根本に到着することはできません。システムを強化したらそのすべては、業務/遂行者レベルの業務と環境に反映させなければなりません。
同様に、今進めている業務のプロセスマネジネントはプロセスレベルの管理だけにあるわけではありません。今進められている業務の組織レベルのニーズの評価が、プロセスマネジネントの優先順位に方向性を与えます。さらに言えば、プロセスマネジネントの礎石は、業務/遂行者レベルを監視し改善することです。プロセスのパフォーマンスを管理するためには、そのプロセスの中で働いている要員のパフォーマンスを管理しなければなりません。プロセスの有効性への要員の貢献を管理するためには、ヒューマンパフォーマンスシステムの変数(variables)であるパフォーマンス規定、業務サポート、考課、フィードバック、スキル、知識、及び個人の能力を管理しなければなりません。

システムとして組織を運営管理する

我々がここまでカバーしてきた全てのことは、単一のプロセスを管理し継続的に改善するための行動に関連するフェーズ4の最初の部分に関する事項です。個々のプロセスマネジネントの活動の結果はどこかのポイントで互いに統合され、そして組織レベルの目標に統合されなければなりません。我々は、この統合を「システムとしての組織の運営管理」と呼びます。
システムとして組織を運営管理し始める前に、運営管理するための論理体系を組立てるべきです。事例として頻繁に使用してきたComputec社のプロセスを例示したいと思います。Computec社の最高経営者は、収入の停滞とマーケットシェアの喪失を心配していました。彼らは、情報システムを構築し、次のように状況に対応し始めました。

トップチームは、現状の外部事実(市場、競合及び経済状況)に対応した戦略を作りました。この戦略を展開するために、Computec社の経営者は、第7章に提示されている質問に答えました。その戦略の一部として、トップチームは、次の3つの領域において競争力を確立すると決めました。それらは、Computec社の顧客サービスの拡大、革新的新製品の継続的導入、及びパッケージソフト製品の納品の速さでした。
チームは、Computec社の関係マップ(第4章参照)を作成することによって、現在のシステムへの理解を促進しました。チームメンバーは、自らがビジネスシステムのフロー図を構築し、分析することによるメリットを受けると実感しました。結局彼らはこの業務をアナリストへ出すという誘惑を克服しました。
トップチームは、組織レベル(戦略的)の目標をマップに重ねました。
チームは、8つのComputec社の組織横断プロセスを特定して、組織の目標に最も大きい影響を与えていた(今も与えている)プロセスを選びました。Computec社が意図する競争優位性に基づいて、経営陣は、製品開発と導入(第5章で基本プロセスと呼んだもの)、注文遂行(別の基本プロセス)、購買(サポートプロセス)、及び運用計画(マネジメントプロセス)の4つの戦略上重要なプロセスを選択しました。
チームは、これら4つのプロセスに対し副社長をプロセスオーナーに指名しました。
最高経営者は、チームとして4つの戦略プロセスそれぞれに対して、顧客中心の最終的なプロセス目標を提示しました。チームは、与えられた組織目標に対し、プロセスからどんなパフォーマンスを期待するのかという問いに答えました。
グループは、第10章で説明したプロセス改善ステップを活用して4つのプロセスを文書化し分析するプロセスチームを形成しました。これらチームの3つの主要アウトプットは、推奨するあるべき姿“Should”プロセス(これは組織を修復するための詳細なロードマップになる)、現状“Is”プロセスから推奨するあるべき姿“Should”プロセスへの推奨移行計画、プロセスの重要な部分に対する推奨される一連の目標です。
トップチームは、4つすべてのプロセスが調和して働くように、3つの推奨事項を統合しました。(経営陣は、例えば、他のプロセスを犠牲にして製品開発プロセスを最適化したくはありませんでした。)
チームは、プロセスフローの変更、部門責任の割り当て(そして時には組織構造も)の変更、経営陣が決めたプロセス目標と機能(部門)目標を取り巻くパフォーマンス評価/マネジネントシステムの構築(第12章参照)、そして必要に応じた業務責任とヒューマンパフォーマンスシステムの変更(第6章参照)を含んだあるべき姿“Should”プロセスを実行しました。4つすべてのプロセスを同時に変更することは、Computec社の能力を超えていたので、トップチームはこれを段階的に実施しました。