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平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第69回
どんな状況に対しても、常に「正しい」組織構造というものはありません。戦略とプロセスが、該当する組織のある時点における合理的な組織構造を左右します。中央集権方式には、良いところがあり、同様に分散方式良いところあります。機能別体制(要員は会計や製造といった業務機能によってグループ化される)は、セクター別の体制(要員は製品により、市場により、プロセスにより、場所により、シフトにより、その他により組織化される)よりも、戦略とプロセスに対してより良いサポートすることができるとは限りません。最も良い組織構造は、幾つかの設計の選択肢を、上で述べた基準に対して評価することによってのみ決定できます。この評価は状況によって変わり得ます。
(本書を通じて、我々は“部門”、“ユニット”、“機能”という言葉を共通の口調で類似語として使用してきました。組織設計の分野では、“機能(部門)”は類似の業務を行うグループを表している。したがって、人事部門とか配送部門とかは“機能(部門)”である。プラスチック事業ユニットとかヨーロッパ支部)とかは“機能(部門)”ではありません。
上で述べたガイドラインに対する推論:すべての組織構造には空白があります。任務は空白をなくすことではありません。任務は、空白によるプロセスへの弊害を最小にして、存在せざるを得ない空白を運営管理することです。もし、あなたが製品別に組織化すると、製品間に空白ができます。もし、あなたが機能別に組織化すると、機能間に空白が存在します。今日一般的な概念は、一般の組織構造を、業務を完結するのに必要なとき迅速に展開できる、流動的な人材プールに置き換えた(次の業務は、恐らく異なることを理解し)「絶えず変化する組織(virtual organization)」です。しかしながら、「絶えず変化する組織(virtual organization)」構造にも、プロジェクト及びプロセスの間に空白はありますし、その中で一時的な組織で働いている要員間にも依然として空白はあります。このように固定した環境がそうであるように、プロセスの質は重要なものです。
上述の両方のガイドラインに対する推論:プロセスによって組織化することが、他の方法で組織化するより必ずしも良いというわけではありません。我々が第13章に述べたように、プロセスによる組織化は部門間の空白をなくすかもしれませんが、しかしながら、同様に注意しなければならないプロセス間の空白を生むことになります。2番目に、1つのプロセスのニーズに合わせて組織構造を設計すると、別のプロセスを十分に最適化できないかもしれません。3番目に、財務のような部門を無くして、必要とする各プロセスに財務専門家を分散させると、恐らく人数増加につながるでしょう。(例えば、財務専門家を一人「見積書/提案」プロセスに割り当てるとします。しかし、そのプロセスにおいては財務専門家の業務は一日の25%の時間しか必要としません。財務部門では、他のプロセスの業務に残り75%の時間を割り当てることができたでしょう。)それにまた、新知識の学習と資源の共有化を困難にし、財務専門家のキャリアパスを無くしてしまうことで専門家としての能力を減少させてしまうかもしれません(専門領域を越えたキャリアパスの道を開くとは思いますが)。プロセスによって組織化することは悪くはありませんが、それはまさしく他の組織構造と同様、トレードオフが存在します。
最も良い組織構造は変化の運営管理を助けます。我々が第2章において議論したように、組織は適応型システムである必要があります。現在のように事業環境が不安定な時には、次のような組織設計が望まれます。
市場、競合、供給者、法規則、及び技術の変化に関する情報を集め、その処理を促進する。
事業が、変化の必要性に対し迅速かつ知的に対応できるようにする。
それ自身が容易に変化できる。
我々は、総ての組織が上で説明した「絶えず変化する組織(virtual organization)」を採用するよう提唱している訳ではありませんが、 しかし、その目的は受け入るべきだと思っています。適応型の組織は常に変化する環境の中で、組織の繁栄を助長します。
あるべき姿“Should”プロセスを設計する時、思考の範囲を、今の組織構造をより良く機能させる活動、行動、思考に限定しません(推進チームが今の組織構造を変えないと特定しない限りは)。創造性を制限しないように、或いは組織設計時に断絶を作らないことを確実にするため、最初に考慮すべきあるべき“Should”相互関連の焦点は、何をすべきであって、誰がすべきかではありません。
最も重要なことは、業務が行われる現場における組織をどう構造化するかということです。多くの組織変更が、上位2、3の階層(組織変更者の目に見える層)のみに焦点を当て、残りは、自然に整理されるに任せていました。そのようなやり方は順序が逆で、推奨すべき実施順序は次の通りです。
行われるべき業務を設計する(基本プロセス)。
基本プロセスをサポートする体制を設計する。
サポートプロセスと管理プロセスを設計する。
以上のプロセスをサポートするスタッフと運営管理体制を設計する。