平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第77回

教育訓練の設計

パフォーマンスに対する「真空状態」の視点は、主題中心の教育訓練と人材能力開発を誘導します。教育訓練計画は今日の最新の話題、又は何が必要とするものかを対象とする傾向があります。
ここに主題中心の教育訓練設計の典型的な例があります。HRD部門は、失業手当の申請者にインタビューする業務の多数の新人を教育訓練するように頼まれました。設計課題は教育訓練専門職のMatthewに与えられました。彼は、新人インタビューアーに関連する主題領域を特定することから始めました。彼はインタビューの技法と心理学に関する既存の知識体系を調べました。Matthewは尋ねるべき質問のタイプを開発すること、質問により調べるスキルを用いること、回答を解釈することなどのインタビュー手法の主題領域を特定しました。インタビュー心理学を探求する中で、彼はインタビューを受ける人の行動と個人的性格に焦点を合わせる主題領域を発見しました。外見上関連を持った主題をかなり調査した後に、Matthewはビデオテープとロール・プレイ演習を大幅に使用する3日のコースを開発しました。
対照的に、3レベルの視点は既に述べたニーズ分析アプローチに基づく、パフォーマンス中心の教育訓練と人材能力開発に導きます。パフォーマンス中心の教育訓練設計(習得度基準型指導、又は学習者管理型指導として他の人によって説明された手法によく当てはまる)は、以下の例で用いられるアプローチを提示します。新規採用者のインタビュー教育訓練という課題を与えられた教育技術者であるGwenは、新人インタビューアーに対し、何が業務で期待されているかを決定することにから始めました。彼女は、インタビューアーで期待されているすべての決定、特に典型的なインタビューの最終決定(アウトプット)を明確に特定しました。この分析からGwenは、インタビューアーのアウトプットはすべての場合において、インタビューされる人をどこに照会するかを決めることであることを学びました。4つの可能性がありました。事務所A:申請者が失業手当を受ける、事務所B;申請者が業務を紹介される(働くことができて、失業手当受給に不適格なので)、事務所C;申請者が精神科医によってインタビューされる(彼らには就職斡旋を妨げる心理学的な問題があったので)、事務所D;そしてインタビュー主任によってインタビューされる(申請者が特別な問題を提示したか、又は他の3つの事務所の1つには明確に属さなかったので)。この情報に基づいてGwenは、新人インタビューアーの業務は主として分類又は区分することであるとの結論に達しました。彼らは、申請者を4つの事務所のどれに送るかを決めるように期待されていました。このようにして彼女は、教育訓練の主題は、この順序で示される以下のステップから成るべきであると決めました:

最終決定のための4つの代替案
各代替案に関する基準(申請者が各事務所に送られるべき条件)
その基準に基づいて最終決定をするために必要な情報
必要な情報を引き出すよう質問する手法
結果作成された1日コースは、入念な指導設計とか高価なメディアを必要としませんでした。それはインタビューアーに、様々な申請者を送ることができる事務所を判別することを教えるのに専念していました。
徹底的か又は過度に正式な分析によらずに、Gwenは、組織がインタビューアーから何を必要としたかを決め、インタビュープロセスを調べ、そしてこの情報に基づいて担当者が必要とするスキルと知識を特定することにより、3レベル全てを対象としました。インタビュースキルのコースをアカデミックで一般的なモデルを基礎としたMatthewと異なって、Gwenはコースの主題を組織の実体面に基づくものにしました。Gwenの設計はパフォーマンスに基づくものでした。

教育訓練の評価

教育訓練を真空状態の中で評価するのは時間の浪費です。教育訓練プログラムには、よく記述された学習成果、適切なメディア、優れた教材及び効果的な指導があるかも知れません。しかし、教育訓練が、間違っているパフォーマンス領域を対象としているか、考課とフィードバックによって補強されていないか、よく設計されたワークプロセスによってサポートされていないか、又は組織の方向性にリンクしていないなら、それに対する投資の価値はありません。典型的な評価の方法では、ワークショップは、会社がチャプターイレブン(会社更生)の保護を申し込むのと同じ週に指導設計に関する賞を受賞することも可能になってしまいます。対照的に、パフォーマンス影響評価では、コースがビジネスパフォーマンスに著しい影響を与えなければ、コースを良く評価することを許しません。
図15.3は4タイプの評価が我々の基本的システムダイヤグラムのどこに当てはまるかを示します。4タイプ全ての評価は妥当です。理想的なコースは、受講者に好かれて、何を教わる必要があるか教え、業務で用いられるスキルを提供し、組織のパフォーマンスにプラスの影響を持つスキルを提供します。しかしながら、ほとんどの評価がタイプⅠかⅡで、究極的に重大であるパフォーマンスから離れた上流にあります。パフォーマンス効果評価はタイプⅢとⅣに焦点を合わせます。