平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第78回

パフォーマンス効果評価の1つの効用は、不要な教育訓練を避けるか又は排除する手助けをすることです。例えば、技術担当取締役が報告書作成のワークショップを要求したなら、受講者の満足度評価(修了時アンケート)と学習評価(テスト)の方法はすぐに明らかになるでしょう。しかし、教育訓練要求者が新しい報告書作成スキルが業務に適用されているかどうか、もっと重要なこととしてそれらの応用が技術部門のパフォーマンスに何らかの影響を与えているかどうかを決定することができないならば、その教育訓練は疑問のある投資と考えられます。
パフォーマンス効果評価のもう1つの効用は、経営者側が教育訓練を支援する必要がある領域を特定することです。例えば、品質管理に関する教育訓練コースは、タイプⅠとタイプⅡ評価でかなり簡単に評価できるでしょう。タイプⅢとⅣが議論されることによって、HRD専門職と依頼者は、もしも経営者側が(資源と報酬を提供することによって)品質管理技術の使用を支持する処置を取らないなら、世界で最高の教育訓練もパフォーマンスに関して無効であることを理解します。
もしもHRDアナリストが教育訓練のニーズを丁度説明した様に決定したなら、評価(特にタイプⅣ)は問題を提示することはありません。教育訓練ニーズが文書化した組織パフォーマンスの問題か機会に直接影響するので、教育訓練はそれらの問題か機会への影響に関して評価することができます。図15.2のAに現れる質問は、パフォーマンス影響評価のための枠組みを提供します。

HRD機能の設計及び運営管理

教育訓練ニーズを決定し、教育訓練を設計し、及び教育訓練を評価することへの3レベルのアプローチは、異なった種類のHRD部門を提案します。実はこのタイプのHRD機能が、それ自身を教育訓練実施部門から組織のパフォーマンス部門に変容させます。
パフォーマンス部門は多くの点で伝統的な教育訓練機能とは異なっています。その要員は次のことをします:

彼らの任務は、スキルと知識を提供するのではなく、パフォーマンスを改善することと理解する。
組織パフォーマンスニーズにリンクした教育訓練と人材能力開発だけを行う。
受講者が働く環境(ヒューマンパフォーマンスシステム)で支援される教育訓練と人材能力開発だけを行う。
組織パフォーマンスニーズへの貢献に従って、教育訓練と人材能力開発を評価する。
教育訓練を越える診断、及び人材能力開発ニーズ分析を行う。彼らはタスクの干渉、貧弱なフィードバック、サポートのない考課のような教育訓練と関係ない問題に関心があり、かつそれらに精通している。
教育訓練と人材能力開発、並びに教育訓練に無関係なことへのニーズの両方の解決策を推奨する。
3レベルのパフォーマンス全てのビジネス及び全9つのパフォーマンス変数の影響を理解する。
人材開発部門はビジネスであり、ビジネスとして運営されなければならないことを理解する。

上記に最後の項目を補足すると、パフォーマンス部門は第2章で説明されたシステム原理に従う組織のサブシステムである。ビジネスとして、それには組織全体の戦略にリンクした明確な戦略があり、(製品・サービスと顧客の明確な定義を含む)、下位機能がニーズ分析、設計、人材能力開発、研修実施及び評価を行うパフォーマンスビジネスとして運営されるように体制化されています。図15.4はパフォーマンス部門の1つの構成を示します。
図15.4からパフォーマンス部門は最低20人の要員を含まなければならないと推論するべきではありません。多くの機能は同じ人によって遂行されます。実は、図15.4の部門は最低3人の要員でまかなえます。
組織レベルからプロセスレベルに移ると、我々は、パフォーマンス部門がコース開発、コース実施及びコース評価という伝統的な教育訓練プロセスを含んでいるのがわかります。しかしながらそれは、組織と、プロセスと、業務のニーズ分析及び教育訓練に無関係な活動(評価システム、フィードバックシステム及び考課システムの設計)のためのプロセスを含んでいます。
業務/遂行者レベルでは、パフォーマンス部門は、開発と研修実施責任と同様に分析、設計、計画、評価及びコンサルティングを含むよう業務を構成します。最後に、パフォーマンス部門のマネージャーは、パフォーマンスの全体論的な任務を支援するヒューマンパフォーマンスシステムを作り出します。そのマネージャーは、パフォーマンス部門のスタッフにパフォーマンス改善の機会を特定し、多方面にわたる解決策を設計することを望むので、彼又は彼女は「受講日数」でスタッフの評価を行いません。
率直に言って我々は、誰かがそうする限り、パフォーマンス部門の役割を引き受けるのがHRD部門であるかどうかに関しては気にかけません。この専門的技術とサービスが同居する自然な場所となる傾向があるのでHRDに焦点を合わせるのです。しかしながら、我々はHRDが伝統的な教育訓練の役割を満たし、そして包括的なパフォーマンス診断と改善は別の部門の任務である組織で仕事をしたことがあります。

要約

我々は、HRDの機能が、独特の組織パフォーマンス部門(少なくともパフォーマンスを基礎とするHRD部門)になる位置にあると信じます。制限され、潜在的に非生産的な「真空状態」の視点よりむしろ、3レベルベースのシステム的見方を反映して、パフォーマンス部門は教育訓練の支点がどこに置かれようとも、世界を動かすには非常に小さいレバーであることを認識します。その要員は、パフォーマンスの全3レベルでニーズを特定して貢献を評価します。彼らは教室にいるときと同様に、組織とプロセスレベルで、及びヒューマンパフォーマンスシステムの非執行構成員として快適であり、そして会社の競争優位に著しい貢献をしている信頼できる企業人です。