平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第9回

システムの原理及び自由市場は、これら変化する需要に組織が適応すること求め、又それを可能にしています。組織が存続しているということは、組織が適応しているということです。しかし、組織の健全性は、組織がどれくらい上手く適応したかによって決まってきます。Peters及びWaterman(1982)が「エクセレントカンパニー」の中でエクセレント企業のリストを掲載しましたが、18か月後には、その3分の1はリストから脱落していました。脱落した会社を調査したところ、大多数が外部環境の変化に十分に対応できていませんでした。エクセレントであることの評価基準に、適応能力も含めるべきです。我々の見解では、効果的かつ迅速に適応できる組織能力の重要な変数(variables)は、組織のマネジメントです。
マネージャーがシステム的な見方をすると、何を得ることができるのでしょうか?システム的な見方をしないマネージャーにとって、頻繁な変化は、無秩序で予想できない、管理不可能なものに写ります。そのようなマネージャーは、現在の危機をこれからも続く適応へのニーズとして理解せず、今の状況下における一つの固有な出来事とみなしてしまいます。適応とは、一つの出来事ではなく一連のプロセスです。図2.4のシステムの枠組みは、いくつかの大きな変化という力を特定し、これらの力が絶えず変化していくことに対する継続的な適応の必要性を強調しています。有能なマネージャーは変化を予測し、変化に事前に対処するために、図2.4に示すシステムの枠組みを活用します。
システムの要素の各々を取り巻く「もし、何々・・・」シナリオを通して、変化の速さと方向を予測し、それを組織戦略に組み込むことができます。我々がComputec社のトップマネジメントチームであるとしましょう。もし、行政(要素9)が変化して、外国の競合相手の参入障壁が今より低くなったら、どう対応するでしょうか?もし、競合相手(要素8)大手2社が合併すると、どうなるでしょうか?どのようなパソコン製品とサービスが、ミニコンソフトの代替として市場(要素4)から求められるのでしょうか?どのようなコンピュータハードの技術革新(要素2)が、我々のシステム統合コンサルタントサービスに重要な影響を与えるのでしょうか?
この本の残りの部分は、組織内外の環境を分析するためのツールの提供について述べます。ツールの各々は、ここで述べたシステム的見方、及び次の組織システムの基本的な原理に基づいています。

パフォーマンスを理解するためには、事業を構成するインプット、プロセス、アウトプット及び顧客に関し文書化する必要があります。組織を文化、権限の力学又は個性として記述することは興味深いことです。しかし、ある時点で、組織が何を、そしてどのようにするのかを記述することが不可欠です。(第4、5章はそのような記述のためのツールを提供します)
組織のシステムは適応できなければ死にます。外部環境(顧客ニーズ、競合相手の動向、景気変動)と、内部運用(コストの増加、非効率、製品開発の機会の増加)における変化に対して、どの程度有効的にかつ迅速に適応できるかによって、生存できるかどうか決まります。
組織システムの1つの要素が最適化されると、組織全体の最適化が不十分になることが起こりがちです(この原則の例は既に述べました)。
システムのどのレバーを引いても、システムの他の部分に影響が出ます。シチューに若干のスパイスを加える調子で、組織を再編成したり、教育訓練したり、又は自動化したりできません。これらの行動は必ずレシピを変えることになります。(3レベルのパフォーマンスの議論、第3章を参照)
組織はシステムとして運営管理されているかどうかにかかわらず、システムとして振舞います。もし、組織がシステムとして運営管理されていなければ、効果的に経営されているとはいえません。(システムとして組織を運営管理することは、第13章の主題です)
優秀な担当者に、悪いプロセスの中で仕事をやらせても、うまくいかないでしょう。機能している担当者の「能力改善」に多くの時間を費やし、機能しない組織のプロセスを「修復する」のに十分な時間を費やしていません。(第6章はヒューマンパフォーマンスシステムを運営管理することについて述べます)

我々はパフォーマンス改善の実践者です。我々と顧客がパフォーマンスに影響を及ぼす変数(variables)を理解し、パフォーマンスが持続的に改善されるように変数(variables)の調整を可能にするという理由で、「組織をシステムとして捉える」このモデルは有用であると思っています。第3章は、3レベルのパフォーマンス各々に影響を及ぼす変数(マネジメントレバー)について探ります。