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ISO審査員及びISO内部監査員に国土交通省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。
■メタバースをはじめとする仮想空間の進展(その2)
メタバースについての2回目です。新しいサービスが誕生するためには、オープン型のプラットフォームがデジタルインフラとして必要不可欠です。例えば、地図が作成されていなかったら、郵便や宅配システムの実現は遅れていたでしょう。デジタルツインやPLATEAUなどのプラットフォーム構築に尽力することが、これからの新しいメタバースサービスが生まれるだろうと思います。基盤的なデジタルインフラでは共通化が図れれば、例えばアプリ間でデータを共有できないなどの不便を解消できると思います。
仮想世界と現実世界と関わり合いは興味のあるテーマです。例えば、現実世界にいる人の目前にマグカップがあるとします。マグカップに特殊なペン(デジタル)を使って「デジタルのインク」の絵を描く場合、デジタルインクを用いることで何度も描きなおすことができ、最後は3Dプリンターを用いてリアルのマグカップに着色することができます。今までは現実世界で行っていた作業(着色)が、仮想世界において簡単に省資源で実施することができます。「バーチャル旅行」についても、仮想空間内でまちを歩きながら自分に良いと思ったら、現実空間で実際に旅先をして肌感覚の体験をすることもできるようになります。仮想世界と現実世界の合わさった複合現実感により、使用者に有益な情報が付加されるといった事例も考えられます。災害マップで洪水被害が想定される現実世界のまちにメタバース洪水情報を重ね合わせることで、よりリアリティをもって避難訓練を行うこともできるでしょう。コロナ前を振り返ると、年間を通じたオンライン講習会など考えられませんでしたが、コロナ禍での経験を経て、現状ではその利点・課題、活用の仕方が見えてきています。オンラインを一歩進めた仮想空間に関する先端技術は、未体験の人も多くその良さが伝わりづらく、普及には時間を要するかもしれませんが、コロナ時に全キャンパスが閉鎖されリモート授業を余儀なくされた学生たちは画期的な便利さを体験しているので、今後、社会で活用する先端技術を取捨選択しつつも積極的に活用していくのではないかと予想します。
前述のように、次世代を担う若年層は仮想空間への利用に意欲が高いので、今後仮想空間の充実とともにその活用拡大が期待されます。仮想空間と現実空間とを高度に融合させたシステムを実現できれば新しい価値を創出していくことが可能となります。仮想空間と現実空間の相互作用により、新たなサービスが創出され、より暮らしやすい社会の実現が図られることが考えられるのです。
IoT等により現実空間の情報を取得し、仮想空間内に現実空間の環境を再現するデジタルツインや3Dモデルの活用を進めていくことが必要です。例えば、仮想空間においてシミュレーションや分析ツールが提供されることにより、実証試験やサービスの企画、社会課題の解決のための研究開発等が仮想空間で可能となることから、従来、製造業における業務効率化を中心に活用されてきたデジタルツインについて、まちづくりや防災等への活用など、より広範な領域で付加価値向上に活用が図られるなど、広がりが見られます。
デジタルツインは従来の仮想空間よりリアルな空間をリアルタイムで再現できることができます。IoTで取得したさまざまなデータをクラウド上のサーバにリアルタイムで送信し、AIが分析・処理をすることでリアルタイムな物理空間の再現が可能になります。このリアルに再現された仮想空間上でなら物理空間の将来の変化をシミュレートすることも可能となり、将来実際に起こるであろう変化に備えることができるようになると思います。
さらに、仮想空間でシミュレーション・分析を行い、その結果を現実空間にフィードバックすることにとどまらず、現実空間において自動運転やドローンなどデジタル技術の実証等に3D都市モデル等を用いて取り組み、市民参加型で技術をより良いものとし、現実空間で得られたデータ等を再度仮想空間にフィードバックすることで、実際の生活における現実空間を新技術の実験場としたサービス・商品の研究・開発を行うリビングラボといった取組みとの連携も考えられます。このようなテクノロジーを活用したWell-beingな都市づくり(デジタルツインを取り入れたリビングラボ)を進め、デジタルツインが人々の活動の多様化・高度化を支えていく事例を紹介したいと思います。
(具体例紹介)
・AR・VR活用によるサイバー・フィジカル横断コミュニケーションの取組み(PLATEAU、国土交通省)
コロナ禍を契機として、事業者によるサービス提供のリモート化、非接触決済の導入等に向けた動きが進んでいる。例えば、次世代のコミュニケーションツールの実装に向け、国土交通省は、官民連携により、3D都市モデル(PLATEAU)と「GIBSON」の活用により、現地にいるARユーザーと遠隔地のVRユーザーとがあたかも同じ空間に居るかのようなコミュニケーションプラットフォームを構築し、新たなサイバー・フィジカル横断のコミュニケーション価値の創造に関する検証を2021年度に渋谷区を実施地として実施した。具体的には、渋谷区内の現地ARユーザーと遠隔地より参加したVRユーザーとが、物理的距離を超え、同じ街歩き体験を共有した。通常の街歩きでは立ち止まらない場所でコンテンツを介したコミュニケーションを取ることで街への新たな発見が促され、街に感じる魅力が高まったとともに、他の街歩き体験者との親密感が高まったなどの結果が得られた。今後、このような検証結果を取り込み新たなサービスモデルに発展させることで、人と人とをつなぎ直す仕組みを構築し、街歩き体験に加え、観光やイベント、コマースといった産業への活用も期待される。
(具体例紹介)
・XR技術を用いた体感型アーバンプランニングの取組み(PLATEAU、国土交通省)
行政機関やデベロッパーによる都市開発やまちづくりにおいて、開発側である行政やデベロッパーは住民参画を促進してきたが、複雑な都市計画の認知の難しさやコミュニケーションツールの不足といった課題があった。これらの課題に対して、神奈川県の政令指定市である横浜市では、3D都市モデル(PLATEAU)を活用し、目の前の模型の配置を変えたり、入れ換えたりすることで、VR空間内のモデルも対応して変化するタンジブルインターフェースの技術を用いたワークショップなどを開催して、市民にわかりやすいまちづくりの取組みを推進している。具体的には、タンジブルインターフェース内に「駒」を配置し、建物模型を移動したり、無くしたりすることで都市をダイナミックに検討することが可能で、さらにVRゴーグルを着用すると、実際に「駒」を動かした空間に入り込み、リアルに体験することが可能である。3D都市モデルのコントロールにタンジブルインターフェースを使用することで、年代やテクノロジーリテラシーに関わらず、誰もが3D都市空間をコントロールできるようになる。自ら手を動かして検討した結果が、VR空間に即座に反映されるため、参加者の持つ様々なアイデアを可視化することができる。今後のまちづくりを検討するうえで、行政やデベロッパーなどの開発側と住民を結ぶ実用的なコミュニケーションツールとして発展してくことが期待される。
(つづく)Y.H