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■バブル崩壊から33年経って6

2013年政府の日本再興戦略では「成長への道筋」に沿った主要施策例として次のようなことを打ち出していました。今回は「全員参加・世界で勝てる人材を育てる」に関しての政策です。女性の力発揮(待機児童解消加速化など)については一定の効果があったと思いますが、大学の潜在力発揮などはまだまだ効果を見るに至っていません。2013年から10年経った現在、それぞれの施策がどの程度国際競争力向上に貢献したかというと、2013年21位であった世界競争ランキングが2023年35位になってしまったことから、施策は残念な結果になったと言わざるを得ません。

IMD「世界競争力年鑑」2023年版からみる日本の競争力 第1回:データ解説編総合順位は35位 過去最低を更新 | IMD「世界競争力年鑑」からみる日本の競争力 | 三菱総合研究所(MRI)

「今回の成長戦略では、「成長への道筋」を実行・実現するものとして、「日本産業再興プラン」「戦略市場創造プラン」及び「国際展開戦略」の3つのアクションプランを打ち出している。このプランのうち、「成長への道筋」に沿って、早期に取り組む必要がある代表的な施策を抜き出して整理すると以下のとおりである。(注:施策の例示であり、重要度や優先順位を示すものではない。)
(2)全員参加・世界で勝てる人材を育てる
①「女性の力」を最大限活かす。
②成熟分野から成長分野への失業なき労働移動を進める。
③大学の潜在力を最大限に引き出す(国立大学改革等)。
④世界と戦える人材を育てる。

引用 saikou_jpn.pdf (kantei.go.jp)」

■「女性の力」の最大限発揮

・「待機児童解消加速化プラン」を展開し、今後2年間で約20万人分、保育需要ピークが見込まれる2017年度末までに約40万人分の保育の受け皿を新たに確保し、保育の質を確保しつつ、待機児童解消を目指す。このため、賃貸方式や国有地も活用した保育所整備、保育の量拡大を支える保育士確保、小規模保育事業などの新制度の先取り、認可を目指す認可外保育施設への支援及び事業所内保育施設への支援を行うとしていました。
・女性の活躍を促進する企業の取組を後押しし、企業の職場環境を整備するため、管理職・役員への登用拡大に向けた働きかけや情報開示の促進等を行う。また、女性の活躍促進、仕事と子育ての両立、育児休業中、及び復職後の能アップの支援に取り組む企業への支援を行う。さらに、学び直しプログラムの提供、主婦等向けインターンシップ等により、子育て女性の再就職を支援するとしていました。

■成熟分野から成長分野への失業なき労働移動

・単に現在の職を維持する政策から、意欲と能力のある人材に、自分を高める機会を拡大した上で、成長分野の職への移動を支援する政策に大胆に転換するとしていました。
・人材のマッチングに民間の力を最大限活用する。このため、ハローワークしか使えなかった求人情報、ハローワーク紹介に限定されている助成金を、民間人材ビジネスに開放するとしていました。
・資格取得等につながる自発的な教育訓練の受講など社会人の学び直しを、今までにない規模で大胆に支援する。これにより、意欲のある非正規の若年者等が、自らの可能性を最大限高め、キャリアアップ・チェンジすることを応援するとしていました。

■大学の潜在力の最大限引き出し(国立大学改革等)

・先駆的な取組を予算の重点配分等で後押しする国立大学改革に直ちに着手する。今後3年間を改革加速期間とする。
①年俸制の本格導入、企業等外部からの資金を活用した混合給与などの人事給与システムの改革
②大学や学部の枠を越えた教員ポスト・予算等の資源再配分及び組織再編、並びに大学内の資源配分の可視化
③上記の先駆的な取組の成果を踏まえ、運営費交付金全体を戦略的・重点的に配分する仕組みを導入するとしていました。
・学校教育法等の法令改正を含め、抜本的なガバナンス改革を行うこととし、所要の法案を次期通常国会に提出する。また、必要な制度の見直しを行い、世界と競う「スーパーグローバル大学(仮称)」を創設するとしていました。

■世界と戦える人材の育成

・初等中等教育段階からの英語教育を強化する。このため、小学校における英語教育実施学年の早期化、教科化、指導体制の在り方等や、中学校における英語による英語授業実施について検討するとしていました。
・グローバル化に対応した教育を行い、高校段階から世界と戦えるグローバル・リーダーを育てる。このため、「スーパーグローバルハイスクール(仮称)」を創設するとしていました。
・意欲と能力のある高校・大学等の若者全員に、学位取得等のための留学機会を与える。このための官民が協力した新たな仕組みを創設するとしていました。
・国家公務員総合職試験や大学入試等に、TOEFL等の国際的な英語試験の導入等を行うとしていました。

「日本産業再興プラン」は、この失われた20年間で生じたヒト、モノ、カネの構造的な「澱み」を解消するため、直ちに取り組むべき必達計画である。プランの実行により、民間に対しては、産業や人材の新陳代謝を進めるため、代謝不足の体質を改善し、世界で戦える筋肉質な体質となることを促す。官の側では、企業やヒトの活動の足かせとなる規制や制約を積極的に省いていく国(規制省国)となり、また、省庁縦割りによる非効率性を徹底排除して、日本の総合力を発揮できる体制(オールジャパン)の構築を目指す。これにより、官民で攻めの経済政策を実行する力を確保する。「戦略市場創造プラン」は、課題先進国としての現状を攻めの姿勢で捉え、社会課題を世界に先駆けて解決することで新たな成長分野を切り開こうとする、未来を睨んだ中長期戦略である。プランの実行により、課題克服による不安の解消と、成長産業の育成の同時達成を目指す。「国際展開戦略」は、日本経済のグローバル依存度の高まりを攻めの姿勢で捉え、競争と変化が著しいグローバル経済の中で、積極的・戦略的に勝ちに行くための、官民一体の取組指針である。戦略の実行により、幅広い層の企業や国民が、世界経済の成長の果実を享受することを目指すとしていました。

(つづく)Y.H