ISO審査員及びISO内部監査員に経産省の白書を参考にした製造業における有用な情報をお届けします。

■人材確保と雇用の安定

(1) ハローワークにおけるきめ細かなマッチング支援ハローワークにおいては、分かりやすい求人票の作成に向けた助言・指導や、企業説明会・就職面接会の開催などに取り組む等のきめ細かなマッチング支援を行っている。
(2) 人材確保等支援助成金による職場定着の促進等(87億13百万円)
雇用管理改善や生産性向上等により「魅力ある職場づくり」に取り組む事業主等に対して人材確保等支援助成金の支給を行った。
(3) 中途採用等支援助成金による転職・再就職者の採用機会の拡大等(10億95百万円)
中途採用者の能力評価、賃金、処遇等の制度を整備した上で、中途採用者の採用を拡大させた事業主に対して中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)の支給を行った。
(4) 製造業における外国人材受入れ支援事業(2億23百万円)
2019 年4月1日より、新たな在留資格、「特定技能」による外国人材の受入れが開始され、経済産業省の所管では、製造3分野(素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業)において、11,758 名の外国人材を受け入れている(2022 年2月末時点)。本事業では、製造3分野の「特定技能」で在留する外国人材の受入れを円滑に行うため、中小企業に向けの制度説明や優良な取組を紹介するセミナーを実施するとともに、中小企業及び外国人材向けの相談窓口の設置・運営といった普及啓発や双方のマッチング支援等の受入れ支援を行った。また、製造3分野で従事する外国人材の技能水準を確認する製造分野特定技能1号評価試験について、問題を作成・翻訳し、2021 年7月から2022 年3月にかけて国内外で実施した。

(景気循環に対応した雇用の維持・安定対策)
(1) 労働移動支援助成金による成長分野等への人材移動の実現(23億81百万円)
事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者等に対し、再就職を実現するための支援を職業紹介事業者に委託した事業主や求職活動のための休暇を与えた事業主に対して費用の一部を助成する労働移動支援助成金(再就職支援コース)の支給を行った。
また、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされた労働者等の早期雇入れや当該労働者への訓練(OJTを含む。)を行った事業主に対する労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)の支給を行った。なお、今後労働力人口の減少が見込まれる中で経済成長を図っていくためには、労働生産性を高めていくことが不可欠である。このため、事業所における生産性向上の取組を支援するため、生産性を向上させた事業所が労働移動支援助成金等労働関係助成金(一部)を利用する場合に、その助成額又は助成率の割増し等を行った。
(2) 雇用調整助成金による雇用の維持・安定(6,117億30百万円)
景気の変動などの経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業、教育訓練又は出向により、労働者の雇用維持を図った場合に、雇用調整助成金の支給を行った。
(3) 在籍型出向の活用による雇用維持への支援(580億68百万円)
新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、在籍型出向により雇用維持をする場合に出向元と出向先の双方に対して助成を行う「産業雇用安定助成金」や、企業間の出向・移籍の斡旋を行う「産業雇用安定センター」によるマッチング支援体制の強化等により在籍型出向を活用した雇用維持を図る事業主に対する支援を行った。

(地域若者サポートステーション事業)
青少年の雇用の促進等に関する法律に基づき、就労に当たって困難を抱える若者等(15~49歳の無業の方)を支援するため国(厚生労働省)が設置する施設。※都道府県労働局がNPO法人等の民間団体に委託。令和4年度177か所(全都道府県に設置)。
 地方公共団体は、サポステが入居する施設の無償貸与や減免措置、地方公共団体の広報誌等におけるサポステの広報など、地域の実情を踏まえた措置を実施。
<支援内容>

  • キャリアコンサルタントによる相談内容等を踏まえ、個別の支援計画を作成。
  • コミュニケーション訓練、ビジネスマナー研修、就活セミナーなど、
  • 利用者の個別ニーズを踏まえた様々なプログラムを実施。
  • オンラインによる個別相談等も可能。
  • 高等学校・ハローワーク等の関係機関と連携し、就労を希望する中退者等の把握、サポステ職員が学校や自宅等へ訪問するアウトリーチ支援を実施。
  • OJTとOff-JTを組み合わせた職場体験プログラムを実施。体験終了後は、職場体験実施事業所等での就労に向けた支援を実施。
  • 合宿形式を含めた集中訓練プログラムを実施し、生活習慣の改善、コミュニケーション能力の向上、ビジネスマナーの習得などを集中的に支援。
  • 就職後、職場への定着・ステップアップに向けたフォローアップ相談を実施。
  • 必要に応じて、地域の関係機関(福祉機関等)との連携(リファー)。

(事例)「サポステの提案でものづくりの仕事に就いたAさん」
Aさんは、工業高校3年生の時に専門学校への進学を検討していたが途中で断念し、就職活動にもうまく対応できないまま卒業。卒業後は家で過ごし、働かなければという気持ちを持ちながらもいま一歩踏み出せなかった。約3年が過ぎ、自分でもそろそろ働かなければと思い、家族から何度か勧められていた地域若者サポートステーション(サポステ)を利用することにした。高校時代に運送会社でのアルバイト経験はあったが、具体的な働くイメージができておらず、対人関係が苦手で、すぐに就職活動を始めることには不安があった。そこで、まずは就職相談することから始め、並行してサポステのコミュニケーショントレーニングなどのプログラムに参加、徐々に集団での活動に慣れていった。
その後、面接練習など就職活動の準備を行うセミナーや、協力企業で簡単な作業を行うジョブトレーニングにも参加するようになった。また、短期の書店の棚卸しや年末の食品製造のアルバイトに就き、働く自信を付けていった。
職種について、Aさんは工業高校機械科を卒業していたものの、サポステへの来所時には製造業を希望していなかった。理由としては、漠然としたイメージだけで高校に入学したので、高校時代に機械科の授業内容に興味が持てず、それに関連すると考えていた製造系での就職に自信がなく、難しいと感じていたためである。
順調にトレーニングに励んでいたある日、サポステ職員から協力企業である(株)サークサイバネーションでの電子制御盤の組立て作業の職場体験を提案された。Aさんは、電子科を専門に学んでいなかったことへの不安を感じながらも、普段共にトレーニングを行っている他利用者も一緒に体験できることもあって、参加を決めた。
同社での職場体験は、中途入社の方の研修に参加する形で4日間行われるものであった。体験では基礎的な電子系の講義、半田付けや基本的な制御盤の配線、組立てを行い、電子制御盤の基本的な知識を習得することができる内容となっていた。
電子系の講義が難しく感じられた利用者もいたが、Aさんは熱心に取り組み、その様子を見た社長から、採用し育成していきたいとの申出をいただいた。
Aさんには迷いもあったが、サポステ職員からの後押しもあって応募を決断した。初めての本格的な面接に緊張しながらも、サポステでのトレーニングの経験もあって上手く対応できた結果、無事採用となり、本人が相談の中で希望していた「苦労してもやりがいを感じる仕事」に就くことができた。
Aさんはまもなく正社員として5年目を迎える。最初は不安と戸惑いも大きかったが、体験時に一緒に研修を受けた先輩方からの支えもあり、働き続けることができている。特に、出張先での組立て作業など作成した制御盤が様々なところで役に立つことにやりがいを感じている。
(株)サークサイバネーションは、その後もサポステ利用者の職場体験を実施しており、Aさんの他にも2名が採用され、継続して働いている。同社は、昭和50 年の設立当初より、一貫して産業機械および工作機械向けの制御盤を設計・施工してきた会社である。製造業において、より生産効率の向上を求められる状況の中、ラインの設計から納品、その後のメンテナンスやカスタマイズまで一貫して対応し、若い人材の確保など常に新しい視点を取り入れている。

(2) 新卒者等に対する就労支援(新卒応援ハローワーク)(100億64百万円)
大学院、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校などの学生・生徒や既卒者を対象に専門的支援を行う新卒応援ハローワーク(全国56 か所)において、広域的な求人情報の提供や、就職支援セミナー・面接会を実施した。また、学生・生徒や既卒者の支援を専門に行う相談員である就職支援ナビゲーターが担当者制による個別相談、求人の紹介等就職まで一貫した支援や大学等との連携による学校への出張相談等を行った。さらに、就職後の職場定着支援等の相談窓口を設置し、就職活動から職場で活躍するまでの総合的なサポートを実施した。

(3) フリーターに対する就労支援(わかものハローワーク)(29億56百万円)
主に正社員就職経験が乏しいフリーターを対象に、正社員就職実現を目指した専門的支援を行う若者のハローワーク(全国22 か所)や、ハローワーク内に設置した若者の支援コーナー及びわかもの支援窓口において、担当制によるきめ細かな職業相談・応募先企業に応じた面接指導や応募書類作成・職業相談等を行った。

(年齢に関わりなく働ける社会の実現)
(1)高齢者雇用の促進(43億94百万円)
①高齢者の雇用・就業機会を確保する措置の促進65 歳までの雇用を確保する制度を導入する義務及び70 歳までの就業機会を確保する制度を導入する努力義務を定めた「高年齢者雇用安定法(昭和46 年法律第68 号)」に基づき、事業主に対して、ハローワークによる啓発・指導等を実施した。
② 65 歳超雇用推進助成金の活用促進
65 歳以上への定年引上げや66 歳以上の継続雇用制度の導入等を行う事業主、高齢者の雇用管理制度の整備等を行う事業主、50 歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して、65 歳超雇用推進助成金を支給した。

(2) 高齢者等の再就職支援の促進(548億70百万円)
60 歳以上の求職者等をハローワーク等の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して、特定求職者雇用開発助成金を支給した。

(3) 地域における多様な働き手への支援(166億67百万円)
シルバー人材センターにおける定年退職後等の高齢者への多様な就業機会の拡大・会員拡大などの取組や育児支援の分野など現役世代を支える取組を支援した。

(出典)経済産業省 2022年版ものづくり白書
 ・https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html

(つづく)Y.H