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■ITA(情報技術協定)交渉
IT製品の関税撤廃に関するITA(情報技術協定)は、1996年12月のシンガポールWTO閣僚会議(MC1)の際に29メンバーで合意され、1997年に発効した。その後の参加国拡大の結果、2022年3月現在、ITA対象製品の世界貿易総額の97%以上を占める83メンバーが協定に参加している。
ITAは世界貿易総額の約15%(5.3兆ドル(2013年)(交渉当時試算))の関税撤廃に貢献している。主な対象品目は、半導体、コンピュータ、通信機器、半導体製造装置等である。ITAの発効からの技術進歩や各国産業界からの期待の高まりを受け、新たにITAの対象とする品目リストの拡大や、対象品目の明確化を目的として、2012年5月にITA拡大交渉が立ち上げられた。2015年9月からは我が国がITA拡大交渉の議長を務め、個別の対象品目の関税撤廃期間等に関する交渉を行い、同年12月、ケニア・ナイロビで開催された第10回WTO閣僚会議(MC10)において、林経済産業大臣(当時)が議長を務める中、対象品目の世界貿易額の90%以上をカバーする53メンバーで交渉妥結に至った。
対象品目201品目の全世界貿易額は年間1.3兆ドルを上回り、世界の貿易総額の約10%に相当し、自動車関連製品が世界貿易に占める割合4.8%を大幅に上回る規模である。日本からの対象品目201品目の対世界輸出額は約9兆円と総輸出額約73兆円の約12%を占め、関税削減額は約1700億円と試算される。主な対象品目は、新型半導体、半導体製造装置、デジタル複合機・印刷機、デジタルAV機器、医療機器等である。2022年3月現在、56メンバーが拡大ITAに参加しており55メンバーは2024年に、1メンバー(2021年11月に新規で参加承認されたラオス)は2026年に対象品目201品目の関税が完全に撤廃される予定である。なお、2021年9月に開催されたITA25周年シンポジウムでは各産業界からIT技術の発展や世界経済への貢献とともに更なる対象品目拡大交渉の開始などを望む声が寄せられたが、今後の交渉は未定である。
■EGA(環境物品協定)交渉
2001年のドーハ閣僚宣言において、「環境関連物品及びサービスに係る関税及び非関税障壁の撤廃及び削減」に関する交渉の立ち上げと、貿易と環境に関する委員会特別会合(CTESS)の設置が盛り込まれたことを受け、CTESSにおいて関税削減・撤廃の対象となる環境物品リストに関する議論が行われてきた。その後、ドーハ・ラウンドが停滞する中、APECに場を移して環境物品の関税削減・撤廃が議論された。2011年11月のAPECホノルル首脳会議で、2015年末までに対象物品の実行関税率を5%以下に削減する旨合意され、2012年9月のAPECウラジオストク首脳会議で、その対象品目として54品目に合意された。これを受け、2012年11月、環境物品の自由化推進国・地域で形成する「環境フレンズ」メンバー(日本、米国、EU、韓国、台湾、シンガポール、カナダ、豪州、ニュージーランド、スイス、ノルウェー)は、WTOでの今後の環境物品自由化の交渉の進め方について議論を開始。2014年7月には有志の14メンバー(日本、米国、EU、中国、韓国、台湾、香港、シンガポール、カナダ、豪州、ニュージーランド、スイス、ノルウェー、コスタリカ)でEGA交渉を立ち上げた。
以来、2015年12月のケニア・ナイロビで開催された第10回WTO閣僚会議(MC10)での品目合意を目指し議論されたが、結局合意に至らなかった。2016年9月のG20杭州サミット首脳宣言においては、EGA交渉の年内妥結に向けた努力を倍増するとされたことを踏まえ、同年12月に妥結を目指し閣僚会合を開催したが、対象品目に関する立場の懸隔が埋まらず、妥結には至らなかった。なお、当時は46メンバーが交渉に参加していた。EGA交渉の再開目途は立っていないが、我が国は2021年3月に世界全体のカーボン・ニュートラル実現に貢献する製品・技術の普及を円滑化させるため、WTO有志国で構成されたオタワグループの閣僚会合において、環境物品の関税撤廃(風力、燃料アンモニア、水素、自動車、蓄電池、カーボンリサイクル、住宅・建築物、太陽光、資源循環の9分野を例示)等を含む「貿易と気候変動」に関する提案を行った。同年12月には環境物品の貿易を促進するためのアプローチ等が盛り込まれた「貿易と環境持続可能性に関する閣僚声明」(後述)が発出されたため、今後はこの声明の内容を具体化するプロセスにおいて環境物品交渉に向けた議論が継続されると考えられる。
■TiSA(サービスの貿易に関する新たな協定)交渉
1995年のサービス貿易に関する一般協定(GATS)発効から長期間が経過し、この間にインターネットの普及を始めとする技術革新の影響を受け、サービスの提供・消費の態様が大きく変化してきていることを背景に、WTOにおいても状況変化に対応した約束表の改訂や新たなルールの策定が求められてきた。しかしながら、ドーハ・ラウンドが膠着し、急速な進展が見込めない状況となり、各国はFTAやEPAの締結等を通じてサービス貿易の自由化を推進してきた。こうした中、2011年12月の第8回WTO閣僚会議(MC8)の結果を受け、2012年初頭から、「新たなアプローチ」の一環として、有志国・地域によるサービス貿易自由化を目的とした新たな協定の策定に関する議論が開始された。我が国を含む有志国・地域は、自由化の約束方法、新たなルールなど、21世紀にふさわしい新たなサービス貿易協定に向けた議論を重ね、2013年6月に本格的な交渉段階に移ったことを確認する共同発表を行い、交渉を継続してきた。
2015年6月、2016年1月、6月及び10月には非公式閣僚会合が開催され、先進的な新協定を2016年末までに策定することを目標に交渉が加速化された。2016年12月に開催された交渉会合において、各交渉参加国・地域は、年内の実質合意は困難になったものの、翌年以降の早期妥結に向けて引き続き連携していくことで一致したが、その後交渉再開には至っていない。2016年12月末時点のメンバーは、23か国・地域(日本、米国、EU、豪州、カナダ、韓国、香港、台湾、パキスタン、イスラエル、トルコ、メキシコ、チリ、コロンビア、ペルー、コスタリカ、パナマ、ニュージーランド、ノルウェー、スイス、アイスランド、リヒテンシュタイン及びモーリシャス)である。
■APEC
2021年はニュージーランドがAPECの議長を務め、全体テーマ「共に参加し、共に取り組み、共に成長する(Join, Work, Grow. Together.)」の下、(1)回復を強化する経済・貿易政策(Economic and Trade Policies that Strengthen Recovery)、(2)回復に向けた包摂性・持続可能性の向上(Increasing Inclusion and Sustainability for Recovery)、(3)イノベーションとデジタルに対応した回復の追求(Pursuing Innovation and a Digitally-Enabled Recovery)の3つの優先課題を掲げ、各種取組を行った。
同年6月5日のAPEC貿易担当大臣会合(テレビ会議)では、①貿易政策がパンデミックによる経済へ打撃の回復にどのように資するか、APECはどう支援できるか、②第12回WTO閣僚会合に向けた優先事項は何か、APECは会合の具体的な成果に向けてどのような後押しができるか、について議論が行われ、声明を採択するとともに、「コロナワクチン・サプライチェーンに係る宣言」「必要不可欠な物品の移動を支援するサービスの宣言」を発出した。
また、同年11月12日のAPEC首脳会議(テレビ会議)では、新型コロナウイルス感染症からの経済回復を加速させるためのAPEC連携やポスト・コロナ時代の経済成長の在り方等について議論が行われ、APECの中長期ビジョンである「APECプトラジャヤ・ビジョン2040」の実施計画「アオテアロア行動計画」と、APECが行う取組を付記した首脳宣言が採択された。2022年のAPECは、タイが議長を務め、全体テーマ「オープン、コネクト、バランス(Open, Connect, Balance.)」の下、(1)貿易・投資の円滑化、(2)連結性の回復(特に旅行や観光)、(3)持続可能で包摂的な成長の促進の3つの優先課題に取り組んでいる。
日本としては、2010年の「横浜ビジョン」を基礎とした議論の流れを着実に引き継ぐとの方針に基づき、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を始めとするアジア太平洋地域の経済統合の実現、質の高いインフラ開発・投資の促進、持続可能かつ包摂的な経済成長実現及び女性による経済活動への一層の参画を促進するための取組の実施などを通じ、この地域の力強い成長力を取り込みつつ、我が国の経済に豊かさと活力をもたらすことを目指す。また、WTO発足時には貿易投資ルールの対象として想定されていなかったデジタル貿易・電子商取引分野に関する具体的な取組を進め、市場歪曲措置の是正やレベル・プレイング・フィールドの確保にも取り組む。
■その他の有志国の枠組による交渉
(1)電子商取引交渉
MC11で発出された共同声明にもとづき、2018年3月から、将来のWTO電子商取引ルールに含まれるべき要素について議論を行う探求的作業が開始された。同年12月までに、110以上の加盟国が参加し9回会合が開かれ、電子署名、電子決済、オンラインの消費者保護、データ流通等幅広い論点について議論が行われた。2019年1月、スイス(ダボス)において、日本は、豪州、シンガポールとともに、WTOの電子商取引に関する非公式閣僚級会合を主催した。同会合で各国代表は、WTOにおけるルール作りの意義等について意見交換を行い、会合後、国際貿易の約90パーセントを代表する76の加盟国で、電子商取引の貿易側面に関する交渉を開始する意思を確認する共同声明を発出した。同年6月、G20大阪サミットの機会に、当時の安倍総理大臣が「デジタル経済に関する首脳特別イベント」を主催し、トランプ前大統領、ユンカー欧州委員会委員長(当時)、習近平中国国家主席など27か国の首脳及びWTOを始めとする国際機関の長が出席した。
「大阪トラック」を立ち上げる旨の「デジタル経済に関する大阪宣言」が発出され、WTO電子商取引共同声明イニシアティブに参加する78か国・地域とともに、WTO電子商取引交渉について、MC12までに実質的な進捗を得ることを目指すことに合意した。2020年12月には、これまでの成果を統合交渉テキストとして取りまとめ、共同議長報告を公表。特に、データ関連規律について、高い水準かつ商業的に意義のある成果のための鍵として、2021年前期から議論を強化することが明記された。2021年12月に共同議長国閣僚声明が発出され、オンライン消費者保護やオープンガバメントデータ等の8つの条文で意見の収れんを達成したことなど、これまでの交渉の進捗を確認するとともに、2022年末までに残る論点の多くについても収れんを目指すことが示された。日本としては、越境データ流通、データ・ローカライゼーション禁止、ソース・コード及びアルゴリズム並びに暗号保護等のデータ関連規律は「高い水準かつ商業的に意義のある成果のための鍵である」という立場であり、DFFTの考え方の下でこれら規律のグローバル化を目指していく方針である(2022年3月現在、86加盟国が参加)。
(2)投資円滑化交渉
現在、包括的な投資に関するルールを定めた多国間協定は存在せず、二国間投資協定や経済連携協定で対応している。2017年12月のMC11で、有志国による閣僚共同声投資円滑化に関するオープンエンド交渉会合(以下、オープンエンド交渉会合)にて、全WTO加盟国・地域が参加するマルチの枠組み作りを目指すとの前提で、投資に係わる措置のうち、①透明性・予見可能性等の向上、②事務手続の簡素化・迅速化、③情報共有等の連携、④開発途上国の特別待遇等について議論している。2019年11月、上海WTO非公式閣僚会合にて「開発のための投資円滑化に関する有志国会合」が開催され、我が国を含む有志国92か国がMC12での具体的な成果を目指すとの閣僚共同声明を発出した。その後2020年9月からオープンエンド交渉会合が開始され、非公式統合テキストに基づく逐条議論が行われている。2021年12月、大使級で共同声明が発出され、交渉開始以降の進展を評価し、2022年末までの交渉の妥結を目指して交渉するとともに、全てのWTO加盟国に対して本交渉への参加を呼び掛けた(2021年12月現在、113加盟国・地域が参加)。
(3)中小零細企業(MSMEs)の貿易促進
2017年12月のMC11で、88ヵ国の賛同を得て、中小企業(MSMEs:Micro, Small and Medium-sized Enterprises)の貿易促進を目的とする有志国会合が立ち上げられた。MSMEsの貿易に関する障壁を低減し負担を緩和するための議論を行っており、2020年12月には貿易促進に資する行動計画パッケージを公表。具体的には、WTO貿易政策レビュープロセスを通じたMSMEsに係る統計や政策情報の提供の推奨、関税率・非関税措置・原産地規則・貿易手続等の情報のプラットフォームへの集積促進、貿易円滑化協定の完全な実施による透明性向上およびキャパシティビルディング・技術支援の推奨、MSMEsの貿易金融アクセス向上に資するキャパシティビルディングや情報共有。2021年12月にはMSMEsの国際貿易参画促進のためのウェブサイトであるTrade4MSMEsプラットフォームが立ち上げられた。(2021年12月現在、43加盟国・地域が参加)。
(4)サービス貿易に関する国内規制ルール交渉
サービス貿易協定(GATS)第6条4項は、資格要件、資格の審査に係る手続、技術上の基準及び免許要件に関する措置がサービス貿易に対する不必要な障害とならないようにするため、ビルトイン・アジェンダとして国内規制ルールの作成を規定している。1999年以降、国内規制作業部会(WPDR)においてルール交渉を続けてきたが、加盟国の立場の違いから交渉が膠着。2017年12月のMC11では、全加盟国の合意を達成するため、有志国において交渉の継続を確認する有志国閣僚声明を発出した。MC11以降、有志国によるオープンエンドの関心国会合を開催し規律案の議論を行ってきた。2021年12月、MC12のマージンでの妥結が予定されていたがMC12の延期を受けて、大使級会合が開催され、67ヶ国・地域により交渉の妥結に関する宣言が発出された。その後、有志各国・地域が、GATSの約束表に追加的な約束として参照文書を盛り込む手続を進めている。(2021年12月現在、67加盟国・地域が参加。
(5)貿易と環境持続可能性に関する体系的議論(TESSD)
2020年11月、環境への関心の高まりを背景に、MC12に向け、日本を含む50か国以上が貿易と環境問題に関する様々な論点を議論していく提案を行い、2021年、WTOにおける事務レベルの議論を開始した。同年3月、日本より、温室効果ガス削減に資する製品・技術の普及を円滑化するため、関税撤廃や規制面に関するルール作り等を柱に置いた提案を行った。MC12での発出が予定されていたがMC12の延期を受けて、2021年12月、貿易と環境持続可能性に関する閣僚声明を71カ国・地域(日本・米国、EU、中国等)で発出し、環境物品・サービスの貿易を促進するためのアプローチの検討、WTOルールに合致した気候変動対策について専門的な議論の開始など、TESSDで継続して議論することに合意した。
(6)日米欧三極貿易大臣会合
日米欧の三極が、第三国による市場歪曲的な措置に共同対処するため、2017年12月、日本の世耕経済産業大臣(当時)が呼びかけ、米国のライトハイザー通商代表(当時)、EUのマルムストローム欧州委員(貿易担当)(当時)の参加により、ブエノスアイレスでのMC11のマージンで初めて三極貿易大臣会合を開催した。直近では、2021年11月にテレビ会議形式で開催され、萩生田経済産業大臣、タイ米国通商代表、ドムブロウスキスEU上級副委員長が参加した。会合では、延期となったMC12の成功に向けたコミットメントを改めて確認した上で、第三国による非市場的政策や慣行がもたらすグローバルな課題に三極で連携して対処することや、そのために今後事務レベルで議論を行い定期的に閣僚が進捗を確認することに合意し、共同声明を発出した。
■WTO協定(ルール)の実施
WTO協定は、加盟国・地域間に通商摩擦・紛争が生じた際に、ルールの解釈・適用を通じてその解決を図る紛争解決手続に係る規律を備えている。この紛争解決手続による措置の是正勧告は、履行監視手続や履行されない場合の対抗措置等も用意されており、履行率が高く実効性が高いものとなっている。また、通商摩擦を政治問題化させずに解決することができるという点でも有益である。1995年のWTO発足以来、紛争解決手続が利用された案件は611件(2022年3月現在。協議要請が行われたがパネル設置に至らなかったものを含む。)に上っている。我が国が当事国としてWTO紛争解決手続に付託している案件のうち経済産業省が関与して、解決を図っている最近の事例の詳細は、下記を参照されたい。
(1)韓国の日本製ステンレス棒鋼に対するアンチ・ダンピング措置
2016年6月、韓国政府は、日本からのステンレススチール棒鋼に対する第3次サンセットレビューを開始し、2017年6月、3年間課税措置を延長する旨の決定をした。本措置は、日本産品が韓国産品やインド産品と競争関係にない可能性や、中国等第三国産品の輸入が増加している点を考慮せず、日本産品に対する課税を継続しなければ損害が再発する可能性があると認定しており、AD協定に違反する可能性がある。我が国は、2018年6月、韓国に対して協議要請し、同年9月、パネル設置を要請した。以後、パネルにおいて審理が行われた。2020年11月に発出されたパネル報告書は、日本産輸入品が韓国産品より相当程度高価であることや中国等からの低価格輸入が大量に存在していることが適切に考慮されていないため、日本産輸入品に対するAD課税の撤廃により、韓国国内産業への損害が再発する可能性があるとする認定に瑕疵があり、AD協定第11.3条に違反すると判示した。2021年1月、韓国は、WTO上級委員会に上訴した。我が国としては、本件がWTOのルールにしたがって適切に解決されるよう、引き続き必要な手続を進めるとともに、日本企業への不当な課税が継続されないよう、韓国に対し、本報告書の勧告に従い、本件措置を誠実かつ速やかに是正することを求めていく。
(2)インドのIT製品に対する関税引上げ措置
2014年7月以降、インド政府は、自国のWTO協定譲許表において無税としている一部のIT製品(携帯電話、基地局、通信機器、電話機・通信機器部品等)について、予算法案(並びにその後の予算法)及び関連通達により10~20%の関税引上げ措置を導入した。直近では、2020年2月の予算法案及び関連通達でさらに電話機・通信機器部品の一部を引き上げた。インドは、同国のWTO協定譲許表において、当該IT製品の譲許税率を無税と定めているにもかかわらず、それを超える関税を賦課しており、譲許税率を超えない関税率の適用を義務づけるGATT第2条に違反する可能性がある。我が国は、前出の品目について、2019年5月にWTO紛争解決手続に基づく協議要請を行い、インドと二国間協議を実施した。しかしその後も、インド側からは、状況の改善に向けた見通しが示されなかったため、2020年3月に、我が国はパネル設置を要請し、同年7月にパネルが設置された。現在パネル審理手続が係属中である。
(3)中国のステンレス製品に対するアンチ・ダンピング措置
2018年7月、中国政府は、我が国からのステンレススラブ、ステンレス熱延鋼板及びステンレス熱延コイルの輸入に対するアンチ・ダンピング(AD)調査を開始し、2019年7月に課税措置が開始された。本措置は、ダンピングによる国内産業への損害及び因果関係の認定等に関し、アンチ・ダンピング協定に違反する可能性があるため、2021年6月、我が国は、中国に対して協議要請を行い、同年8月、パネル設置を要請し、同年9月にパネルが設置された。
(つづく)Y.H
(出典)経済産業省 通商白書2022
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/index.html