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ISO審査員及びISO内部監査員に経済産業省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。
■米国との政治会談、協議等(その2)
(米国通商拡大法第232条への対応)
米国は、2018年3月23日、輸入鉄鋼・アルミに対する追加関税賦課を開始した。ただし、豪州(鉄鋼・アルミ)、数量制限を受入れた韓国(鉄鋼)、ブラジル(鉄鋼)及びアルゼンチン(鉄鋼・アルミ)は関税措置から除外した。2020年10月には、カナダ(アルミ)に対して数量制限を設ける代わりに関税措置から除外した。また、米国内で十分に生産できない製品、安全保障上の考慮を要する製品については、建設業・製造業・消費者への鉄鋼・アルミ製品の供給等の業務を米国内で行う個人・組織の申請に基づき商務省が措置からの除外を判断している(製品別除外)。
同盟国である日本の鉄鋼やアルミの輸入は、米国の安全保障上の脅威となることはないとして、我が国は、米国に対し、累次にわたり懸念を伝えてきた。同時に、製品別除外プロセスの迅速化、簡素化を図るよう、産業への影響を極力回避するよう多様なレベルで働きかけを行ってきた。また、他の輸出国と同様、米国の措置は実質的にセーフガード措置に該当するとして、今後リバランス措置をとる権利を留保する旨のWTO通報を行った(2018年5月)。さらに、我が国はシステミックな関心を有するとして米国の232条措置、対米リバランス措置のパネル審理にそれぞれ第三国参加を行っている。
なお、2020年1月、上記に加え、鉄鋼・アルミそれぞれの派生製品(鉄鋼の釘、アルミのケーブルなど)についても、追加関税を賦課する大統領令が署名され、同年2月より鉄鋼の派生製品に25%、アルミの派生製品に10%の追加関税が賦課されている。背景理由として、鉄鋼・アルミ製品に対する232条措置を発動しているにもかかわらず、川下製品に加工してからの輸入が増え、232条措置で目的とした、米国内での生産稼働率80%が実現できていないことが挙げられた。2021年10月には、EUからの鉄鋼、アルミに対し、一定数量の関税割当を導入する代わりに追加関税を一部免除すること、派生製品については追加関税を撤廃することが発表され、2022年1月より当該関税割当が導入されている。二次税率として鉄鋼25%、アルミ10%の関税が維持されている点において、WTO協定整合性に疑義がある。2021年11月、日本からの鉄鋼、アルミに対する232条措置について協議が開始された。2022年2月、米国は日本からの輸入鉄鋼につき一定数量の関税割当を導入し、また派生製品に対する追加関税を撤廃した。一方で、アルミへの追加関税10%及び関税割当の二次税率として鉄鋼25%は維持されているなど、措置のWTO協定整合に疑義がある。引き続き232条措置の完全撤廃に向け、米国政府への働きかけを続けている。
なお、鉄鋼・アルミ以外の製品に対しても、米国は232条調査を実施してきており、2021年6月には、サプライチェーン100日報告書においてネオジム磁石の防衛・民間双方における重要性を指摘していたところ、同年9月、同磁石の232条調査を新たに開始した。日本製のネオジム磁石は、米国のサプライチェーン強靱化に貢献してきたものであり、同盟国である日本からの輸入が米国の国家安全保障上の脅威となることはない。かかる立場に基づき、我が国は、本製品についても米国政府に働きかけを行っている。
(日米貿易投資関係の更なる発展に向けた取組)
過去半世紀にわたり、日米両国の製造業は国境を超えるサプライチェーンの深化を通じて競争力を涵養してきた。米国商務省によると、日本からの対米直接投資残高は年々増加し、2020年末では日本の対外直接投資残高全体の30%に相当する61.1兆円に達した。在米日系企業による米国内の雇用者数は97.4万人(世界2位)であり、このうち製造業の雇用者数は52.8万人(世界1位)である(2019年)。
日系企業は、西海岸のみならず、全米各地で研究開発分野への投資を活発に行い、イノベーションの源泉としてきた。同じく米国商務省によると、日系企業による米国内での研究開発費は年100億ドルを超えており、これは、世界第1位である(2019年)。こうした日系企業の活動を後押しするため、経済産業省としては、JETROを通じて、①「ロードショウ」(全米の州政府・経済開発公社を対象にしたウェビナーで日本企業の米国経済への貢献を説明)開催、②州知事等への個別アプローチ、③対米投資促進のためのセミナー開催、④両国企業の現地でのマッチングイベント開催などに取り組んでいるところであり、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、ロードショウや、対米投資促進セミナーをオンラインで実施した。また、米国商務省が主催する投資イベントであるセレクトUSAなどを活用し、日米間の貿易投資を通じたつながりが両国経済に利益をもたらすことを、積極的にPRしている。
(地域・国際社会の繁栄に資する日米経済協力)
2021年1月に発足したバイデン政権は有志国と連携する姿勢を明らかにしてきた。日本政府は国際社会における課題をバイデン政権と共有しており、首脳・閣僚間の会談を始めとするあらゆるチャネルを通じ、これらの課題について日米両国がどのように協力できるかを議論してきた。
梶山前経済産業大臣は2021年3月から4月にかけて3名の関係閣僚(タイ通商代表、グランホルムエネルギー長官、レモンド商務長官)と会談を行い、今後の日米協力について意見交換を行った。さらに4月には菅前総理大臣が訪米し、バイデン大統領とともに日米首脳共同声明「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」を発出するとともに、両国が世界の「より良い回復」をリードしていく観点から、日米共通の優先分野であるデジタルや科学技術の分野における競争力とイノベーションの推進、コロナ対策、グリーン成長・気候変動などの分野での協力を推進するために「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」を、パリ協定の実施、クリーンエネルギー技術、途上国の脱炭素移行の各分野での協力を一層強化していくために「野心、脱炭素化及びクリーンエネルギーに関する日米気候パートナーシップ」を、それぞれ立ち上げることで一致した。コアパートナーシップに基づく日米間の経済協力推進のため、複数の枠組みが立ち上げられた。
2021年11月に萩生田経済産業大臣とレモンド商務長官との間で立ち上げられた「日米商務・産業パートナーシップ(JUCIP)」では、両国経済の競争力、強靱性、安全保障の強化、気候変動など地球規模の共通課題への対処、そして自由で公正な経済秩序の維持に向けた協力が進められている。また、2022年1月の日米首脳会談で立ち上げられた、外務大臣・経済産業大臣及び国務長官・商務長官による日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)を通じても、コアパートナーシップ等に基づき、日米間の経済協力及び相互交流を拡大・深化させていくこととなった。また、経済産業省、外務省、米国通商代表部は、通商分野における日米間の協力をより一層深化させていくため、2021年11月に日米通商協力枠組みを立ち上げ、通商分野における日米共通のグローバルアジェンダやインド太平洋地域における協力及び日米二国間の通商協力等の議論を行っている。
(つづく)Y.H
(出典)経済産業省 通商白書2022
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/index.html