ISO審査員及びISO内部監査員に経済産業省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。

■日露関係

(ウクライナへの侵略)
2021年は新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、日露間においても相互の往来が難しい年であり、首脳・閣僚間の会談はオンラインのみとなった。2021年9月、梶山前経済産業大臣兼ロシア経済分野協力担当大臣は、シュリギノフ露エネルギー大臣とのTV会談を実施した。炭化水素、省エネ・新エネ、原子力の既存の協力分野に加え、水素、アンモニア、CCUS/カーボンリサイクルに関する協力を新たに進めていくことで合意した。「持続可能なエネルギー協力に関する日露共同声明」へ署名を行った。

2022年を迎えるとウクライナ情勢は一層緊迫化した。2022年2月17日、岸田総理大臣はプーチン大統領との間でウクライナ情勢を巡り電話会談を開催し、岸田総理大臣から力による現状変更ではなく、外交交渉により関係国が受け入れられる解決方法を追求すべきである旨働き掛けを実施した。

2月21日、プーチン大統領はロシア安全保障会議臨時会合を実施した。同日「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」を独立主権国家として承認する大統領令に署名するとともに、両「共和国」との間で締結する「友好協力相互支援条約」に署名を行った。2月22日、ロシア国家院及び連邦院は、両「共和国」との条約に批准し、同日、連邦院はロシア軍の自国領域外での軍隊の使用に関するプーチン大統領からの要請を承認した。2月24日、プーチン大統領は両「共和国」との条約の履行において、特別軍事作戦を実施する決定を採択し、ロシアによるウクライナへの侵略が開始された。

日本政府は国家安全保障会議四大臣会合を開催し、岸田総理大臣は関係省庁に対し、可能な限り、ウクライナ在住の邦人の安全確保に努めるよう指示をするとともに、政府部内において、より詳細な情報の収集及び情勢の把握に努めるよう指示した。経済産業省としても、萩生田経済産業大臣を本部長とするウクライナ情勢に関する省内対策本部会議を開催し、総理指示を踏まえて、ウクライナに進出する日系企業の事業活動への影響把握と安全確保、エネルギーの安定供給の確保、影響を受ける日本企業の事業活動の支援、G7をはじめとする国際社会と連携し、貿易管理に関する制裁措置を講じることとなった。

影響を受ける日本企業の事業活動の支援については、日本貿易振興機構(JETRO)や日本貿易保険(NEXI)に相談窓口を設置するとともに、NEXIには迅速な保険金支払などに対応するよう指示した。また、中小企業に対する支援として、政府系金融機関、中小企業団体等に特別相談窓口を設置するとともに、日本政策金融公庫等によるセーフティネット貸付の運用緩和および金利引き下げや、官民金融機関等に対して資金繰りに関する配慮要請を行うほか、原材料やエネルギーのコスト上昇に対応するため、業界団体を通じて、価格転嫁について配慮することを親事業者に対して要請した。

また、G7をはじめとする国際社会と緊密に連携し、ロシア及びベラルーシに対して制裁措置を講じるべく、岸田総理大臣から以下の措置が発表された。
2月23日、①両「共和国」の関係者の査証発給停止及び資産凍結、②いわゆる2つの共和国との輸出入の禁止措置の導入、③ロシア政府による新たなソブリン債の日本における発行・流通の禁止等。
2月25日、①資産凍結と査証発給停止によるロシアの個人、団体などへの制裁、②ロシアの金融機関を対象とする資産凍結といった金融分野での制裁、③ロシアの軍事関連団体に対する輸出、国際的な合意に基づく規制リスト品目や半導体など汎用品のロシア向け輸出に関する制裁。
2月27日、①プーチン大統領を含むロシア政府関係者等に対して資産凍結等の制裁措置の実施、②SWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシアの特定銀行の排除を始め、ロシアを国際金融システムや世界経済から隔離させるための措置を講じることとする欧米諸国による声明・取組への参加。
2月28日、①ロシア中央銀行との取引を制限する制裁措置、②ルカシェンコ・ベラルーシ大統領を始めとする個人、団体への制裁措置や輸出管理措置など、ベラルーシに対する制裁。
3月3日、①ロシアの財閥であるオリガルヒなどの資産凍結、②SWIFTからロシアの7つの銀行を排除するために必要な国内措置、③国際合意リスト品目や半導体など汎用品の輸出管理強化。
3月16日、①ロシアに対する貿易優遇措置である最恵国待遇の撤回、②輸出入管理の更なる強化(ロシア向けのぜいたく品の輸出禁止を行うとともに、ロシアからの一部物品の輸入を禁止)、③IMF(国際通貨基金)、世界銀行、欧州復興開発銀行を含む主要な多国間金融機関からロシアが融資を受けることを防ぐよう、G7での連携した取組、④プーチン大統領に近いエリート層や財閥、オリガルヒなどに対する資産凍結の対象の範囲の更なる拡大、⑤デジタル資産などを用いたロシアによる制裁回避に対応するため、暗号資産交換業者などの協力を得て、金融面での制裁の更なる強化。
3月24日、①輸出禁止対象に81の軍事関連団体を追加、②多数のオリガルヒやその家族等を制裁対象に追加、③ぜいたく品の輸出禁止措置を導入。なお、ロシアによるウクライナへの侵略に対し、我が国は米国及び欧州諸国と連携しつつ、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、以下の輸出禁止措置を導入する旨発表してきた(2月26日、3月1日、3月3日、3月8日、及び3月25日閣議了解)。

(1)国際輸出管理レジームの対象品目のロシア及びベラルーシ向け輸出の禁止等に関する措置
(2)ロシア及びベラルーシの特定団体(軍事関連団体)への輸出等に係る禁止措置
(3)ロシア及びベラルーシの軍事能力等の強化に資すると考えられる汎用品の両国向け輸出等の禁止措置
(4)ロシア向け石油精製用の装置等の輸出等の禁止措置
(5)「ドネツク人民共和国」(自称)及び「ルハンスク人民共和国」(自称)との間の輸出入の禁止措置
(6)ロシア向け奢侈品の輸出禁止措置

(1)~(5)の輸出禁止措置については、外為法第48条第3項に基づく輸出貿易管理令の改正(3月11日閣議決定・公布、3月18日施行)を受けて関連する省令等を整備(3月15日公布、3月18日施行)することにより、上記に関する輸出禁止措置を導入するとともに、あわせて、外為法第25条第6項に基づく外国為替令第18条第3項の経済産業大臣が指定する役務取引等を指定する件の改正等により、上記に関する役務取引(技術提供等)の禁止措置を導入した。(6)の輸出禁止措置については、外為法第48条第3項に基づく輸出貿易管理令の改正(3月29日閣議決定・公布、4月5日施行)及び同日付での関連する省令等の改正により導入した。経済産業省としては、引き続き、事態の動向を注視し、G7を始めとする国際社会と連携し対応する。

(つづく)Y.H

(出典)経済産業省 通商白書2022
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/index.html