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ISO審査員及びISO内部監査員に文部科学省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。
■国家的に重要な研究開発の評価の実施
総合科学技術・イノベーション会議は、「内閣府設置法」(平成11年法律第89号)第26条第1項第3号に基づき、国の科学技術政策を総合的かつ計画的に推進する観点から、各府省が実施する大規模研究開発等の国家的に重要な研究開発を対象に評価を実施している。また、同会議は、「特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に関する特別措置法」(平成28年法律第43号)第5条に基づき、特定国立研究開発法人の中長期目標期間の最終年度においては、基本計画等の国家戦略との連動性の観点等から見込評価等や次期中長期目標案に対して意見を述べている。そのほか、文部科学省では、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成28年12月21日内閣総理大臣決定)を受けて改定した、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(平成14年6月20日文部科学大臣決定、平成29年4月1日最終改定)を踏まえ、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会等において研究開発課題の評価を実施するとともに、研究開発プログラム評価の実施に向け、議論を重ねるなどして、より一層実効性の高い研究開発評価を実施することにより、優れた研究開発が効果的・効率的に推進されることを目指している。
(専門調査会等における主な審議事項)
1.評価専門調査会
第6期基本計画では、「指標を用いながら進捗状況の把握、評価を評価専門調査会において継続的に実施」するとされており、これを受けて評価専門調査会の体制を見直した。令和3年度は、新体制の評価専門調査会において、同基本計画のうち、「多様で卓越した研究を生み出す研究の再構築」を事例として、試行的に調査・検討を実施した。令和4年度以降は、同基本計画における対象事例を増やすとともに、進捗状況の把握、評価の制度を高めていくこととしている。また、新体制の評価専門調査会では、従来より実施している「国家的に重要な研究開発の評価」について、各省評価における評価項目の設定や評価基準の考え方が、「基本計画」や「大綱的指針」との整合を諮ることを目的とした評価を開始した。
2.生命倫理専門調査会
科学技術の進展等を踏まえたヒト受精胚の取扱いへの対応方針について、生命倫理専門調査会における議論に基づき、令和4年2月に「『ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方』見直し等に係る報告(第三次)~研究用新規胚の作成を伴うゲノム編集技術等の利用等について~」を取りまとめた。今後、ヒト受精胚に関する新たな技術が出現した場合等、科学技術に関する生命倫理上の課題が生じたときには、生命倫理専門調査会において、最新の科学的知見や社会的妥当性の評価に基づく検討を行っていくこととする。
(統合イノベーション戦略)
政府は、Society5.0の実現に向け、関連施策を府省横断的かつ一体的に推進するため、「統合イノベーション戦略」を策定している。本戦略は1年間の国内外における科学技術・イノベーションを巡る情勢を分析し、強化すべき課題、新たに取り組むべき課題を抽出して、施策の見直しを行っている。令和3年度に策定された「統合イノベーション戦略2021」は、第6期基本計画の実行計画と位置付けられる最初の年次戦略である。各国間の技術覇権争いや気候変動問題への対策等、科学技術・イノベーションを巡る国内外の変化を踏まえ、今後1年間で取り組む科学技術・イノベーション政策の具体化を行った。統合イノベーション戦略2021においては、以下の6つを政策の柱としている。
①国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会への変革
②知のフロンティアを開拓し価値創造の源泉となる研究力の強化
③一人ひとりの多様な幸せと課題への挑戦を実現する教育・人材育成
④官民連携による分野別戦略の推進
⑤資金循環の活性化
⑥司令塔機能の強化
また、バイオエコノミーの拡大は、新型コロナウイルス感染症収束、2050年カーボンニュートラルの実現など社会課題の解決とともに、我が国経済の発展に重要である。このため、令和元年以降のこれまでの戦略をブラッシュアップした「バイオ戦略フォローアップ」(令和3年6月11日 統合イノベーション戦略推進会議決定)を決定し、2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現するという全体目標の下、2030年時点で総額約92兆円の市場規模を目指し、バックキャストにより必要な施策を推進している。
(科学技術・イノベーション行政体制及び資金循環の活性化)
1.科学技術・イノベーション行政体制
国の行政組織においては、総合科学技術・イノベーション会議による様々な答申等を踏まえ、関係行政機関がそれぞれの所掌に基づき、国立試験研究機関、国立研究開発法人及び大学等における研究の実施、各種の研究制度による研究の推進や研究開発環境の整備等を行っている。文部科学省は、各分野の具体的な研究開発計画の作成及び関係行政機関の科学技術に関する事務の調整を行うほか、先端・重要科学技術分野の研究開発の実施、創造的・基礎的研究の充実・強化等の取組を総合的に推進している。また、科学技術・学術審議会を置き、文部科学大臣の諮問に応じて科学技術の総合的な振興や学術の振興に関する重要事項についての調査審議とともに、文部科学大臣に対し意見を述べること等を行っている。
我が国の科学者コミュニティの代表機関として、210人(定員)の会員及び約1,900人の連携会員から成る日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄の下に置かれ、科学に関する重要事項を審議し、その実現を図るとともに、科学に関する研究の連携を図り、その能率を向上させることを職務としている。日本学術会議においては、「日本学術会議の今後の展望について」(平成27年3月 日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議決定)を基軸として改善に取り組んできたが、改めて現状を自己点検して課題を抽出し、日本学術会議がより良い役割を発揮できるようになるため、アカデミーの原点は何かを踏まえた検討を行い、改革に向けた具体的な取組を実施している(日本学術会議のより良い役割発揮に向けて(令和3年4月22日日本学術会議総会))
これを踏まえ、第183回日本学術会議総会(令和3年12月)においては、科学的助言機能の見直し、会員選考プロセスの見直し及び日本学術会議で議論すべき総合的・中長期的課題に関する討議等を行った。また、政府や社会に対する提言については、提言1件(「学術の振興に寄与する研究評価を目指して~望ましい研究評価に向けた課題と展望~」(令和3年11月25日公表))を公表したほか、日本学術会議会長談話として「新型コロナウイルス感染症とワクチン接種をめぐって」等を公表した。現在は、今後の提言等の公表に向けて、様々な委員会を設置し、審議を行っている。また、日本学術会議では、協力学術研究団体(2,108団体:令和3年度末時点)等の科学者コミュニティ内のネットワークの強化と活用に取り組むとともに、各種シンポジウム・記者会見等を通じて、科学者コミュニティ外との連携・コミュニケーションを図っている。さらに、国際学術会議(ISC)をはじめとする44の国際学術団体に、我が国を代表して参画するなど、国際学術交流事業を推進している。
令和3年度は閣議口頭了解を得て6件の共同主催国際会議を開催したほか、令和3年3月には、気候変動を含む3つのテーマについてG7各国アカデミーと共同で取りまとめたGサイエンス学術会議共同声明を公表した。なお、日本学術会議の在り方については、総合科学技術・イノベーション会議有識者議員懇談会の中で「日本学術会議の在り方に関する政策討議」を開催し、令和4年1月に取りまとめを行った。この報告も踏まえ、政府において、総合的な検討を進めている。
2.知と価値の創出のための資金循環の活性化
(科学技術関係予算)
我が国の令和3年度当初予算における科学技術関係予算は4兆1,194億円であり、そのうち一般会計分は3兆3,418億円、特別会計分は7,776億円となっている。令和3年度補正予算における科学技術関係予算は3兆5,622億円であり、そのうち一般会計分は3兆3,345億円、特別会計分は2,277億円となっている(令和4年3月時点)。
(民間の研究開発投資促進に向けた税制措置)
政府は、民間における研究開発を促進するため、研究開発税制を設けている。研究開発税制とは、世界の潮流の中にあって、我が国を「世界で最もイノベーションに適した国」に変革するために、研究開発を行っている企業の法人税額から、試験研究費の額に税額控除率を乗じた金額を控除できる制度である。民間企業の研究開発投資を維持、拡大することにより、イノベーション創出につながる中長期・革新的な研究開発等を促し、我が国の成長力・国際競争力を強化することを目的としている。
(つづく)Y.H
(出典)
文部科学省 令和4年版科学技術・イノベーション白書
科学技術・イノベーション白書