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ISO審査員及びISO内部監査員に文部科学省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。
■東電福島第一原子力発電所の廃止措置技術等の研究開発
経済産業省、文部科学省及び関係省庁等は、東電福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けて、「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(令和元年12月27日改訂)に基づき、連携・協力しながら対策を講じている。この対策のうち、燃料デブリの取り出し技術の開発や原子炉格納容器内部の調査技術の開発等の技術的難易度が高く、国が前面に立って取り組む必要がある研究開発については、事業者を支援している。
文部科学省は、「東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等研究開発の加速プラン」(平成26年6月公表)に基づき、国内外の英知を結集し、安全かつ着実に廃止措置等を実施するため、基礎・基盤的な研究開発や人材育成の取組を推進している。具体的には、廃炉環境国際共同研究センターにおいて、福島県双葉郡富岡町に整備した「国際共同研究棟」を活用しつつ、燃料デブリの取扱いや放射性廃棄物の処理・処分等の基礎・基盤的な研究を実施している。さらに、英知事業においては、廃炉環境国際共同研究センターを中核として原子力分野だけでなく様々な分野の優れた知見や経験を、大学や研究機関、企業等の組織の垣根を越えて緊密に融合・連携させることにより、中長期的な廃炉現場のニーズに対応する研究開発及び人材育成の取組を推進している。また、廃炉に関する技術基盤を確立するための拠点整備も進めており、日本原子力研究開発機構においては、遠隔操作機器・装置の開発・実証施設(モックアップ施設)として「楢葉遠隔技術開発センター」(福島県双葉郡楢葉町)が、平成28年4月から本格運用を開始している。加えて、燃料デブリや放射性廃棄物などの分析手法、性状把握、処理・処分技術の開発等を行う「大熊分析・研究センター」(福島県双葉郡大熊町)が平成30年3月に一部施設の運用を開始している。さらに、同センターを活用した分析実施体制の構築に向け、第1棟・第2棟の整備を進めている。
(核燃料サイクル技術)
「エネルギー基本計画」(令和3年10月閣議決定)においては、「使用済燃料の処理・処分に関する課題を解決し、将来世代のリスクや負担を軽減するためにも、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減や、資源の有効利用等に資する核燃料サイクルについて、これまでの経緯等も十分に考慮し、引き続き関係自治体や国際社会の理解を得つつ取り組むこととし、再処理やプルサーマル等を推進する」こととしており、また、「米国や仏国等と国際協力を進めつつ、高速炉等の研究開発に取り組む」との方針としている。
(放射性廃棄物処理処分に向けた技開発等)
高レベル放射性廃棄物の大幅な減容や有害度の低減に資する可能性のある研究開発として、高速炉や加速器を用いた核変換技術や群分離技術に係る基礎・基盤研究を進めている。また、研究施設や医療機関などから発生する低レベル放射性廃棄物の処分に向けては、文部科学省及び経済産業省が示した「埋設処分業務の実施に関する基本方針」(平成20年12月文部科学大臣及び経済産業大臣決定)を踏まえて日本原子力研究開発機構が定めた「埋設処分業務の実施に関する計画」(平成21年11月認可、令和元年11月変更認可)に従って必要な取組を進めている。
(日本原子力研究開発機構が保有する施設の廃止措置)
日本原子力研究開発機構は、総合的な原子力の研究開発機関として重要な役割を果たしており、その役割を果たすためにも、研究での役割を終えた施設については、国民の御理解を得ながら、安全確保を最優先に、着実に廃止措置を進めることが必要である。日本原子力研究開発機構は、平成30年12月に保有する施設全体の廃止措置に係る長期方針である「バックエンドロードマップ」を公表した。文部科学省は、日本原子力研究開発機構が保有する原子力施設の安全かつ着実な廃止措置を進めていくため、その取組を支援している。
例えば、高速増殖原型炉もんじゅについては、平成28年12月に開催された原子力関係閣僚会議において、原子炉としての運転は再開せず、廃止措置に移行することとされた。現在、廃止措置計画(平成30年3月原子力規制委員会認可)に基づき、日本原子力研究開発機構において廃止措置計画の第一段階として、安全確保を最優先に令和4年末までに炉心から燃料池までの燃料体取出し作業を終了することとしている。今後も「もんじゅ」の廃止措置については、立地地域の声に向き合いつつ、安全、着実かつ計画的に進めていくこととしている。新型転換炉原型炉ふげんについては、廃止措置計画に基づき、原子炉周辺機器等の解体撤去を進めるとともに、令和8年夏頃の使用済燃料の搬出完了に向けて必要な取組を計画的に進めている。東海再処理施設については、廃止措置計画に基づき、保有する高放射性廃液の早期のリスク低減を最優先課題とし、高放射性廃液のガラス固化、高放射性廃液貯蔵場の安全確保に取り組むとともに、施設の高経年化対策と安全性向上対策を着実に進めている。
(国民の理解と共生に向けた取組)
文部科学省は、立地地域をはじめとする国民の理解と共生のための取組として、立地地域の持続的発展に向けた取組、原子力やその他のエネルギーに関する教育への取組に対する支援などを行っている。
(国際原子力協力)
外務省は、IAEAによる原子力科学技術の平和的利用の促進及びこれを通じたIAEA加盟国の「持続的な開発目標(SDGs)」の達成に向けた活動を支援しており、「原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)」に基づくアジア太平洋における技術協力や平和的利用イニシアティブ(PUI)拠出金等によるIAEAに対する財政的支援、専門的知見・技術を有する国内の大学、研究機関、企業とIAEAの連携強化等を通じて、開発途上国の能力構築を推進するとともに日本の優れた人材・技術の国際展開を支援している。
また、IAEAは我が国と協力し、2013年(平成25年)に福島県に「IAEA緊急時対応能力研修センター(IAEA―RANET―CBC)」を指定しており、国内外の関係者を対象として、緊急事態の準備及び対応分野での能力強化のための研修を実施している。さらに、令和元年11月に東京にて、核物質等の輸送セキュリティに関する国際シンポジウムを日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センターと協力して開催するなど、核セキュリティの国際的強化の取組を実施した。文部科学省は、IAEAや経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)などの国際機関の取組への貢献を通じて、原子力平和的利用と核不拡散の推進をリードするとともに、内閣府が主導しているアジア原子力協力フォーラム(FNCA)の枠組みの下、アジア地域を中心とした参加国に対して放射線利用・研究炉利用等の分野における研究開発・基盤整備等の協力を実施している。経済産業省は、放射性廃棄物の有害度の低減及び減容化等に資する高速炉の実証技術の確立に向けた研究開発について、日仏、日米協力をはじめとする国際協力の枠組みを活用して進めた。また、米国やフランスをはじめとする原子力先進国との間で、第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)等の活動を通じ、原子力システムの研究開発等、多岐にわたる協力を行っている。
(原子力の平和的利用に係る取組)
我が国は、IAEAとの間で1977年(昭和52年)に締結した日・IAEA保障措置協定及び1999年(平成11年)に締結した同協定の追加議定書に基づき、核物質が平和目的に限り利用され、核兵器などに転用されていないことをIAEAが確認する「保障措置」を受け入れている。これを受け、我が国は「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)」(昭和32年法律第166号)に基づき、国内の核物質を計量及び管理し、国としてIAEAに報告、IAEAの査察を受け入れるなどの所要の措置を講じている。
令和3年5月19日に我が国における2020年(令和2年)の保障措置活動の実施結果について原子力規制委員会に報告し、その結果をIAEAによる我が国の保障措置活動についての評価に資するためにIAEAに情報提供した。IAEAの我が国に対する保障措置実施報告では、全ての核物質が平和的活動にとどまっている旨の結論(拡大結論)を2020年(令和2年)についても受けた。これにより、2003年(平成15年)の実施結果以降、継続して拡大結論が導出されている。
(核融合エネルギー技術の研究開発)
核融合エネルギーは、燃料資源が豊富で、発電過程で温室効果ガスを発生せず、少量の燃料から大規模な発電が可能という特徴がある。そのため、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決し、エネルギー安全保障の確保にも資する、重要な将来のクリーン・エネルギーとして期待されており、後述するITER(イーター)計画の技術進捗も相まって、近年、諸外国でも政策的関心が高まっている。我が国は、世界7極35か国の国際協力により、実験炉の建設・運転を通じて核融合エネルギーの科学的・技術的実現可能性を実証するITER計画を推進している。核融合実験炉ITERの建設作業がフランスで本格化しており、日本が製作を担当する超電導コイル等の重要機器も順次フランスに到着している。
また、核融合発電に不可欠な、核融合炉から熱としてエネルギーを取り出す機器であるブランケットは、現在ITERで実施する試験に向けた設計活動が進んでおり、令和3年7月には量子科学技術研究開発機構ブランケット工学試験棟(青森県六ヶ所村)の落成記念式典が行われた。あわせて、我が国は、日欧協力によるITER計画を補完・支援し、原型炉に必要な技術基盤を確立するための先進的研究開発である幅広いアプローチ(BA)活動を推進している。BA活動ではJT-60SAが実験運転開始に向けた調整など、令和3年度も研究開発が進展している。さらに、我が国は、核融合エネルギーの実現に向けて、平成30年7月に科学技術・学術審議会核融合科学技術委員会が策定した「原型炉研究開発ロードマップについて(一次まとめ)」等に基づき、ITER計画、BA活動を推進するとともに、ヘリカル方式(核融合科学研究所)、レーザー方式(大阪大学レーザー科学研究所)など多様な学術研究も推進しており、世界を先導する成果を上げている。令和4年1月には、同委員会において「核融合原型炉研究開発に関する第1回中間チェックアンドレビュー報告書」が取りまとめられ、これまでの目標が達成されていることを確認するとともに、今後の課題も整理された。
(その他エネルギー技術の開発)
経済産業省では、宇宙太陽光発電の実現に必要な発電と送電を1つのパネルで行う発送電一体型パネルを開発するとともに、その軽量化や、マイクロ波による無線送電技術の効率の改善に資する送電部の高効率化のための技術開発等を行っている。宇宙航空研究開発機構では、宇宙太陽光発電の実用化を目指した要素技術の研究開発を行っている。
(つづく)Y.H
(出典)
文部科学省 令和4年版科学技術・イノベーション白書
科学技術・イノベーション白書