ISO審査員及びISO内部監査員に文部科学省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。

■「循環経済」への移行に向けた取組

循環経済への移行に向けて、令和4年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行され、プラスチックの資源循環を加速している。そのようなプラスチックの資源循環に係る促進策として、経済産業省は、「プラスチック有効利用高度化事業」により、プラスチックの資源効率や資源価値を高めるための技術の実用化に係る研究開発並びに海洋生分解性プラスチック開発・導入普及に向けて、将来的に求められる用途や需要にこたえるための新たな技術・素材の開発及び海洋生分解性プラスチックの国際標準化提案に向けた研究開発を推進している。

環境省は、化石由来プラスチックからバイオマス等の再生可能資源への素材代替やリサイクルが困難な複合プラスチック等のリサイクルに関する技術実証を行っている。環境省は、可燃ごみ指定収集袋など、その利用用途から一義的に焼却せざるを得ないプラスチックをバイオマス化するため、「地方公共団体におけるバイオプラスチック等製ごみ袋導入のガイドライン」を公表した。環境省は、G20大阪サミットで我が国が提唱した「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向け、法的拘束力のある文書(条約)に関する国際的な議論への参加や東南アジアを中心とした途上国支援、海洋プラスチックごみ対策の基盤となる科学的知見の集積強化、発生抑制対策の検討などを実施し、国内外で積極的に海洋プラスチックごみ対策に取り組んでいる。

(「分散型社会」を構成する生物多様性への対応)
環境省は、「分散型社会」を構成する生物多様性への対応については、絶滅危惧種の保護や侵略的外来種の防除に関する技術、二次的自然を含む生態系のモニタリングや維持・回復技術、遺伝資源を含む生態系サービスと自然資本の経済・社会的価値の評価技術及び持続可能な管理・利用技術等の研究開発を推進し、「自然との共生」の実現に向けて取り組んでいる。

「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」は、生物多様性及び生態系サービスに関する科学と政策の連携強化を目的として、評価報告書等の作成を行っている。平成31年(2019年)2月には、侵略的外来種に関する評価のための技術支援機関が公益財団法人地球環境戦略研究機関に設置され、その活動を支援した。作成中の評価報告書等に我が国の知見を効果的に反映させるため、IPBESに関わる国内専門家及び関係省庁による国内連絡会を令和3年7月、令和4年3月に開催した。さらに、IPBES地球規模評価報告書を踏まえたシンポジウム「生物多様性とライフスタイル~自然の恵み「食」を将来に引き継ぐためにわたしたちができること~」を令和3年12月に開催した。

我が国は、生物多様性に関するデータを収集して全世界的に利用されることを目的とする地球規模生物多様性情報機構(GBIF)の活動を支援するとともに、日本からのデータ提供拠点である国立科学博物館及び国立遺伝学研究所と連携しながら、生物多様性情報をGBIFに提供した。GBIFで蓄積されたデータは、IPBESでの評価の際の重要な基盤データとなることが期待されている。製品評価技術基盤機構は、生物遺伝資源の収集・保存・分譲を行うとともに、これらの資源に関する情報(系統的位置付け、遺伝子に関する情報等)を整備・拡充し、幅広く提供している。また、微生物資源の保存と持続可能な利用を目指した15か国・地域28機関のネットワーク活動に参加し、各国との協力関係を構築するなど、生物多様性条約を踏まえたアジア諸国における生物遺伝資源の利用を積極的に支援している。さらに、微生物等の生物資源データを集約した横断的データベースとして「生物資源データプラットフォーム(DBRP)」を構築し、生物資源とその関連情報へワンストップでアクセスできるデータプラットフォームとして運用している。

食糧生産や気候調整等で人間社会と密接に関わる海洋生態系は、近年、汚染・温暖化・乱獲等の環境ストレスにさらされており、これらを踏まえた海洋生態系の理解・保全・利用が課題となっている。このため、文部科学省は、「海洋資源利用促進技術開発プログラム」のうち「海洋生物ビッグデータ活用技術高度化」において、既存のデータやデータ取得技術を基にビッグデータから新たな知見をみいだすことで、複雑で多様な海洋生態系を理解し、保全・利用へと展開する研究開発を行っている。

(国民の行動変容の喚起)
環境省はナッジ等の行動科学の知見とAI/IoT等の先端技術の組み合わせ(BI-Tech)により、日常生活の様々な場面での自発的な脱炭素型アクションを後押しする行動変容モデルの構築・実証を進めている。また、成果を順次取りまとめ、国内及び国際会議において諸外国のナッジ・ユニット等と共に基調講演やパネルディスカッションを実施するなど、広く一般も含めた情報共有や連携を図っている。

環境省は、国立環境研究所等と連携し、全国で約10万組の親子を対象とした大規模かつ長期の出生コホート調査「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」を平成22年度から実施している。同調査においては、臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取保存・分析するとともに、質問票等によるフォローアップを行っている。これまでに発表された成果論文は、235本に上り(令和3年12月末時点)、化学物質のばく露や生活環境といった環境要因が、妊娠・分娩時の異常や出生後の成長過程における子どもの健康状態に与える影響等についての研究が着実に進められている。また、エコチル調査参加者のデータは、内閣府食品安全委員会における健康影響評価、妊婦の体重増加曲線や乳幼児の発達指標の作成等に活用されている。これまでの成果は、シンポジウムの開催やステークホルダーとの対話事業等を通じて、国民への情報発信や健康リスクを低減するための啓発を行い、国民の行動変容を促進することに取り組んでいる。

(つづく)Y.H

(出典)
文部科学省 令和4年版科学技術・イノベーション白書 
科学技術・イノベーション白書