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ISO審査員及びISO内部監査員に文部科学省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。
■オープンイノベーション、スタートアップ・エコシステム拠点の形成
(オープンイノベーション拠点の形成)
(1)筑波研究学園都市
筑波研究学園都市は、我が国における高水準の試験研究・教育の拠点形成と東京の過密緩和への寄与を目的として建設されており、29の国等の試験研究・教育機関をはじめ、民間の研究機関・企業等が立地しており、研究交流の促進や国際的研究交流機能の整備等の諸施策を推進している。TIAは、同都市にある公的4機関、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構と東京大学、東北大学を中心に運営されているオープンイノベーション拠点である。第3期2年度目の令和3年度においては、TIA連携プログラム探索推進事業「かけはし」では、企業連携による研究課題を充実させる取組を強化し、SDGsやプレベンチャー醸成といった取組を行った。また、Webを活用しながら、TIAの人材育成事業として、TIA連携大学院「サマー・オープン・フェスティバル」を実施した。さらに若手研究人材の育成を目的とする「NanotechCUPAL」は、事業最終年度にあたり、「人材育成事業CUPAL総括報告会」を開催した。
(2)関西文化学術研究都市
関西文化学術研究都市は、我が国及び世界の文化・学術・研究の発展並びに国民経済の発展に資するため、その拠点となる都市の建設を推進している。令和3年度現在、150を超える施設が立地しており、多様な研究活動等が展開されている。
(多様な分野との産学連携を行う「オープンイノベーションの場」の推進)
農林水産省は、様々な分野の技術を農林水産・食品分野に導入した産学官連携研究を促進するため、「知」の集積と活用の場®の取組を推進している。平成28年4月に「「知」の集積と活用の場®産学官連携協議会」を立ち上げ、様々な分野から4,235の研究者・生産者・企業等が会員となり、特定の目的に向けた研究戦略・ビジネス構想作りを行う172の研究開発プラットフォームが活動している(令和4年2月時点)。さらに、研究開発プラットフォーム内に研究コンソーシアムが形成され、研究開発や成果の商品化・事業化に向けた活動を展開している。
(技術シーズとニーズのマッチングを促進する環境の醸成)
農林水産省は、農林水産・食品産業分野の研究を行う民間企業、大学、公設試験研究機関(以下、「公設試」という。)、独立行政法人等の技術シーズを展示し、技術に対するニーズを有する機関との連携を促進するため、各省・各機関と連携し「アグリビジネス創出フェア」を毎年度開催している。令和3年度も、11月にリアルとオンラインとのハイブリッド開催をし、新技術の産業利用を進めている民間企業等から情報発信を行い、全国から135機関が参加した。3日間の来場者数は33,535人、約4か月間公開した特設サイトの総ページビュー数は、64,723に達した。文部科学省は、「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」により、地域の競争力の源泉(コア技術等)を核に地域内外の人材や技術を取り込み、グローバル展開が可能な事業化計画を策定し、リスクは高いが社会的インパクトが大きい事業化プロジェクトを支援しており、これまでに全21地域を採択した。
総務省は、「戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)」において、「新たな情報通信技術戦略の在り方中間答申・第2次中間答申・第4次中間答申」を踏まえた、Beyond 5G時代に対応して、実用化・社会実装を意識した、新たな価値の創造、社会システムの変革並びに地域の活性化及び課題の解決に寄与するICTの研究開発を推進している。経済産業省は、令和2年度から開始した「産学融合拠点創出事業」において、産学融合の先導的取組とモデル拠点構築に向けた支援を行い、大学を起点とするオープンイノベーションの深化と更なる拡大を実現する産学融合を通じた共通価値の創造を目指し支援している。農林水産省は、生物系特定産業技術研究支援センターが実施する「イノベーション創出強化研究推進事業」において、様々な分野の多様な知識・技術等を結集した研究開発を重点的に推進する提案公募型研究開発を支援することにより、地域イノベーション戦略の推進に貢献している。また、農林水産業・食品産業分野を専門とする産学連携コーディネーターを全国に配置し、ニーズの収集・把握、シーズの収集・提供を行うとともに、産学官のマッチング支援や研究開発資金の紹介・取得支援、商品化・事業化支援等を通じ、地域における農林水産・食品分野の研究開発の振興を図っている。
そのほか、地域の研究開発と技術の普及促進を支援する地域マッチングフォーラムの開催等の取組を進めている。産業技術総合研究所は、公設試等と人的交流などを通して密接に連携して地域企業のニーズの発掘に努めるとともに、産業技術総合研究所の技術シーズを活用した地域企業への技術支援を行っている。具体的には、公設試等職員やその幹部経験者等143名を地域企業への「橋渡し」の調整役として「産総研イノベーションコーディネータ」に委嘱・雇用し、産業技術連携推進会議を通じて公設試相互及び公設試と産業技術総合研究所との協力体制を強化するとともに、公設試職員の技術力向上や人材育成を支援している。また、包括協定を締結するなど、地方自治体との連携を積極的に進め、地方自治体の予算による補助事業の活用等により、地域産業特性に応じた技術分野での連携を推進している。このような産業技術総合研究所の技術シーズを事業化につなぐ「橋渡し」を地域及び全国レベルで行い、地域企業の技術競争力強化に資することで地方創生に取り組んでいる。
(世界に比肩するスタートアップ・エコシステム拠点の形成)
内閣府、文部科学省、経済産業省では、スタートアップ・エコシステムの形成とイノベーションによる社会課題解決の実現を目指して、令和元年6月に「Beyond Limits. Unlock Our Potential~世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略~」を策定し、令和2年にグローバル拠点都市4拠点、推進拠点都市4拠点を選定。拠点都市のスタートアップに対して、グローバル市場参入や海外投資家からの投資の呼び込みを促すため「グローバルスタートアップ・アクセラレーションプログラム」を実施する等、政府、政府関係機関、民間サポーターによる集中支援を実施することで、世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点の形成を推進している。
(挑戦する人材の輩出)
我が国全体のアントレプレナーシップ醸成をより一層促進するため、文部科学省では、「次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)」を平成29年度から実施するとともに、裾野を拡大するため、全国の大学生等を対象とした「全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム」を試行的に実施した。また、科学技術振興機構において、「大学発新産業創出プログラム(START)」の一環として、スタートアップ・エコシステム拠点都市において、アントレプレナーシップ教育を含めた大学等の起業支援体制の構築支援を実施している。
また、文部科学省は、複数の大学等でコンソーシアムを形成し、企業等とも連携して、研究者の流動性を高めつつ、安定的な雇用を確保しながらキャリアアップを図る「科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業」を実施している。文部科学省及び経済産業省は、人材の流動性を高める上で、研究者等が複数の機関の間での出向に関する協定等に基づき、各機関に雇用されつつ、一定のエフォート管理の下、各機関における役割に応じて研究・開発及び教育に従事することを可能にする、クロスアポイントメント制度を促進することが重要であるとの認識の下、その実施に当たっての留意点や推奨される実施例等をまとめた「クロスアポイントメント制度の基本的枠組みと留意点」を平成26年12月に公表し、更にその追補版を令和2年6月に公表して、制度の導入を促進している。
(国内において保持する必要性の高い重要技術に関する研究開発の継続・技術の承継)
産業技術総合研究所は、国内において保持する必要性の高い重要技術について、企業等での研究継続が困難となった等の問題が生じた場合、将来的に国内企業等へ当該技術が橋渡しされることを想定した上で、可能な範囲で、様々な受入制度を活用し、関係研究者の一時的雇用や当該研究の一定期間引継・継続等の支援を行うことを確認している。
(次世代に引き継ぐ基盤となる都市と地域づくり(スマートシティの展開))
都市や地域における課題解決を図り、地域の可能性を発揮しつつ新たな価値を創出し続けることができる多様で持続可能な都市や地域が全国各地に生まれることで、あらゆるステークホルダーにとって人間としての活力を最大限発揮できるような持続的な生活基盤を有する社会を目指している。
(データの利活用を円滑にする基盤整備・データ連携可能な都市OSの展開)
内閣府は、スマートシティを構築する際の共通の設計の枠組みである「スマートシティリファレンスアーキテクチャ」(SIP第2期「ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」の一環として作成、令和2年3月公表)について、改訂のための課題整理のための調査を実施している。内閣府は関係府省とともに、スーパーシティ/スマートシティのデータ連携等に関する検討を実施するとともに、総務省において、「スマートシティセキュリティガイドライン」を令和3年6月に改定した。
(スーパーシティを連携の核とした全国へのスマートシティ創出事例の展開)
国家戦略特別区域法の一部を改正する法律(令和2年法律第34号)に基づき、世界に先駆けて未来の生活を先行実現する「まるごと未来都市」を目指す「スーパーシティ」構想の実現に向けた議論と取組を推進している。国家戦略特区諮問会議等の審議を経て、令和4年4月、スーパーシティ型国家戦略特区として茨城県つくば市及び大阪府大阪市が、デジタル田園健康特区として、岡山県吉備中央町、長野県茅野市及び石川県加賀市がそれぞれ指定された。
スーパーシティは、地域のデジタル化と規制改革を行うことにより、DXを進め幅広い分野で未来社会の先行的な実現を目指すものである。また、デジタル田園健康特区は、デジタル技術の活用によって、人口減少、少子高齢化など、特に地方部で問題になっている課題に焦点を当て、地域の課題解決の先駆的モデルを目指すものである。国家戦略特区においては、引き続き、岩盤規制改革に取り組んでいくとともに、特段の弊害のない特区の成果については、全国展開を加速的に進めていく。総合特区制度は、我が国の経済成長のエンジンとなる産業・機能の集積拠点の形成を目的とする「国際戦略総合特区」と、地域資源を最大限活用した地域活性化の取組による地域力向上を目的とする「地域活性化総合特区」からなり、政府は、規制の特例措置、税制(国際戦略総合特区のみ)・財政・金融上の支援措置などにより総合的に支援を行っている。
関係府省は、スマートシティ官民連携プラットフォームを通じた自治体と民間企業のマッチング支援や、スマートシティガイドブック(令和3年4月公開)を活用した先行事例の横展開・普及展開活動を通じ、先進的なサービスの実装に向けた地域や民間主導の取組を促進している。内閣府と関係府省は、「スマートシティ関連事業に係る合同審議会」においてスマートシティ関連事業の実施地域を合同で選定するなど、スマートシティの実装・普及に向けて各府省事業を一体的に実施している。内閣府は関係府省とともに、スマートシティ評価指標について検討を行い、その成果を国施策のKPI・ロジックモデルの見直しや、地域におけるKPI設定のための指針等に反映した。
(国際展開)
政府は、日本の「自由で開かれたスマートシティ」のコンセプトの下、グローバル・スマートシティ・アライアンス(GSCA)等の国際的な活動や、各種国際会議等において「スマートシティカタログ」等を活用し発信している。また、関係府省は、案件形成調査の実施や関係国・都市の参加による「日ASEANスマートシティ・ネットワークハイレベル会合」(第3回:令和3年10月)の開催等「日ASEANスマートシティ・ネットワーク」の枠組みを通じたスマートシティ展開に向けて取組を推進している。さらに、関係府省は、国内外の標準の専門家等と連携して、リファレンスアーキテクチャなどを対象に、スマートシティに関連する国際標準の活用を推進してきた。具体的には、スマートシティに関連する国際標準の活用と海外展開に向けて、国内外の標準の専門家等と連携して、リファレンスアーキテクチャなどを対象に、今後の国際標準の活用と海外展開に向けた国際標準提案及び国内外の体制構築等について検討を実施した。
(持続的活動を担う次世代人材の育成)
関係府省は、スマートシティの実現に必要な人材育成等の課題について、先行する取組事例を掲載したスマートシティガイドブックを取りまとめ、令和3年4月に公開するとともに、これらの運営上の課題解決の取組についての検討を実施している。
(様々な社会課題を解決するための研究開発・社会実装の推進と総合知の活用)
人文・社会科学と自然科学の融合による「総合知」を活用しつつ、我が国と価値観を共有する国・地域・国際機関等と連携して、社会課題や課題の解決に向けて、研究開発と成果の社会実装に取り組むことで、未来の産業創造や経済成長と社会課題の解決が両立する社会を目指している。
(総合知を活用した未来社会像とエビデンスに基づく国家戦略の策定・推進)
内閣府では、人間や社会の総合的理解と課題解決に貢献する「総合知」に関して、「総合知」が求められる社会的背景を踏まえ、「総合知」に関する基本的な考え方、さらに戦略的な推進方策を検討し、中間取りまとめとして取りまとめた。また、あわせて、理解を促進するための参考資料として総合知の活用事例集と総合知に関連する施策例の一覧を作成した。
(つづく)Y.H
(出典)
文部科学省 令和4年版科学技術・イノベーション白書
科学技術・イノベーション白書