ISO審査員及びISO内部監査員に文部科学省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。

■諸外国との協力

(欧米諸国等との協力)
我が国と欧米諸国等との協力活動については、ライフサイエンス、ナノテクノロジー・材料、環境、原子力、宇宙開発等の先端研究分野での科学技術協力を推進している。具体的には、二国間科学技術協力協定に基づく科学技術協力合同委員会の開催や、情報交換、研究者の交流、共同研究の実施等の協力を進めている。米国との間では、1988年(昭和63年)6月に署名された日米科学技術協力協定に基づき、日米科学技術協力合同高級委員会(大臣級)や日米科学技術協力合同実務級委員会(実務級)が設置され、2021年(令和3年)6月には第16回日米科学技術協力合同実務級委員会を開催し、科学技術政策、既存の協力及び新たな協働分野に関し意見交換を行った。また、2021年(令和3年)4月の日米首脳会談で「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」を立ち上げ、AI、量子、宇宙、バイオテクノロジー、健康・医療等の重要分野における協力を推進することを確認した。

これに基づき、量子分野では第16回日米科学技術協力合同実務級委員会において、文部科学省と米国エネルギー省の間で、量子技術に係る事業取決めに署名した。また、SICORPでは2021年(令和3年)から非医療分野における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連研究、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により求められる新たな生活態様に資するデジタルサイエンス分野の研究を実施している。EUとの間では、2021年(令和3年)5月に開催された第27回日EU定期首脳協議で、日EUグリーン・アライアンスに関する文書が発出された。また、総務省と欧州委員会の間では、2019年(令和元年)11月から第5次日EU共同公募としてeHealth分野の研究開発課題を募集し、2020年(令和2年)10月に1件を採択し、2021年度(令和3年度)も継続して研究開発を実施している。2021年(令和3年)6月には米国、スペイン、10月には英国、11月にはノルウェー、EU、2022年(令和4年)3月にはイスラエル、カナダとの間でそれぞれ科学技術協力合同委員会を開催し、双方間における科学技術協力の更なる促進について議論が行われた。

(中国、韓国、ロシアとの協力)
中国とは、2018年(平成30年)8月に文部科学省と中国科学技術部との間で署名された協力覚書に基づき、SICORP「国際共同研究拠点」(環境・エネルギー分野)が実施されている。日中韓3か国の枠組みでは、文部科学省科学技術・学術政策研究所と中韓の科学技術政策研究機関が協力して開催している日中韓科学技術政策セミナーが、2年連続でオンライン形式で開催された。ロシアとは、2017年(平成29年)9月に文部科学省とロシア教育科学省との間で署名された協力覚書に基づき、優先協力分野である「北極研究を含む合理的な自然利用」及び「エネルギー効率」、「原子力科学」に関して日露間の共同研究を実施してきた。

(ASEAN諸国、インドとの協力)
アジアには、環境・エネルギー、食料、水、防災、感染症など、問題解決に当たって我が国の科学技術を生かせる領域が多く、このようなアジア共通の問題の解決に積極的な役割を果たし、この地域における相互信頼、相互利益の関係を構築していく必要がある。文部科学省は、科学技術振興機構と協力して、2012年(平成24年)6月に、研究開発力を強化するとともに、アジア諸国が共通して抱える課題の解決を目指し多国間の共同研究を行う「e-ASIA共同研究プログラム」を発足させた。同プログラムは、東アジアサミット参加国の機関が参加し、「材料(ナノテクノロジー)」、「農業(食料)」、「代替エネルギー」、「ヘルスリサーチ(感染症、がん)」、「防災」、「環境(気候変動、海洋科学)」、「イノベーションに向けた先端融合」の7分野を対象にしている。

なお、ヘルスリサーチ分野については、2015年(平成27年)4月から日本医療研究開発機構において支援している。また、2020年度(令和2年)には、新型コロナウイルス感染症に関する共同研究プロジェクトの緊急公募を行った。このほか、SICORP「国際共同研究拠点」として、2015年(平成27年)9月よりASEAN地域(環境・エネルギー、生物資源、生物多様性、防災分野)、2016年(平成28年)10月よりインド(ICT分野)において支援を開始した。イノベーションの創出、日本の科学技術力の向上、相手国・地域との研究協力基盤の強化を目的として、日本の「顔の見える」持続的な共同研究・協力を推進するとともにネットワークの形成や若手研究者の育成を図っている。また、2020年11月には、インドとの間で第10回日・インド科学技術協力合同委員会をテレビ会議形式で開催し、科学技術分野における協力が継続的に推進されていることを歓迎した。

(その他の国との協力)
その他の国との間でも、情報交換、研究者の交流、共同研究の実施等の科学技術協力が進められている。2019年(令和元年)第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の公式サイドイベントとして文部科学省が開催した「STI for SDGsについての日本アフリカ大臣対話」での議論を踏まえ、同年12月に、新たに、日本と南アフリカを核として3か国以上の日・アフリカ多国間共同研究を行うプログラム「AJ―CORE」の研究公募が開始され、2021年(令和3年)2月に4件が採択された。

アジア、アフリカや中南米等の開発途上国との科学技術協力については、これらの国々のニーズを踏まえ、地球規模課題の解決と将来的な社会実装に向けた国際共同研究を推進するため、文部科学省、科学技術振興機構及び日本医療研究開発機構並びに外務省及び国際協力機構が連携し、我が国の優れた科学技術と政府開発援助(ODA)を組み合わせた「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」を実施している。平成20年度から令和3年度(2008年度から2021年度)に、環境・エネルギー、生物資源、防災や感染症分野において、53か国で168件(地域別ではアジア91件、アフリカ42件、中南米25件等)を採択している。文部科学省は、我が国のSATREPSに参加する大学に留学を希望する者を国費外国人留学生として採用する、国際共同研究と留学生制度を組み合わせた取組を実施している。これにより、国際共同研究に参画する相手国の若手研究者等が、我が国で学位を取得することが可能になるなど、人材育成にも寄与する協力を進めている。

(研究活動の国際化・オープン化に伴う研究の健全性・公正性(研究インテグリティ)の自律的な確保)
研究活動の国際化、オープン化に伴う新たなリスクへ適切に対応していく観点から、研究者や大学・研究機関等が研究の健全性・公正性(研究インテグリティ)を自律的に確保することが重要であるため、令和3年4月に統合イノベーション戦略推進会議において「研究活動の国際化、オープン化に伴う新たなリスクに対する研究インテグリティの確保に係る政府としての対応方針について」を決定した。これに基づき、令和3年12月に、研究者に対し所属研究機関や研究資金配分機関への適切な情報提出を求めることを明確にするため、「競争的研究費の適正な執行に関する指針」の改定を行った。

(研究の公正性の確保)
研究者が社会の多様なステークホルダーとの信頼関係を構築するためには、研究の公正性の確保が前提であり、研究不正行為に対する不断の対応が科学技術・イノベーションへの社会的な信頼や負託に応え、その推進力を向上させるものであることを、研究者及び大学等の研究機関は十分に認識する必要がある。公正な研究活動の推進については、文部科学省では、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日文部科学大臣決定)に基づき、研究機関における体制整備等の取組の徹底を図るとともに、日本学術振興会、科学技術振興機構及び日本医療研究開発機構と連携し、研究機関による研究倫理教育の実施等を支援するなどの取組を行っている。研究費の不正使用の防止については、文部科学省では、「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(平成19年2月15日文部科学大臣決定。以下「ガイドライン」という。)に基づき、研究機関における公的研究費の適正な管理を促すとともに、研究機関の取組を支援するための指導・助言を行っている。

さらに、令和3年2月にガイドラインを改正し、研究費不正防止対策の強化を図っている。経済産業省では、「研究活動の不正行為への対応に関する指針」(平成27年1月15日改正)及び「公的研究費の不正な使用等の対応に関する指針」(平成27年1月15日改正)により対応を行うなど、関係府省においてもそれぞれの指針等に基づき対応を行っている。また、不正行為等に関与した者等の情報を関係府省で共有し、「競争的研究費の適正な執行に関する指針」(令和3年12月17日改正競争的研究費に関する関係府省連絡会申し合わせ)に基づき、関係府省全ての競争的研究費への応募資格制限等を行っている。

(つづく)Y.H

(出典)
文部科学省 令和4年版科学技術・イノベーション白書 
科学技術・イノベーション白書