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内部監査については、当社ホームページ「平林良人の部屋」に既に「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」を連載しています。内部監査の基本はその質問100選の回答に書いたことがほとんどであると思います。
しかし、2018年にISO 19011が改訂され、ISO 9001に基づく品質マネジメントシステムでは改めてこの改訂されたISO 19011に沿って内部監査を行うことが推奨されますので、重複するところがあるかもしれませんがISO 19011:2018を引用しながら内部監査でのポイントをできるだけわかりやすく解説しようと思います。
なお、ISO 19011:2018の対応国内規格はJIS Q 19011:2019です。文中の規格からの引用はJIS Q 19011:2019によります。
【質問2】
質問1への回答に、改善するためにはまず監査される部署の今の状況を知ることが必要だとありますが、これに関する手引きは、ISO 19011:2018のどこに書かれていますか?
【回答2】
内部監査員は、監査に行く前に被監査部署の状況を知ることで、効果的に、効率的に内部監査をすることができます。今の状況を知ることの基本は、被監査部署に存在する仕事に関する手順書を読むことです。監査員は被監査部署に関係する手順書を事前に読んで部署の業務手順を理解しておくことが何より大切です。
ISO 19011:2018に「監査される部署の今の状況を知ること」が直接手引きされている所は、箇条7「 監査員の力量及び評価」にある7.2.3.2 「マネジメントシステム監査員の共通的な知識及び技能」c) 「組織及び組織の状況」の部分です。
以下、ISO 19011:2018からの抜粋です。
「この領域の知識及び技能によって,監査員は,被監査者の組織構造,目的及びそのマネジメントの実践を理解することが可能となる。この領域の知識及び技能には,次の事項を含めることが望ましい。
- マネジメントシステムに影響を及ぼす,関連する利害関係者のニーズ及び期待
- 組織のタイプ,統治,規模,構造,機能及び関係
- 全般的な事業及びそのマネジメントの概念,プロセス及び関係する用語。これには,計画,予算化 及び人事管理を含む。
- 被監査者の文化的及び社会的側面」
ISO 19011のこの部分にはいろいろ難しく書かれていますが、知っておくことについての「全般的な事業及びそのマネジメントの概念,プロセス及び関係する用語」の中に、手順書が含まれていると理解できます(プロセス)。
さらに箇条5.1には、監査プログラムに考慮されるべきことの一つとして、「関連する外部及び内部の課題を入れることが望ましい」と示されています。
以下、JIS Q 19011:2019からの抜粋です。
「5 監査プログラムのマネジメント
5.1 一般
(略)
被監査者の状況を理解するために,監査プログラムは,被監査者について,次の事項を考慮に入れることが望ましい。
- 組織の目的
- 関連する外部及び内部の課題
- 関連する利害関係者のニーズ及び期待 」
この部分は監査員が監査を計画するときに、監査される部署の「課題(外部、内部)を入れてプログラムを作ることが望ましいとしている所です。
被監査者の課題を知ることは、とりもなおさず被監査部署の今の状況を知ることになります。この「関連する外部及び内部の課題」は、目指すべき状態とのギャップであり、改善を要する項目であると理解すると良いと思います。
ISO 19011:2018はその課題を、外部及び内部の2つに区分して記述していますが、内部監査される部署の課題の明確化はもっと身近なレベルの課題の明確化でよく、外部、内部と分けなくても良いと思います。規格の意図は、組織全体を俯瞰した時にはこの2つの区分で課題を明確にすることが良いとしておりますが、内部監査では被監査部署の身近なレベルの課題、例えば、手順書の不順守、必要技能の欠落、関係部署とのコミュニケ―ション不在、チェックにおける見過ごしなどは、どんな職場にも存在しうる身近な課題です。これらを無くすことは立派な改善ですし、どのようにして改善していくのかは内部監査に課せられた重大なポイントになると思います。
なお、箇条5.1の3番目のビュレットの「関連する利害関係者のニーズ及び期待」も被監査者の今の状態を知るきっかけになる項目です。関連する利害関係者がどのようなニーズ及び期待を被監査者に対して持っているのか、それは達成されているのか、もし達成されていないのであれば改善する必要があるのかの分析、自問自答が必要になります。
「JIS Q 19011:2019の該当する部分」 (抜粋)
7.2.3.2 マネジメントシステム監査員の共通的な知識及び技能
監査員は,次に概要を示す領域の知識及び技能を備えていることが望ましい。
c) 組織及び組織の状況:
この領域の知識及び技能によって,監査員は,被監査者の組織構造,目的及びそのマネジメントの実践を理解することが可能となる。この領域の知識及び技能には,次の事項を含めることが望ましい。
- マネジメントシステムに影響を及ぼす,関連する利害関係者のニーズ及び期待
- 組織のタイプ,統治,規模,構造,機能及び関係
- 全般的な事業及びそのマネジメントの概念,プロセス及び関係する用語。これには,計画,予算化 及び人事管理を含む。
- 被監査者の文化的及び社会的側面
5 監査プログラムのマネジメント
5.1 一般 (抜粋、下線部は筆者追加)
被監査者の状況を理解するために,監査プログラムは,被監査者について,次の事項を考慮に入れることが望ましい。
- 組織の目的
- 関連する外部及び内部の課題
- 関連する利害関係者のニーズ及び期待
- 情報セキュリティ及び機密保持の要求事項
(次号へつづく)
ISO関連用語解説「19011とは」はこちらから