内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。

C:監査の実施
ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。

【質問21】
監査チームリーダーの力量要素について教えてください。

【回答21】
内部監査チームはメンバーとリーダーとから構成されます。チームリーダーは監査チームを統括し、内部監査を計画したとおりに推進する管理責任を負います。チームリーダーは回答19で説明しました監査員としての力量要素を備えていなければなりません。加えて内部監査チームを統率する力、そしてチームをマネジメントする力が要求されます。内部監査チームリーダーには、内部監査の経験を積んだ人でかつマネジメント力にある人が推奨されます。

内部監査リーダーの力量の例は次の通りです。

①3回以上の内部監査を経験していること。
②その3回の内部監査の力量評価がいずれもAであること。
(注)内部監査のレビューにおいてチームに編成された監査員全員をA、B、C(高い→低い)3段階で評価する。
③統率力あるいはマネジメント力がある。
②については、もう少し説明が必要だと思いますが、今後このシリーズで予定しているD:監査のチェック段階の質問(予定:質問43、質問44)で扱います。
③については、統率力及びマネジメント力については、それぞれを掘り下げると次のようなり力量になると思います。
・統率力を掘り下げた力
-発信力:自分の意見をわかりやすく伝える力
-傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
-柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
-状況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
-規律性:社会のルールや人との約束を守る力
-ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力

・マネジメント力を掘り下げた力
-計画力:目標達成に向けたプロセスを明らかにし組み立て表現する力
-主体性:物事に進んで取り組む力
-働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
-実行力:目標達成に向けて確実に行動する力
-課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力

「JIS Q 19011:2019の該当する部分」 (抜粋、赤字は筆者追加)
7.2.3.4 監査チームリーダーの共通的な力量
監査の効率的及び有効な実施を容易にするために,監査チームリーダーは,次の事項を行う力量を備えていることが望ましい。
a) 監査を計画し,個々の監査チームメンバーの固有の力量に応じて監査業務を割り当てる。
b) 被監査者のトップマネジメントと戦略的課題について意見交換する。これは,被監査者が組織として,そのリスク及び機会を評価する際にこれらの課題を考慮したかどうかを決定するためである。
c) 監査チームメンバー間に協力的な業務関係を構築し,維持する。
d) 次の事項を含む監査プロセスをマネジメントする。
- 監査中に資源を有効に利用する。
- 監査目的を達成することの不確かさをマネジメントする。
- 監査中の監査チームメンバーの安全衛生を保護する。これには,監査員が関連する安全衛生及びセ キュリティに関する取決めの順守を確実にすることを含む。
- 監査チームメンバーを指揮する。
- 訓練中の監査員を指揮及び指導する。
- 必要な場合,監査チーム内のものを含めて,監査中に発生し得る利害抵触及び問題を防ぎ,解決する。
e) 監査プログラムをマネジメントする人,監査依頼者及び被監査者とのコミュニケーションでは監査チームを代表する。
f) 監査チームを導いて,監査結論に達する。
g) 監査報告書を作成し,完成する。

(次号へつづく)

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