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内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。
C:監査の実施
ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。
【質問25】
監査員の分野固有の知識、ISO45001労働安全マネジメント監査をするときの知識について教えてください。
【回答25】
ISO45001労働安全マネジメントシステムを監査するときの分野固有知識には次のものがあります。
1.ISO45001:2018 規格の知識
ISO 45001は、2018年に、それまで世界の労働安全衛生法マネジメントシステム認証の基準規格として使われていたOHSAS 18001規格に代わるものとしてスイスジュネーブにあるISOから発行されました。ISOは1987年に品質マネジメントシステムISO9001を、1996年に環境マネジメントシステム規格ISO 14001を発行し、続いて1999年には労働安全衛生マネジメントシステム規格を発行したいと活動を行っていました。
しかし、ILO(International Labour Organization:ILO世界労働機構※)は、労働安全衛生関係は自分たちの領域であるとしてISO規格発行を阻止しようとしました。その両者の対立は2012年まで続きましたが、ILOのトップが交代した折に両者の和解が進み、新たな専門技術委員会PC283が設置され、以来5年掛けて審議して、2018年にISO規格としてデビューしました。
※1919年に創設された世界の労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする国連最初の専門機関。 本部はスイスのジュネーヴ。 加盟国は187ヶ国(2016年2月現在)。
ISO 45001は次のような特徴を持っています。詳しくは日本規格協会からの出版物で勉強してください。
(1) 働く人(トップも含む)の協議と参加
(2) 組織の目的、意図した成果、組織の能力、外部・内部の課題
(3) 働く人とその他の利害関係者のニーズと期待
(4) OH&Sに必要なプロセスの明確化
(5) リーダーシップの強化
(6) 意図した成果の達成
(7) 事業プロセスとOH&Sマネジメントシステム要求事項の統合
(8) 2つのリスク(リスク、OH&Sリスク)
(9) 2つの機会(機会、OH&S機会)
(10)OH&Sパフォーマンスの評価
2.労働安全衛生に関係する法の知識
ISO 45001には法律の要求事項を遵守しなければならないという要求があります。組織ごと供給する製品及びサービスが異なりますので、当然適用される法律も異なります。すべてを知るということは法律の専門家でない限り現実的ではありませんが、以下のような法律の知識(例です)を持つことをお勧めします。詳しくは中災防からの出版物で勉強してください。
・労働安全衛生法
・労働安全衛生施行令
・労働安全衛生規則
・諸規則(例えば、下記)
-ボイラー及び圧力容器安全規則
-クレーン等安全規則
-ゴンドラ安全規則
-製造時等検査代行機関等に関する規則
-機械等検定規則
-有機溶剤中毒予防規則
-四アルキル鉛中毒予防規則
-特定化学物質等障害予防規則
-高気圧作業安全衛生規則
-電離放射線障害防止規則
-酸素欠乏症等防止規則
-事務所衛生基準規則
-粉じん障害防止規則
-石綿障害防止規則
3.リスクアセスメントの知識
リスクアセスメントは「リスク分析」と「リスクの評価」からなるすべての活動を言います。リスク分析(Risk Analysis)とは、入手可能な情報を体系的に用いて危険源(ハザード)を特定してリスクの大きさを見積もることを言います。ここで、危険源(ハザード)とは、人への傷害若しくは健康障害、又は財産及び環境への損害を予測させる危害の潜在的な源を言い、次のような様々なものがあります。
(1)機械的危険源
(2)電気的危険源
(3)熱的危険源
(4)騒音による危険源
(5)振動による危険源
(6)放射線による危険源
(7)材料及び物質による危険源
(8)人間工学原則無視による危険源
(9)機械が使用される環境に関連する危険源
(10)危険源の組合せ
(次号へつづく)
ISO関連用語解説「19011とは」はこちらから