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内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。
C:監査の実施
ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。
【質問39】
ISO19011には、監査所見という言葉が出てきますが、不適合と観察事項の記述にはどのような関係があるのか教えてください。
【回答39】
内部監査のまとめ段階にはいろいろな言葉が出てきます。【回答36】~【回答38】の回答とも重複しますが、内部監査では重要なことですので改めて整理して回答します。
まずISO19011に出てくる「監査所見」の英語は“audit findings”です。すなわち、「監査で発見したこと」を監査所見と言っています。
ISO19011 箇条3.10 監査所見
収集された監査証拠を,監査基準に対して評価した結果。
注記1 監査所見は,適合又は不適合を示す。
この監査所見の定義に出て来る言葉(用語)は次の通りです。
-監査証拠
-監査基準
-適合
-不適合
「監査所見」の定義に「不適合」は出てきますが「観察事項」は出てきません。すなわち、「観察事項」という概念はISO19011にはありません。
では「観察事項」とは何かということになりますが、これは第三者審査の中で使われてきた言葉からきています。多くの認証機関は、監査所見に「重大な不適合」、「軽微な不適合」、「観察事項」の3つの区分をしています。この内部監査質問50選では、「重大な不適合」、「軽微な不適合」は一つに纏めて「不適合」と区分しています。
さて、質問の「不適合と観察事項の記述とはどのような関係があるのか」についてお答えします。基本的には、不適合と観察事項は独立した個別の概念なので、両者の記述の間に関係はありません。しかし、不適合は「要求事項に合っていないこと」をどのように直すのかという次の段階になると、不適合への改善ということになり、この段階で観察事項すなわち「改善したほうが良いこと」と関係が出てきます。職場には不適合ではないのですが、改善したいことはいろいろあると思います。それが観察事項であるということになります。
< JIS Q 19011:2019の該当する部分> 下線は筆者が追加した。
6.4.8 監査所見の作成
監査所見を決定するために,監査基準に照らして監査証拠を評価することが望ましい。監査所見では,
監査基準に対して適合又は不適合のいずれかを示すことができる。監査計画で規定されている場合には,個々の監査所見には,根拠となる証拠を伴った適合性及び優れた実践事例,改善の機会,並びに被監査者に対するあらゆる提言を含めることが望ましい。
不適合及びその根拠となる監査証拠は,記録しておくことが望ましい。
不適合は,組織の状況及びそのリスクによって格付けすることが可能である。この格付けは,定量的なもの(例えば,1 から5)も定性的なもの(例えば,軽微,重大)もあり得る。不適合は,被監査者とレビューすることが望ましい。これは,監査証拠が正確であること,及び不適合の内容が理解されたことについて被監査者の確認を得るためである。監査証拠又は監査所見に関して意見の相違がある場合には,それを解決するためのあらゆる努力を試みることが望ましい。解決できなかった課題は,監査報告書に記録しておくことが望ましい。
監査中の適切な段階で監査所見をレビューするために,監査チームは,必要に応じて打合せをすることが望ましい。
注記1 監査所見の特定及び評価についての追加の手引をA.18 に示す。
注記2 法令・規制要求事項又はその他の要求事項に関係する監査基準に対する適合又は不適合は,順守又は不順守と呼ばれることもある。
A.18 監査所見
(略)
A.18.2 適合の記録
適合の記録には,次の事項を考慮することが望ましい。
a) 適合を示す監査基準の記述又は監査基準への参照
b) 該当する場合,適合を支持する監査証拠及び,その有効性
c) 該当する場合,適合の明示
A.18.3 不適合の記録
不適合の記録には,次の事項を考慮することが望ましい。
a) 監査基準の記述又は監査基準への参照
b) 監査証拠
c) 不適合の明示
d) 該当する場合,関係する監査所見
(つづく)
ISO関連用語解説「19011とは」はこちらから