内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。

D:監査のチェック
 ここでは内部監査のチェック段階の質問を扱います。
【質問43
監査員の力量の評価について教えてください。
【回答43
監査員の力量の評価は、明確化された監査員に求められる力量を評価基準にして行うのが良いと思います。
監査員の力量は質問20で扱っています。
・観察するスキル(文書の確認・レビューを含む)
・質問するスキル(インタビュー)
・文書作成スキル(監査所見、監査結論及び報告書の作成)
・サンプリングスキル

上記4つの監査員の力量(監査スキル)について説明します。
①観察するスキル(文書の確認・レビューを含む)
 職場(雰囲気、照明、温湿度、騒音、換気など)、人々の作業(プロセス)、機械、設備、材料、保管状態、文書・記録の保管状態などは、ただ漫然と眺めていたのでは観察したことになりません。
何を観察すべきかその対象を事前に決めておき、対象を規定している標準を事前に読み込み、ポイント把握しておくことが重要です。標準としては、例えば、手順書、取扱い標準、点検基準、組成表、環境基準、安全基準等いろいろなものがあります。
②質問するスキル(インタビュー)
 できるだけ、5W1Hの質問形式でインタビューします。Yes、Noで答えられる質問はあまりしないようにします(絶対にしないということではありません)。
③文書作成スキル
 監査所見、監査結論及び内部監査報告書などの文書の作成が適切にできるスキルです。文書作成の目的、文書の構成、主語と述語、使用する語彙、誤字脱字など習得する要素が多くあります。
④サンプリングスキル
 質問する相手を選んだり、観察する文書・記録を選んだりする主導権は監査する側にあることを明確にしておくことが大切です。被監査側にサンプリングの主導権を与えると客観的な内部監査にならない恐れがあります。なぜならば、被監査者は自分に都合の良い対象を選ぶ(サンプリングする)からです。

組織はこれらのスキルを評価します。評価は3段階~5段階までのいろいろな段階での評価があり得ますが、組織が適切だと思う段階数で評価すれば良いと思います。この評価段階は一度決めたら変えないようにします。評価項目と評価段階のマトリックス評価表を作成すると良いでしょう。

< JIS Q 19011:2019の該当する部分> 
7.4 監査員の適切な評価方法の選択
評価は,表2 に示す方法の二つ以上を利用して行うことが望ましい。表2 を利用するときは,次の事項に注意することが望ましい。
a) 表2 に概要を示した方法は,様々な選択肢の中の代表的なものであり,全ての状況に適用してよいとは限らない。
b) 表2 に概要を示した様々な方法の信頼性は,それぞれ異なってよい。
c) 評価結果が客観的で,一貫性をもち,公正で,かつ,信頼できることを確実にするために,複数の評価方法を組み合わせて用いることが望ましい。

(つづく)

ISO関連用語解説「19011とは」はこちらから