2019年にJIS Q 19011が発行されましたが、認証審査においてはこのJIS Q 19011に沿って内部監査を行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。なお、以下の文中ではJIS Q 19011:2019をISO19011:2018と表記しているところがあります(JIS Q 19011:2019はISO19011:2018の翻訳規格)。

B:内部監査の計画
ここでは内部監査の計画段階の質問を扱います。
【質問7】
「監査計画」について教えてください。

【回答7】
JIS Q 19011:2019には、内部監査の計画に関する用語が2つあります。監査プログラムと監査計画です。今回は後者の監査計画を説明します。監査計画は1回の内部監査の計画を意味しています。監査プログラムが大きな計画であるのに対して、監査計画は小さな計画であると言うことが出来ます。
内部監査は被監査部署との事前調整が大切です。被監査部署と事前に調整できたことを前提に、監査計画に網羅すべき項目を上げてみます。

・被監査部署
・監査日時
・監査場所
・監査チーム
  -リーダー
  -メンバー
  -(もしいれば、オブザーバ、技術専門家)
・監査基準
・監査時間割
・監査で被監査部署に準備しておいてほしいもの
  -業務手順書
  -業務記録
  -会議室
  -監査訪問現場への周知
  -(もし必要であれば、プロジェクタ、白板)
・添付資料一覧
  -監査時使用帳票
  -チェックリスト(事前に被監査部署に送付するか、しないかは組織の考えによる)

監査計画は、予定日の2週間前くらいには関係者に送付することが望まれます。
 
今回の回答のまとめです。
監査計画は、一回の内部監査の実施計画のことを言います。被監査部署との事前調整を経て内部監査員と被監査者の間で行き違いがないように、詳細な項目を抜けが無いように計画書にまとめます。

「JIS Q 19011:2019の該当する部分」 (抜粋、赤字は筆者追加)
3.6 監査計画
監査のための活動及び手配事項を示すもの。
(出典:JIS Q 9000:2015 の 3.13.6)

6.3.2.2 監査計画の策定の詳細
監査計画の策定の規模及び内容は,例えば初回の監査とその後に続く監査とで異なり得る。また,内部監査と外部監査とでも同様である。監査計画の策定は,監査活動の進行に伴って必要となり得る変更を許容する十分な柔軟性をもっていることが望ましい。
監査計画の策定は,次の事項に対処するか,又はその参照先を示すことが望ましい。

a) 監査目的
b) 監査範囲。これには,監査の対象となる組織及び組織の機能並びにプロセスの特定を含む。
c) 監査基準及びあらゆる参照となる文書化した情報
d) 監査活動を行う場所(物理的及び仮想的),日程,予定時間及び予定の工数。これには,被監査者の管理層との会議を含む。
e) 監査チームが,被監査者の施設及びプロセスを理解する必要性(例えば,物理的な場所の視察,又は 情報通信技術のレビューによって)
f) 使用する監査方法。これには,十分な監査証拠を得るために必要な監査サンプリングの程度を含む。
g) 監査チームメンバーの役割及び責任。案内役,及びオブザーバ又は通訳者の役割及び責任も同様である。
h) 監査対象となる活動に関係したリスク及び機会の考慮に基づいた,適切な資源の配分

監査計画の策定には,必要に応じて,次の事項を考慮に入れることが望ましい。

- 監査に対する被監査者の代表者の特定
- 監査の作業及び報告に用いる言語で,監査員若しくは被監査者又はその両方の言語と異なる場合
- 監査報告書の記載項目
- 監査の後方支援(logistics)及びコミュニケーションに関する手配事項。これには,監査の対象となる 場所に対する個別の手配を含む。
- 監査目的の達成に対するリスク及び発生する機会に対処してとるあらゆる個別の処置
- 機密保持及び情報セキュリティに関係する事項
- 前回の監査又はその他の情報源,例えば,得られた知見,プロジェクトレビューなどに対するあらゆるフォローアップ処置
- 計画した監査に対するあらゆるフォローアップ活動
- 合同監査の場合,他の監査活動との調整

監査計画は,被監査者に提示することが望ましい。監査計画についてのあらゆる課題は,監査チームリーダー,被監査者,及び必要があれば監査プログラムをマネジメントする人との間で解決することが望ましい。

(次号へつづく)

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