第34回

ISO/TC176/9001国際会議は、メキシコアカプルコの翌年2003年、ルーマニアのブカレストで行われました。
2003年のブカレスト総会中、ISO 9004の改正に関連して,TR Q 0005/0006(2005年12月にJIS Q 9005/9006として制定.)についてのワークショップが開催されたことをお話ししたいと思います。このワークショップを経て,日本のTR文書が“ISO 9004:2000改正版への重要文書”と認知されたのです。
ブカレストでは日本の主催するワークショップが行われました。ワークショップはその前年のアカプルコ総会でも実施しましたが,その位置付けは全く異なるものでした。アカプルコでのワークショップは日本主催の「非公式」行事でしたが、ブカレストではSC 2の「公式」行事と位置付けられたものでした。日本の規格TR(JISの技術指針)の内容説明と,SC 2及びPOTG(Planning and Operation Task Group:WG18の幹事会的グループ)からのコメントへの日本の回答でした。そして質疑応答を踏まえて,ISO 9001/9004の定期見直し開始を控えたこの時点で,日本のこの文書をどう扱うか,WG 18(QAQMの整合のとれたペア規格の作成),さらにSC 2としての態度を決めようというものでした。
結果は好評でしたが,日本勢としてはあまりよい気持ちのではありませんでした。
以下は日本派遣団代表の飯塚先生の記録から引用させていただきます。

「TRは、日本がTQM(Total Quality Management:総合質経営,総合質マネジメント)のJIS化を目指し,またISO 9004を超えるモデルを提示することをねらって開発していた規格である.これら規格の検討の経緯からも私自身に思いがあり,書き始めたら止まらず本1冊程度になってしまうだろう。だから,これきりにする。
ブカレスト会議では,私にとってもう一つちょっとした“事件”があった。ISO 9001/9004の審議を担当するSC 2/WG 18のリーダは米国のJeff Hooper,副リーダはオーストラリアのJohn Owenが務めてきた。そのJohn OwenがIAFの事務局長になって,ISO/TC 176の活動から離れたのである。WG 18の副リーダの後任を選ばなければならない。ある日Jeffが,こともあろうに飯塚に打診してきた。他に候補者はいくらでもいる。英語の能力の問題があるので一度は断ろうとしたが,返事は今すぐでなくてもよいという。SC 2の事務局(Secretariat)のCharles Corrieに相談し,冷静に他の候補者との能力タイプの比較検討をして,引き受けることにした。ISO 9004を売れる規格にするには飯塚が向いているだろうし,コンサルタントや認証機関からの専門家が多い中で,最も中立的で高い見地から意見を言うのは飯塚だと判断できるとCharlesは褒める。JIS/TRを売り込みたいし,多忙でちょっとつらいがまあ何とかなると腹を決めた。<ISO/TC 176/SC 2ブカレスト総会決議>」