第36回

私のISO体験談をお話ししています。2003年ルーマニア・ブカレスト総会の決議を受けて,2003年12月〜2004年6月の半年間,ISO9001:2000年版の定期見直しの投票が行われました。定期見直し投票においては,まず当該規格の有用性について評価するルールになっています。それは次の3項目について採点をするというもので、5点満点で3項目を採点するので合計は15点ということになります。
①国際取引への貢献
②経済的効率・健康・安全・環境への貢献
③利用の程度
投票国はSC 2の加盟団体の数を考慮すると決して多いとはいえませんでしたが,結果は平均12.42で,とにかく“必要な”国際規格であることに疑問の余地はない高い支持を受けたのです。

次に,この規格の処置,すなわち確認(維持),廃棄(廃止),変更(修正・改正)のいずれとすべきかについては,投票国の8割以上が改正,2割弱が確認(変更せずにそのまま使用)と回答していました。日本はこの定期見直しにおいて,次に示すような回答を事務局に送っています。
「日本における対応規格は,JIS Q 9001:2000(JIS規格)である。移行期間が過ぎて間もないことを考慮すると,ISO 9001:2000を大幅に改正することはまだ早い。
しかし,3年間の運用において規格利用者にとって正しく理解することが困難な箇所が存在することも事実である。したがって,規格の要求事項を明確にするために,“要求事項を変更することなく規格を修正する”(amending the standard without changing the requirements)ことを提案する。」

このことが具体的に何を意味するのかを理解していただくために以下に当時どんな変更が必要であると考えられたかの例を示します。

  • 1)規格の全体的な一貫性から順序を変える。
    • a)“8.2.1顧客満足”,“8.5.1継続的改善”を箇条5 (経営者の責任)に移動。
    • b)“8.2.4製品の監視及び測定”,“8.3不適合製品の管理”を箇条7 (製品実現)に移動。
  • 2)概念を明確にする。
    • a)プロセスアプローチ(0.2):
      PDCAサイクルとの関係を明確にする。マネジメントシステムは,マネジメントフレームワーク,製品実現及び支援活動から成り立つ。
    • b)支援文書N544R2を反映したアウトソースしたプロセスの内容
  • 3)要求事項を明確にする。
    • a)1.1(一般)参考“製品”:
      “product”の後ろに“where used independently”を入れる。規格利用者の一部は,購買製品
      もこの参考に従うと誤解している。
    • b)品質マネジメントシステムの計画 (5.4.2 a):
      品質目標を満たす品質マネジメントシステム計画と4.1の規定要求事項を満たす品質マネジメントシステム計画の関係を明確にする。
    • c)内部コミュニケーション(5.5.3):
      “appropriate communication processes”を“appropriate communication activities”に変更する。
    • d)製品実現の計画(7.1):
      ここでの要求事項は,単に製造又はサービス提供の計画を述べているのではなく,製品がすべての要求事項に適合するような製品実現(サービス提供)の総合的な計画を要求していることを明確にする。
  • 4)他の規格との整合性を高める。
    • 内部監査(8.2.2):
    • ISO 19011に準じて“objectivity and impartiality”を“independence”に変更する。

(つづく)