第42回

ISO9001:2000追補改正仕様の性格
ISO9001:2000に対する追補の仕様書検討は,2004年11月〜12月のクアラルンプール総会のときから始まりました。この週に作業をし,さらに翌2005年5月にコロンビアのカルタヘナで開催されたSC 2総会のときにも検討を続け,この総会のあとに投票にかけられ,作業開始から約1年を経た2005年10月初めに承認されるという予定が組まれたのです。
仕様書にどのようなことを記述したのか,その概略を示すため仕様書の目次はここでは示しません。
技術的内容を変えることのない追補というISO9001:2000の追補改正版の仕様とは,一体いかなるものになるのだろうか。簡単と思いきや,これが案外難しかったのです。まず,表題も規格の構成も変更はしない。技術的内容を変えない範囲で,何のために規格の内容を変えるのかを規定しなければなりませんでした。
しかし、前述してきたように,
①要求事項の明確化
②ISO/TC176による公式の解釈を必要とするようなあいまいさの除去
③ISO14001との両立性向上
などを目的とすることに決められました。

それでは,これらの理由による変更の候補はどのように上ればよいのでしょうか。
①については,オンラインユーザ調査,定期見直しの際の各国コメントが主なインプットになります。
②は簡単と思われました。ISO9001の適用経験の間にISO/TC176に寄せられた公式の解釈要請が37件あったので,これを分析すればよいことになりました。
③はISO/TC207からの要請を分析すればよいという道筋になりました。TC176とTC207は,様々なチャンネルをもって意見交換をしていたから,こうしたインプットは容易に得られます。

次に,何らかの変更が示唆されたとき,その変更を実施すべきかどうかの判断基準,判断方法を決めておかなければなりません。これに対しては,変更することによる影響と便益の大きさを勘案して決めることになりました。仕様書の附属書Bにツールと称するものが記載されましたが,概念はわかるもののとてもツールとはいえず,現実には恣意性が相当に入る余地がありました。ただ、明確な基準などあろうはずもなく,影響の大小,メリットの有無など議論に議論を重ねて決めていくことになりました。
よくよく考えてみると,追補の仕様書を作成するためにこのような検討をすることは,実は,追補改正作業の一部を実施しているともいえるわけです。つまりは,追補の方法を規定する仕様書を作成しているのだが,その方法が妥当かどうか検討するための具体的な変更候補について検討してしまえば追補の内容まで確定できてしまうのです。

ISO9001追補の仕様書検討グループは,こうして2000年版ISO9001のどの要求事項に対してどのような変更をすべきか、という表を作成して,仕様書に掲載しました。それが仕様書の8章(追補後の規格の本文で対応すべき事項)にある表です。こうしてできあがったISO9001:2000の追補の仕様書は,ISO9004改正の仕様書とともに,2005年コロンビアのカルタヘナでのSC2総会のあと6月末に3か月投票のために回付され,2005年10月のパナマ総会の前に承認が確認されるという日程が組まれました。
(つづく)