第43回

ISO9001追補改正の仕様書
少し長くなりますが,この追補改正作業を正確に理解するために,ISO9001: 2000に対する追補改正の設計仕様書を抜粋し,次に引用しておきます。

ISO9001:2000に対する追補改正の設計仕様書(抜粋)
0.序 文
2004年にISO/TC176/SC2は,ISO9001:2000の廃止,改正,確認の決定をするために公式な定期見直しを実施した。その結果,大多数は改正(追補)が望ましいという回答であった。
定期見直しと並行して,ISO/TC176/SC2では,広範囲なISO9001:2000及びISO9004:2000 に関するユーザ調査を実施した。
ISO/TC176/SC2は,次にISOGuide72:2001 Guidelines for the justification and development of management system standardsに従って,追補を作成する必要性の十分な根拠があることを実証するために,ISO/TC176に妥当性評価(Justification Study)の報告を提出した。
2004年に行われた総会での議論を受けてISO/TC176は妥当性評価の提言を承認し, ISO9001:2000の限定的な追補作成のために,このプロジェクトを実施することが望ましいと決議した。
この設計仕様書は,追補を作成するために要求される事項に対するアウトプットをまとめたものである。
ISOGuide72ではまた,設計仕様書が原案作成に先んじて承認されることを推奨している。その結果,この設計仕様書がISO/TC176/SC2のメンバにレビュー及び投票のために回付されることになる。
この設計仕様書は,ISO/TC176/SC2エキスパートにISO9001の追補作成に対する手引を与えるために,また原案作成プロセスのアウトプットに対する検証の枠組みとして使用される。

1.利用者のニーズ,並びに影響及び便益の評価
妥当性評価では,次に示す事項によって利用者のニーズを明確にした。

  • 2003年から2004年に実施されたISO9001:2000に関する定期見直しの結果(ISO/TC176/SC 2文書:N676R)
  • ISO/TC176/規格解釈WGからのフィードバック(ISO/TC176/SC2文書:N683R)
  • ISO/TC176/SC2/WG18により,広く各国を対象として実施されたISO9001及びISO9004ユーザ調査(ISO/TC176/SC2文書:N681)及び同様な各国の国内調査
    また,利用者及びそのニーズの明確化を行ったISO9001の元々の設計仕様書(ISO/TC176SC2文書:N307)も参照した。
    追補プロセスへの上記文書及び他のインプット文書は,附属書Aに列記した。
    また,妥当性評価では,ISO/TC176/SC2及びISO/TC207/SC1 Joint Task Group on Co-ordination(JTG)が発表した両立性に関するアウトプットも,利用者のニーズに関する重要な情報源として活用した。そのフィードバックからの要求事項は,4章(両立性)で扱われている。
    上記インプットについては,検討を加えたうえで,この設計仕様書の作成作業の中で考慮した(8章参照)。
    利用者のニーズを満たすためには,追補後の規格も現行版と同様に一般的なもので,事業を展開するあらゆる規模及び業種・形態の組織に適用できるものでなければならないということを強調した。しかしながら,次のことも留意した。
  • コメント及び調査におけるサンプルの規模と回答者の地理的バランスには限界があった。
  • ISO9001及びISO9004ユーザ調査での,規格の特定の箇条に関するコメントの総数は,調査への回答の総数と比較して少ない場合があった。
  • 解釈の数が限られていることが,必ずしも利用者全員による明確化の必要性を代表するものではない。
  • 追補の作成は,関連するマネジメントシステム規格に影響を与えることがある。

妥当性評価では,ISO9001の変更を追補のレベルに限定することにより,規格の利用者への影響を限定的なものにとどめることを求めています。また,その変更が利用者に明確な便益があるところに導入することを求めています。その結果,附属書Bに記述したツールを活用して,提案されている変更によって生じる可能性のある影響及び便益の分析が行われるのです。
(つづく)