ISO 9000にはファミリー規格という呼び方と共にセクター規格と呼ばれる規格群があります。どちらにおいても中心となる規格はISO 9001です。

 ISO 9001の所でも記述しましたが、ISO 9001規格は全世界のあらゆる業種業態、そして組織規模の所でも活用できるように、汎用的な内容となっていると共に、その求める水準は高みを究める、というものではなありません。

 だからこそこれだけ人気となり全世界で100万を超える組織が認証を取得するまでになっているわけです。ISOの中ではモンスター規格と言われているという話も聞いたことがあります。ISO 9001の次に人気のある規格がISO 140001ですが、その認証取得数はまだ40万件に届きません。3倍近い人気度の違いがあることからもそのモンスターぶりはお感じいただけると思います。

 一方で、使いやすい反面、その内容は深みがあるとは言えない部分もあります。運用する組織が自組織に合わせて追加要求を盛り込むことは自由ですので、どんどん自分たちにフィットするように仕組みを強化していけばよいのですが、全世界どこでも同じで、認証取得のレベルを大幅に超える仕組み構築、運用というものはなかなかできないものです。

 そこで特定の業界は自分たちの業界が求める基準に合致した仕組み構築を求めるために、ISO 9001をベースとした業界規格を作る動きがあちこちで起きました。それによって、ISO規格としてではなく、ローカル規格という位置づけのものが作られ、活用されていくようになりました。何か事故が起きると人命への危険がすぐ目の前にあるような業界でその動きが顕著であったわけです。

 最も広がるのが早かったのが自動車業界です。アメリカのビッグスリーがISO 9001をベースにした自動車業界向け規格のQS-9000を策定しました。その後その規格は、ISOにおける国際規格ISO/TS 16949になりました。さらに2016年には再び業界規格に戻り現在はIATF 16949としてアメリカだけでなく日本を含む世界各国の特に自動車部品業界の組織で活用されています。

 それ以外のセクター規格として全世界で活用されているのは、航空宇宙業界と医療機器業界です。航空宇宙の方はISO規格ではなく、これも自動車同様、業界規格でAS 9100として制定され、日本ではそれを翻訳する形で、JIS Q 9100として活用されています。自動車と共に航空宇宙業界では認証制度も確立されると共に、審査員の評価登録についてもISO 9001とは異なる制度として運用されています。認証を取得するのも大変と言われえていますが、審査員になるのもとてもハードルが高いと言われています。

 医療機器業界はISO 13485という規格が制定されています。自動車業界に比べればマーケットの広がりは小さいですが、認証取得数は今でも伸び続けています。

 その他のセクター規格としては意見が分かれますが、食品安全マネジメントシステムの規格であるISO 22000もセクター規格として分類する場合もあります。またISOではありませんが、日本国内の業界規格であるJEAC 4111(原子力発電所向けの品質マネジメントシステム規格)もISO 9001をベースに策定されています。

 現在、一定数以上の方に活用されているISO 9001セクター規格はこれらのものになりますが、この先まだまだセクター規格と呼ばれるものが生まれる可能性があります。それだけISO 9001規格の価値が世界的に認められていると言えるでしょう。