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平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第2回
第1部:ISO 9001と事業改善モデル
ISO 9001品質システム
背景
1980年代に世界中の産業界で、形式を整えた品質マネジメントシステムの利用が増加しました。BS 5750は、品質保証の規格として1979年に導入され、正確さと効率を向上させ、その結果として競争力を増加させる手段として、多くの組織に使用されました。ISO 9001は、1987年の改定に続いて、1994年に国際規格として発行されました。ISO 9001規格は、総合的品質アプローチへと発展し、その2000年版は、「継続的改善」を通じて顧客満足向上へと移行しました。その発展中に、規格は供給者のベンチマーク、そして多くの場合購入者に食い込む基準になりました。
多くの組織は、マネジメントシステムの基礎としてISO 9001を採用しました。そしてビジネス優良ヨーロッパセンターによって行われた最近の研究では、その採用が多くの組織に利益をもたらしました。研究は採用の理由を探りましたが、最も多くの理由は顧客がそれを要求しているからだと分かりました。1つのケースでは、これが販売の600万ドル増加、また別のケースでは1500万英ポンドの増加に結びついています。採用の2番目の理由は、市場における競争、すなわち登録した組織は競争優位性を持つということでした。
組織の多くは、ISO 9001がもたらす運用上の利益のために、これを採用しました。ビジネス優良ヨーロッパセンターの調査を受けた組織は、ISO 9001の採用により2900万英ポンドの節約ができたといいます。2000年版の大きな利益が実感されるにつれて、この傾向はますます増大することが期待されています。
原則
ISO 9001は、組織をパフォーマンス改善に導くために、最高経営者が使用すべき8つの品質マネジメントの原則を明示しています。
- 顧客重視
- リーダーシップ
- 人々の参画
- プロセスアプローチ
- マネジメントへのシステムアプローチ
- 継続的改善
- 意思決定への事実に基づくアプローチ
- 供給者との互恵関係
これらの原則と、次の章で述べる2つの事業改善モデルを支える原則の間には、類似性があります。ボルドリッジモデルには、その基本的価値観と概念がありますし、EFQM優良モデルには、優良ということに関する基本概念があります。
構造
ISO 9001は、5つの主要要求事項を持った構造になっています。
- 品質マネジメントシステム
- 経営者の責任
- 資源の運用管理
- 製品実現
- 測定、分析及び改善
それはこのように表すことができます。
出典:ISO 9001:2000
適用
ISO 9001は、プロセスの明確化と、プロセスの管理に焦点を合わせています。マネジメントシステムにおけるプロセスが一旦決められると、継続的改善を求めるデミングのPDCAサイクルをプロセスに適用することができます。(デミングの改善サイクルの詳細については、後述の「改善/継続的改善」を参照)
ISO 9001:2000版と1994年版の重要な違いの1つに、第三者審査実施のやり方の違いがあります。1994年版においては、審査における評価は一連の文書化された手順と、組織で観察された活動とを比較するという、単純な故にリスクのある方法にその焦点が置かれていました。
ISO 9001:2000版で要求されている審査方法は、顧客満足に貢献するであろうプロセスを明確にするという、ニーズに焦点を当てることです。そして審査員はプロセスが明確にされると、プロセス同士が繋がっていて、かつ有効になっているかどうかを、確認する必要があります。このことは審査を「適合審査」から、「付加価値審査」に変えることになりました。
改善は、事実を示すデータを分析することから達成されます。
- 目標は達成すべきゴールに焦点を当てます。
- 是正処置システムは、問題の根本的原因を分析し、再発を防止します。
- 予防処置システムは、潜在的な問題を特定し問題発生を防止することによって、リスクマネジメントツール、又は損失マネジメントツールの枠組みを提供します。
- 活動の監視、測定によって得られるデータの分析は、改善を特定し、及び/又は改善を確認します。
実際の業務遂行と、ISO 9001に基づくマネジメントシステムの同一化は、組織のトップマネジメントがどの程度組織の改善に熱心なのかに、依存します。そうして規格は、人的資源、経営基盤、環境、製品又はサービスの配送、及び測定等について、組織のプロセスを管理し改善する枠組みを提供します。
ISO 9001は、意図された「精神」をもって使用すれば、優れた管理と改善のツールになります。この「精神」は8つの品質マネジメント原則の中にあります。それは、改善による「利益」を確実に維持しますし、直接的に改善への突破口となるでしょうし、改善への「最良の慣行」と構造的に繋がるアプローチとなります。
何事においてもそうであるように、ISO 9001も使い方によっては不適切なツールとなります。最適な効果をもたらすには、それを適合性のツールとして使うのではなく、優良性を求めるツールとして使う必要があります。そうすれば、ISO 9001は余計な仕事を行うためでなく、事業のためのものになるでしょう。
ISO 9001の主要な強さ
- 顧客のニーズに焦点を当てる。
- 思いつき、無管理を避ける。
- プロセス及びパフォーマンスの両方に焦点を合わせる。
- 持続可能な改善。
- 世界に受け入れられる品質マネジメント規格。