平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第40回

2.3.6 工程管理(process control)

工程管理(process control)とは、製品の品質確保のために工程の品質の維持と改善を行うことをいう。前出の「品質は工程で作り込まれている」(2.3.5 統計的方法の活用 (2)統計的品質)を実現するには、結果を好ましくない状態にしている原因を発見して押さえ込まなければならない。好ましい品質を得るためには、品質に影響を及ぼす要因(原因)をコントロールする、言い換えれば予防処置をとることが必要である。

今日の品質管理は、検査の他にこの工程管理という機能を導入したことにより隆盛を極めたといわれる。

(1)管理図

  • 管理図は、QC7つ道具の一つにも登場するポピュラーな管理手法であり、工程のばらつきを減少させることを目的に時系列に工程の状況を把握するための手法である。工程を管理するには、一般に次のことを実施しなければならない。
    • ① 製造に先立って、それまでに蓄積された技術を投入し製造条件を規制、標準化する。
    • ② 製造が始まって好ましくない結果が得られたとき、その原因を探索し、原因が判明したら、同じ原因で二度と好ましくない結果が生じないように、その原因を除去するために製造条件を規制、標準化する。
  • 管理図を使っていくためには、管理(control)ということを十分に理解しておかなければならない。管理図の活用にあたって必ず出てくる、管理限界や管理水準といった専門用語は、JIS Z 8101-2 (統計用語と記号、第2部統計的品質管理)、JIS Z 9020(管理図、一般指針)、JIS Z 9021(シューハート管理図)等から、その意味するところ、関連する知識を得ることができる。
  • シューハート管理図に加えて,工程の合否判定管理図(Acceptance control charts)工程調節のための管理図(Process adjustment charts)等も規定されているが、いずれも”工程が管理状態であること”を前提としている。

(2)QC工程表

  • 工程管理を推進するには次の準備が必要である。
    • ① 工程フローチャートの作成
    • ② 管理特性の決定
    • ③ 特性要因図の作成
    • ④ 工程に関係する人員、組織とその業務内容
    • ⑤ 前後工程との関係の明確化
    • ⑥ 工程に関係する技術標準、作業標準の整備
    • ⑦ QC工程表の作成
  • 以上の準備には、従来の技術実績、新たに必要となった工程解析の結果が活用されることになる。①の工程フローチャートの作成にあたっては、原料、材料、副原料、部品、工程中の半製品、製品の流れを示す他に、工程中の管理特性、測定個所、検査個所等を記すとよい。
  • QC工程表は、①の工程フローチャートを根幹として作成されるが、製品品質が設計仕様に適合しているかを確認するために、材料・部品の供給から完成品として出荷されるまでのすべての工程を図示し、各工程の管理項目、管理方法等を一目瞭然にわかるように一覧表に表現する。QC工程表に盛り込まれるべき主な項目は、次のようなものである。
    • ① 工程フローチャート
    • ② 部品名
    • ③ 管理項目
    • ④ 管理水準
    • ⑤ 管理帳票(管理図、チェックシートなど)
    • ⑥ データの採取や記録採取や記録担当者
    • ⑦ データサンプリング方法
    • ⑧ 設備や測定治具
    • ⑨ 管理状態の判定方法
    • ⑩ 異常時の処置ルール、処置責任者

(3)QC-PERT法

  • 幾つかの要素をもつプロジェクトを総合的に進捗管理するには日程計画法が有効である。例えば、設計段階の進捗管理は、決められた人員、設備、時間、予算等の範囲内で最も効率的にプロジェクトを進めなければならない。そこで考案されたのがPERT(Program Evaluation and Review Technique)、CPM(Critical Path Method)等であり、各活動ごとの時間を推定し、これらを組み合わせたTime Table を作り、これの解析から時間の隘路を見出して、他の余裕時間をもつプロセスからこれを短縮することを計画する方法である。
  • 水野滋は、その著書「全社総合品質管理」(前出)の中で次のように言っている。
    「Time Table に合わせて、品質、コストに関し、あらかじめ定めておくべき事項、すなわち後のステップに保証すべき事項(保証項目)と、チェックすべき事項(管理項目)を明確にしておくことによって開発段階における日程遅れと品質、コスト上の不具合を防止する方法は、QC-PERT法といわれ、すでに適用されて効果のあることが明らかになっている。」

(4)品質機能展開

  • 顧客に提供する製品の品質を見極めて、それを設計仕様書に盛り込み、実際に製品の機能として具体化することは極めて重要なことである。一口に顧客を満足させる品質といっても、実際にそれを具体化させるには、組織の工程の中に具体的な指示を示さないと実現は不可能である。
  • 品質機能展開は、ツリー(木)の根から枝葉への繋がりを考えてみるとその概念が分かる。すなわち、ツリーの一番上には、顧客の製品に対する期待がある。その下には、顧客の期待を製品の代用特性(品質特性)に置き換えた設計仕様がある。設計仕様の下には、各部品の品質仕様、さらには個々の部品品質、工程要素等にまで展開がされていく。
  • このように、顧客の要求を組織の工程に系統的に展開していくことが、品質機能展開と呼ばれるものである。品質機能展開でポイントとなるのは、顧客の声をどのように把握するかである。顧客の声を市場調査等で網羅的に集め、その声を展開の一番上位に置き、以下製品機能の代用特性等に表現していく。