平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第8回

ベンチマーキング(Benchmarking)

活用方法

ベンチマーキングは、実施対象の範囲によって多くの形式をとることができます。次の表は一般的な、最良の慣行を対象にした概括表です。

要素 コメント
ISO 9001との関連 MR RM PR M&A Imp
活用範囲 あらゆるタイプの組織
製造とサービスの両方
機能
システムにおける変化の度合い 大から中
人々に関する変化の度合い 大から中
利益レベル
参加レベル 推進母体として
成熟レベル 経験者、世界レベルの者
時間尺度 6-12ヶ月
投資レベル 高い
実施方法 プロジェクト

背景

ベンチマーキングは、1980年代にゼロックスが普及させて以来、一般的な用語になっています。「ベンチマーク」という用語と、プロセスを意味する「ベンチマーキング」とには区別があります。品質改善の世界では、ベンチマークという用語は「クラス最高」の業績をいいます。この業績は、他の類似プロセスの優良さを測定するときの比較点、又は認められた基準になります。

ベンチマークが評価基準である一方、「ベンチマーキング」は競争優位性達成に寄与する、測定プロセスを意味します。

「ベンチマーキングとは、組織が業績を改善する活動を行う際に、その活動を促進する情報を得るため、世界中の事業リーダーが継続的に組織を比較し測定するプロセスである。」
(TannerとWalker、2003年)

ベンチマーキングには、競争上のベンチマーキングと、プロセスのベンチマーキングの極めて違いの大きな2つのアプローチがあります。

競争上のベンチマーキングは、組織の業績をその競争相手の業績に対して測定します。よく行われるのは、選択した評価基準を使って、競合相手との相対的な業績を測定することです。

プロセスのベンチマーキングは、単一のプロセス業績とその機能性を、そのプロセスのリーダー組織に対して測定します。最初にそのプロセスのパフォーマンスが世界クラスであることを検証した後、特定の事業プロセスの実行のおける、「最良の慣行」を探し求めます。一旦「最良の慣行」が識別され理解されれば、後は組織への適用のための工夫と改善になります。

ベンチマーキングには、内部のベンチマーキングから、世界的な最良の慣行のベンチマーキングまで、いくつかのタイプのベンチマーキングがあります。一般的にみて、対象範囲が広ければ広いほど、完成するのに長くかかればかかるほど、かかるお金は多くなりますが、受ける利益も大きくなります。

ベンチマーキングは、パフォーマンスを改善するのに大きな効果があります。ベンチマーキングは単独のツールとして活用すると同時に、ビジネスプロセス・リエンジニアリングのプロジェクト要素としても活用できます。どちらのケースにおいても次のことがいえます。

  • 現実的な向上目標を展開する。
  • 現実的な行動計画を作成する。
  • 優良と革新のための努力を奨励する。
  • 組織の現在位置をより理解できる。
  • パフォーマンス改善の推進を強化する。

原則

ベンチマーキングは、実現可能なプロセス改善の到達点を与えること、改善するために必要な変化を理解させることを目的としています。それは、現状を打破し、製品、サービスあるいはプロセスの継続的改善プロジェクトを推進するものではありません。ベンチマーキングの結果得られるものは、向上した顧客満足と改善された競争力に関しての位置であるべきです。

アプローチ

ベンチマーキングは、通常4ステップのプロセスで実施されます。

  1. ベンチマーキングプロジェクトの計画
  2. データの収集
  3. 業績ギャップデータとプロセス達成手段の分析
  4. プロセス達成手段による改善

ベンチマーキング「ロードマップ」によると、アプローチに関係して多くの利害関係者がいることが分かります。

このアプローチの第一ステップは、ベンチマーキングはプロジェクト式アプローチであることからして、調査についての計画立案となります。このステップでは、ベンチマークされる組織とその領域をより理解する必要があります。

ベンチマーキングにおけるデータ収集には、多くの形があります。すなわち、電話調査、書面アンケート、文献調査、作成資料の交換そしてサイト訪問等です。

ベンチマーキングのアウトプットとして、次のようなことが行われます。

  • 目標組織におけるベンチマーキングされるプロセスと比較する、パフォーマンスの基準を示す。
  • 比較対象のパフォーマンスと組織のパフォーマンスの差を記述する。
  • ベンチマーキングの間に観察された、最良の慣行と達成手段を明確にする。
  • プロセスのパフォーマンス目標を設定し、組織のパフォーマンス改善領域を明確にする。組織は活動計画の実行に責任を負う。