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平林良人「新・世界標準ISOマネジメント」(2003年)アーカイブ 第19回
2.4 セクター規格
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ISO 9000シリーズ規格は、すべての産業界で使用できるように、できるだけ一般的で普遍的にまとめられている。しかし、一般的で普遍的ということは、逆にいうと具体性に乏しく実際には機能しないともいえる。
セクター規格は、ISO 9000シリーズ規格の効用は認めながらも自分達の産業により実践的に使用できるように、追加的要求事項を規定したものである。 - 2.4.1 自動車 QS 9000 / TS 16949
- 1)規格の内容
- ISO 9001規格をベースに、以下のような自動車に固有な品質要求事項を追加した品質システム規格である。
- 主な追加要求事項(システム改善)
- ① 到達目標の設定、測定及びレビュー
- ② 顧客満足の測定
- ③ 製品安全
- ④ 規則の遵守
- ⑤ 工程設計の運営管理
- ⑥ 共通の道具及び技量の適用
- ⑦ 品質システム実施状況の定期測定
- ⑧ 検査機関、試験所及び校正機関の認定
- ⑨ 不適合が顧客に及ぼす影響の認識
- 主な追加要求事項(ばらつき減少)
- ① ポカヨケ
- ② 故障モード影響解析(FMEA)
- ③ 統計的工程管理(SPC)
- ④ 測定システム分析(MSA)
- ⑤ 業務教育・訓練(OJT)
- 2)経緯
- 1994年8月に米国自動車メーカー会社のビッグスリー(フォードモーター、ゼネラルモーターズ、クライスラー)は、自動車部品製造メーカーが遵守すべき品質保証要求事項の規格をQS 9000として制定した。
- 1996年米国、英国、イタリア、フランス及びドイツの自動車会社は、QS 9000の世界普遍版を作ろうと、国際的な自動車部品品質システム規格を開発するためにグループを結成した。 IATF(国際自動車タスクグループ)は、フォードモーター、ゼネラルモーターズ、ダイムラー・クライスラー、プジョー、フィアット、VW、BMWその他を含む自動車製造者、並びに貿易協会、AIAG、SMMT、ANFIA、VDA、CCFA及びFIEVから構成されている。
- 1997年11月のTC176リオ総会でQS 9000をベースとした技術文書の開発を目的に、IATFとの協調パイロットプロジェクト実施のためのタスクグループ(TG)の設置が決定された。
- 1999年3月、タスクグループの検討の結果、4つの分野別品質システム仕様書即ち、QS 9000、AVSQ、EAQF、及びVDA6.1が一つの国際技術仕様書(ISO/TS 16949)に統合された。日本は自動車分野に関するセクター規格をもっていなかったため、このタスクグループ(TG)には入ることができなかった。
- ISO/TS 16949規格は、QS 9000の第3版と非常に似ているが、米国以外の国の自動車規格を若干追加しており、自動車関連製品の設計・開発、製造及び関連のある場合、据付け及びサービスに適用されるものである。
- 更にIATFでは、1999年9月にISO 9001:2000規格に整合させるべく日本も参加して規格の見直しを開始した。そして、2002年3月ISO/TS 16949改正版が発行されるに至った。
- 3)利用状況
- IATFでは、2002年からTS 16949の運用を具体的に開始した。今までにIATFから認定された審査機関は、2002年1月現在で46機関(米13,独11,英5、仏、伊、スペイン、加各2,日、韓、豪、南ア、スイス、ベルギー、オーストリア、アイルランド、シンガポール各1機関)である。
- 審査員研修、評価登録も2001年から米、英、独、仏、伊の5ヶ国で開始したが、日本人の審査員はまだ少ない。
- 因みにQS 9000に基づく審査登録は、2000年までに世界で40ヶ国以上、8000件以上の実績を持つ。
- IATFでは、2006年12月までにISO/TC 16949:2002規格へ移行するように奨励している。しかし、ある自動車メーカーでは2003年末までにISO/TS 16949:2002規格へ移行することを求めており、必ずしも一致した運用になっていない。