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平林良人「新・世界標準ISOマネジメント」(2003年)アーカイブ 第5回
1.2.2 国際規格と国家規格との関係
- ここで少し国際規格と国家規格の関係について触れる。規格は、作成されるレベルに応じて、企業内で使われる社内規格、業界団体内で使われる団体規格、国のあらゆる利害関係者の合意で作成され使われる国家規格、限られた国家、地域内で作成され使われる地域規格、ISO、IECのような国際規格の5種類に分類される。
- この5種類の規格についてその違いを説明する。例えば、自動車は1万数千点の部品から構成されているが、部品ごとに寸法、形状などの仕様が決められている。これを社内規格と言う。ただ、部品によっては共通部品として使ったほうが合理的なものは、団体規格として規格が制定される。
- 自動車業界の場合には、(社)自動車技術会で数多くの規格が制定され、業界標準として各自動車メーカーの間で使われている。このような仕組みは、自動車業界だけでなく、鉄鋼業界、化学業界でも同じように団体規格を制定している。ここで、業界横断的に共通的に使われるものは国家規格として制定したほうが便利である。これがJIS規格である。このように、団体規格は社内規格を土台とし、また、国家規格、国際規格は団体規格を土台とするピラミッドを構成している。海外では、JISと同じような国家規格をもっており、米国のANSI規格、イギリスのBS規格、ドイツのDIN規格など規格の階層化は日本と同じ構造となっている。このため、IBMの社内規格がANSI規格、そして国際規格の土台となった事例は多いと言われている。
- 各国の国家規格の上に立つのが国際規格のISOである。国家規格と国際規格の間には、地域によっては、欧州のようなにCEN(欧州標準化委員会)という地域規格が制定される場合もある。
- 日本でのISO対応については、専門委員会(TC)ごとに国内委員会を設け、国際規格の審議に対応している。通常は、産業分野に対応してTC/SC(分科会、Sub-Committee)の国内委員会が設置されている。例えば、TC17(鋼)は、(社)日本鉄鋼連盟、TC22(自動車)は(社)日本自動車技術会、TC47(化学)は(社)日本化学工業協会という具合である。ISO 9000、ISO 14000のような横断的な規格は関係業界が多いため、(財)日本規格協会に国内委員会が設けられ、各業界から委員が派遣されている。
- したがって、新しい国際規格の提案をしたい場合には、該当の規格がISOのどのTC/SCの担当分野となるかを確認し、それに対応する国内委員会事務局に相談し、当該国内委員会で検討した後、支持が得られればISOへ提案される。
- こうして制定された国際規格を、品質ISOのhttps://www.technofer.co.jp/iso/iso9001/をツリーでみると、国際規格ISO 9001に基づいて、サミット7カ国の国家規格は、CAN/CSA-ISO 9001(カナダ)=DIN EN9001(ドイツ)=NF EN9001(フランス)=UNI EN9001(イタリア)=JIS Z 9901(日本)=BSEN9001(イギリス)=ANSI/ASQ C9001(米国)というチェーンができ上がる。お隣の韓国は、KSA9001である。どの規格内容も、言語の違いを除けば国際規格と全く同じものである。
- なお、日本ではJIS規格は制定(establishment)と言っているが、ISO規格はestablishmentでなくpublicationということから、これを発行という言葉で使い分けている。