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平林良人「新・世界標準ISOマネジメント」(2003年)アーカイブ 第8回
1.2.5 JIS制度の国際化
- 日本工業標準調査会(JISC)は、2003年5月、競争力強化に資する標準化、社会ニーズに対応する市場創成、強制法規への引用の促進等においては、国際標準化を政策的に進めていくことを採択した。具体的には、従来の国内審議団体依存型の提案の仕組みを見直し、効率的な合意形成を図るものである。
- まず、フォーラム規格を活用した国際規格提案である。これは、近年、情報技術等の市場獲得を巡る競争が激しい先端分野においては、研究開発成果として新技術・新製品に関する市場の創出・獲得を目指して知的財産権を内包するフォーラム規格等を作成し、知的財産権とセットで日本発の技術を国際規格化しようとする新たな国際標準化活動が展開されている。
- このためフォーラム規格が、「フォーラム」結成時において透明性が確保されており、「フォーラム」外への合理的かつ非差別的な条件での実施権許諾を約束した規格であって、国際規格とすることが適当と認められる場合には、フォーラム規格制定に至るまでの経過を確認した上で、簡素化した手続きによってJISにするとともに、関係TC/SC国内審議団体によらず標準部会傘下の専門委員会等によって具体的な提案方法を決定し、提案後のISO/IECからのDIS投票、FDIS投票に対する回答案の審議も行うよう体制を整備するとした。
- 次に、規格作成の迅速化・効率化を図るため、ISO/IECのNew deliverables(コンセンサスレベルの低い出版物の発行)の考え方を踏襲し、ISOと同様にTS(標準仕様書)として公表・発行する制度を導入する。
- TS制度の導入によって、当該TSは暫定JISとして見なすこともでき、早期の普及拡大が図られるとともに、JIS制定に至るコンセンサス形成の更なる迅速化が期待できる。また、後述する新たな体制に取り込むことによって、市場適合性を確認し、信頼性を確保しつつ、迅速かつ効率的にJISにするための制度の構築も可能となるものである。
- 更に、CSB(Competent Standardization Body;有資格標準化団体)制度の導入がある。現在、JIS原案作成は、現在、約550の工業会等において行われているが、これら工業会等の中には、手続きをルール化し、ホームページ等を活用して広く情報公開しながら団体規格を作成・維持管理している団体、JIS原案作成に当たっては専門家に加え他の利害関係者の意見を十分に反映する機能を有している団体、更にはWTO/TBT協定のCGP(Code of Good Practice)の受入れを表明している団体など、公平性、客観性、透明性の確保等において国又はJISCと同等な機能をもって標準化活動を行っている団体も存在している。このような一定要件を備えて、適正かつ確実なJIS原案作成を行うことができる工業会等については、CSBとして登録し、その機能を最大限活用することによって、JIS制定等の迅速化・効率化が図られる制度を導入するものである。具体的なCSBの資格要件としては、
- ① 技術的及び形式的に適正な規格案を作成する能力
- ② 利害関係者の意見等を十分に反映できる機能(異議申し立てに対する適切な処理を含む。)
- ③ 透明性確保のための機能(重複規格が作成されないよう作業内容の公開、パブリック・レビュー等)
- ④ 規格の維持管理(5年以内の確実な見直しを含む。)
- ⑤ 国際規格開発活動への積極的な参加
- ⑥ 十分な実績
- ⑦ JISCによる監査 等
- としている。
- これらのTS制度及びCSB制度の活用により、JIS規格作成の迅速化・効率化を図るための新たな体制がスタートする。