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- 1.エネルギーに関する二つの懸念
懸念事項 大きくとらえて次のような懸念事項があります。 - 地球温暖化:エネルギー消費及び製造段階でCO2等温室効果ガスを相当以上に発生し、地球温暖化に寄与していないか。
- 資源の枯渇:将来世代のことを考慮して、資源を消費しているか。
- 2.1次エネルギーと2次エネルギー
- 1次エネルギーは自然界に存在するエネルギーで、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料及び水力、太陽光、風力、地熱等の自然エネルギー等です。
- 2次エネルギーは1次エネルギーを加工して得られるエネルギーであり、電気、都市ガス、ガソリン、軽油、灯油等で、水素も2次エネルギーです。
- 3.エネルギーに関する4つの視点
- ① 創エネ エネルギーを作り出すこと 例::風力発電、太陽光発電等
- ② 畜エネ エネルギーをためて、必要に応じ利用できるようにすること
例:蓄電池、揚水発電等 - ③ 省エネ エネルギー供給量の最小化を図ること。
同じ効果でエネルギー消費量を最小化する、同じエネルギー消費量で効果を最大にすること。 - ④ 効率改善 同じエネルギーで効果を最大にする。(エネルギー消費と共に、エネルギー供給側の課題でもある。)
- 4.水素の主たる用途
- 水素は肥料製造、半導体加工、石油化学工業、鉄精錬、燃料等の産業分野に広範囲で使われています。またニッケル水素電池やエネファーム、燃料電池自動車(FCV)等にも使われています。
- 5.現在の工業的水素製造方法
- 水素はアンモニアと同様に、燃焼時にCO2を排出しないので環境に良いと言われますが、水素製造時にはCO2を排出しています。
- 主な製造方法は化石燃料(LNG、LPG、ナフサ等)の水蒸気改質、石炭のガス化等で、化石燃料を原料につくられています。つまり水素は発電時・燃焼時はCO2を排出しませんが、製造時は排出しています。
CH4(メタン)+2H2O⇒4H2+CO2 (1000℃の高温で反応) - 6.製造方法による三つの水素
- ① グレー水素:化石燃料から取り出す水素。低コストで大量に製造できますが、CO2が大気に放出されます。
- ② ブルー水素:水素を製造する過程はグレー水素と同じですが、CO2を回収し、地下に貯留(CCS)することでカーボンニュートラルとなります。
- ③ グリーン水素:再エネ由来の電力で水を電気分解し製造した水素。コストは高いですがCO2は排出されません。
- 7.水素の貯蔵・運搬方法
- 水素の活用にはサプライチェーン(供給網)づくりが欠かせません。
- 水素の貯蔵・輸送方法としては、陸上輸送はパイプラインや圧縮し輸送する方法及び化合物として貯蔵・輸送する方法があります。海上輸送は液化しての輸送が有望です。水素は液化するとコンパクトになりますが、LNG の液化(マイナス162℃)よりも低い温度(マイナス253℃)としなければならず、貯蔵や輸送には特殊な装置とエネルギーが必要になります。未利用エネルギーであるオーストラリアの褐炭から水素を製造し、液化して日本へ輸送するという技術の実証が行われています。
- 8.温室効果ガスを排出しない自働車の開発・普及が急務
- 2019年度の日本の運輸部門のCO2排出量は、約2億600万トンで全体の約18.6%を占めています。その内自動車からの排出が9割を占めており、温室効果ガスを排出しない自動車の開発・普及が急務となっています。
- 9.EV(電気自動車)、FCV(燃料電池自動車)、HV(ハイブリット自動車)の比較
- EV及びFCVは稼働時CO2を排出しないので環境に良い面がありますが、燃料製造時には多くの場合CO2を排出しています。ですから水素を燃料とする場合はグリーン水素又はブルー水素、電気を燃料とする場合は再生可能エネルギーとすることが肝要です。
- 10.エンジンからモーターへの転換がもたらすもの
- ガソリンの消費が減り自働車からの排ガスが減る⇒電気の消費が増える⇒発電量が増える⇒化石燃料使用発電所から発生するCO2が増える。
排気ガスが減少する⇒スモッグが減る。
モーターによる自動車は構造的にシンプルであり、従来の自動車産業以外 にいろいろな業種が参入可能となる。 - 11.さまざまなプロセスから観察することの重要性(審査・監査の視点)
- 水素は電気と同様、消費時にCO2を発生しませんが、製造時にはグリーン水素・ブルー水素以外はCO2を発生しています。
- さまざまなプロセスの事象をチェックする時、ある一面だけでなく多面的に観察ことが重要です。またサプライチェーン等のプロセスの監査時には、三現主義(現場、現物、現実に見て確認すること)が重要です。
(野村建吉)