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Q18 : 内部監査員の育成・研修/教育はどのようにすればよいですか。
A18: 内部監査員の教育は、マネジメントシステムについて充分な経験を持つ人から教えてもらうことが必要です。内部監査員の教育が不十分ですと、次のようなことが起こり監査の有効性が失われてしまいます。
- a. 監査員によって指摘にバラツキや偏りがでる。
- b. 毎回同じ不適合の指摘を繰り返すだけの監査になってしまう。
- c. 「承認印がない」など表面的な指摘に留まることが多く、システムの改善に結びつく指摘ができない。
- d. 問題の根本まで指摘を深められない。
表面的な監査になることを防ぎ効果的な監査を実施するためにも、監査員のレベルアップを計画的に行うことが必要です。内部監査員の育成・研修/教育についての基本となるステップを簡単に説明します。
(1)基本知識
組織のベテラン監査員を指導者として社内コースを開設したり、研修機関が開催する公開コースに参加させたりして、内部監査員として必要な基礎知識を習得します。通常、こうしたコースの履修を必須条件として内部監査員を認定します。研修のカリキュラムは次のようなものが一般的です。
- 【コースの概要】
- a. ISO 9001要求事項/マネジメントシステムの理解
- b. 監査技術;チェックリストの作成、不適合の指摘、是正処置の確認質問、メモのとり方
- c. 監査業務プロセス;計画、監査の実施(ミーティング)、是正処置、フォロー、マネジメントレビューへの報告業務の進め方
- d. 監査報告書の書き方
- e. 監査員の心得
(2)実施訓練
どんな職業でも、本を読んだりの机上の学習だけでは、いくら時間を掛けてもプロ級の腕前には到達しません。実際にやってみて、経験をしてみなければ体得できないコツやノウハウがあります。内部監査員も基礎知識の研修の終了後できるだけ早く、実際にやっているところを見学し、自分自身でやってみる機会を得ることが重要です。
次のような方法が多く採用されています。
- a. 模擬審査;ベテラン監査員の指導の下で自社ケースを使って模擬審査/ロールプレーを行う。
- b. OJT;最初2~3回はベテラン監査員とペアーを組み監査を実施する。
Q19 : 内部監査員の教育修了においては試験が必要でしょうか。
A19 : 教育終了には何らかの方法での評価が必要です。監査員候補者の理解の程度を知ることは本人にとっても、組織にとっても大切なことです。試験問題は次のようなものが多く使われています。記述方式、単語挿入方式、小論文、テーマを決めての討論方式、実地監査評価等いろいろの方法があります。教育カリキュラム、受講者レベル、組織のニーズ等により方法は変わります。理解不足と考えられる人に対してのフォローアップをどうするかも考えておく必要があります。中途半端な形で終わらせるのは時間と労力の無駄だけでなく、監査員候補者にとってもよくありません。
評価は、出席状況、理解力、適性の3点で行うことがよいでしょう。出席は教育の全過程に出席していることが条件になります。理解力は試験及びロールプレ活動状況で判断します。試験は基準点(例えば8割以上)を定め判定します。適性についてはもともと適性のある人に教育しているはずですので、教育の場で判定するかについては意見の分かれるところです。判定する必要がある場合は、教育の場での態度、話術、コミュニケーション、ヒヤリング、文書力などで判断します。
組織内に適切な講師がおらず、教育体制が弱い場合は、外部の研修機関での教育を利用します。
Q20 : 内部監査員のレベルアップに有効な手段・方法を教えてください。
A20 : 内部監査員のレベルアップは、必要な知識の充実・深化と、監査技術の向上とで行います。必要な知識は、ISO規格、組織マネジメントシステム、組織業務及び商品・技術知識です。これらの知識の充実はOJT及び集中教育によって行います。
集中教育では以下の項目について考えます。
- a) ISO基本概念の再認識
- b) 自組織の事業プロセスと規格要求事項の対応
- c) 事業プロセスへの規格要求事項の統合
特に、b)の組織業務フローとISO規格要求事項の各項目の関わり合いを理解し、c)の事業プロセスへの規格要求事項の統合については重要です。
監査技術については、下記3点がポイントとなります。
- a) チェックリストの作り方と使い方
- b) 監査の実施
- c) 報告書の作成
これらについてのレベルアップもOJTと集中教育とで行ないます。
OJTによるレベルアップには、以下の方法があります。
- 1) 上位監査員立会いによる指導
- 2) 上位監査員による監査報告書の評価・指導
- 3) 被監査員部門からの評価及び要望事項のフィードバック
集中教育では以下の方法が有効です。
- 1) 上位監査員による監査実践教育
- これは指導者が監査を実際に行い、その方法を手本として示します。次に監査員が監査を実施してそのやり方に対し指導します。
- 2) チェックリスト作成指導
- チェックリストを作成させ、グループ゚ディスカッションを行い、互に評価します。
- 3) 監査報告書作成指導
- 監査報告書の実施例に対して、グループディスカッションで評価します。その良い点を取り入れて、報告書を作成させ、評価し、指導します。
- 4) ケーススタディー
- 内部監査の実施例をとり上げて、監査員間で意見を出し合い、より効率の良い監査という視点で討議します。監査員のレベルアップは、重要な課題ですので、これらの方法を組み合わせて実施して下さい。
Ⅲ 内部監査員に関する質問 ②
Q21 : 内部監査員のレベルアップを計画的に実施したいと考えています。どのようなプログラムがありますか。
A21 : 監査員を、経験や能力によってランクづけします。それぞれのランクに合わせた教育・訓練を行います。
(1) 監査員のランクづけ
- Aランク;マネジメントシステム構築の指導ができる。
- Bランク;監査チームをまとめ、マネジメントシステムの問題点を指摘できる。
- Cランク;是正処置まで考慮した上で基本的な指摘をすることができる。
- Dランク;育成中のレベルである。
(2) ランク別の教育、訓練
低いランクから説明します。
- [Dランク]
- a) 規格の解釈と指摘のやり方
- ・要求項目ごとのケーススタディーを使って指摘の練習を行う。
- ・指導者はQ&Aを通して理解度を確認する。
- b) 監査OJT
- ・品質マニュアル、標準を事前にチェックし、チェックシートを作成する。それを 指導者に検証してもらう。
- ・上位ランクの指導者の下でチェックシートを用い監査を実施する。指導者から監 査テクニックについてのフィードバックを受ける。
- [Cランク]
- a) 質問能力のレベルアップ
- ・ケーススタディーを使いグループで質問リストを作成し、指導者に検証してもらう。
- ・ ロールプレーで模擬監査を行う。
- b) 監査OJT――より深い監査ができることを目的とする。
- ・上位ランク者とチームを組んで監査を行い、「監査テクニックの弱点」や「指摘のアプローチ方法」についてフィードバックを受ける。
- [Bランク]
- a) 監査OJT
- ・Aランク監査員とチームを組んで監査を行い、「システム改善(例えば、システムのスリム化など)のアプローチ方法」や「監査テクニックの弱点」についてフィードバックを受ける。
(3) レベルアッププログラム
レベルアップのプログラム例には次のようなものがあります。
- a) 自社の内部監査員を評価し、どのランクの監査員か明確にする。
- b) どのランクのだれをレベルアップさせるか決める。
- c) 対象者に対する教育内容を決める。
- d) OJTを行うための内部監査を監査計画に合わせて選定する。
- e) 指導者を決める。
- f) 教育又は監査OJTを実施する。
Q22 : 内部監査員の再教育の計画を持っています。どんなカリキュラムが有効でしょうか。ちなみに私達の会社は従業員300人の製造メーカで、内部監査員は6名です。
A22 : 6名という内部監査員は、組織の大きさに対して少ないように思われます、この人数で内部監査をこなしていくには、かなりのレベルアップを図り、効率的な監査を行うことが不可欠です。
内部監査員の再教育のカリキュラムの例を以下に示します。この例を参考にして、自社のカリキュラムを作成して下さい。
≪再教育カリキュラム(一日コース例)≫
9:00~10:30 座学;ISOマネジメントシステム
- 1) ISO基本概念の再認識・深化
- 2) 継続的改善に視点をおいた要求事項への留意事項(不適合、是正、予防を中心に)
10:40~12:00 チェックリスト作成指導
- 1) チェックリスト作成方法
- 2) チェックリストの作成
- 3) グループディスカッション
13:00~14:30 監査実践;講師による内部監査の実施(手本)
- 1) 目のつけどころ
- 2) 有効性のための指摘の仕方
14:40~16:00 受講生による内部監査実践
- 1) 講師による指導
16:10~17:00 座学;監査報告書の作成
- 1) 報告書の書き方
17:10~18:00 全体講評・指導
自社に適切な指導者がいない場合には、外部の研修期間の教育コースがあります。また、外部のコンサルタント等の経験・実績のある人を指導者にして彼らのノウハウを得ることも役に立ちます。
さらに、「監査実績を記録し、これを定期的に評価し、監査員毎に課題を見出し、解決・レベルアップのために個人別育成計画をつくり、実施・評価をする。」という方法があります。このような方法をとれば、絶え間なく内部監査員のレベルアップを図っていくことができます。
Q23 : 表面的な不適合に偏り、仕組みの改善につながる指摘ができない監査員が多くいます。監査の指摘が是正処置や予防処置に結びつきパフォーマンス向上につながる方法はないでしょうか。
A23 : 「監査での指摘が適切な是正処置や予防処置につながらない」という問題を考えるときには、監査員の指摘能力以外に、監査時間の制約、適用条項の解釈と是正処置に対する認識(監査される側の人も含め共通理解ができているか)やフォローアップにおける結果の追求などの適切性も考慮しなければなりません。しかし、ここでは質問にある監査員の指摘能力について考えてみます。
監査によって仕事の仕組みを改善するのは、不適合(例;ルールを守っていない)に起因する望ましくない結果=リスクの発生(例;ルールを守っていれば発見できたであろうミスが原因で不良品が発生する)を防ぐことにあります。しかし、多くのリスクは顕在化しないまま水面下に存在しています。不適合の指摘と是正処置が狭い範囲にとどまり、実効が上がらないという事例はよく見受けます。効果的な指摘をするアプローチでは、監査員は、先ず「目的は何か」を具体的に認識しなければなりません。目的は業務の改善にあるとするならば、不適合を発見したら、業務プロセス全体を調べ、関連がありそうな問題やリスクの構造を理解することから始めます。その上で、リスク発生の防止に最も効果がありそうな要素を抽出し、取組むべき課題を絞り込みます。監査員がこれらをうまく行うには、指摘の裏づけとなる一連の事実情報を監査現場で限られた時間内に集め、その内容を被監査者と共有する能力が必要となります。情報入手の多くは被監査者との間で会話によって行われますので、そのためのコミュニケーション能力も欠かせません。
このような能力が簡単に身につくものとは思われませんが、能力ベースとして目的分析力、分析評価力、情報収集力、コミュニケーション力を監査員のレベルアップカリキュラムに必須科目として取り上げられたら効果的だと思います。
Q 24 : 内部監査員の実行能力はどのようにしたら測ることが出来ますか。
A 24 : 内部監査員の能力を測ることはなかなか難しいことです。能力を測るには基準が必要ですが、まずは目的を充分に分かっている人かどうかが問題です。さて、能力を測る基準は大きくいうと次のようなものです。
- ・ 品質活動および関連する結果が計画されたとおりになっているか評価する能力
- ・ マネジメントシステムの有効性を確認する能力
この能力は、内部監査による指摘に現れます。組織は、内部監査によって組織の仕組みが良くなることを望んでいます。被監査者を含め、多くの人が「なるほど広い視野から良い指摘をしてくれた」と思ってくれる指摘が出せるかどうかが重要です。良い指摘を出せるかどうか、すなわち能力を測る基準は次のことにあると思います。
- ・ 客観的に見ている。
- ・ 個人的感覚を大事にする。
- ・ 広い視野でみる。
- ・ 指摘が目的に適っている。
- ・ サンプリングを適切にできる。
- ・ 集めた資料から問題点を発見できる。
- ・ 被監査者と友好的なコミュニケーションができる。
- ・ 問題点を明快に文書化できる。
- ・ 監査チーム内で指導力を発揮できる。
- ・ 監査チーム内で協調性を発揮できる。
これらを基準にして監査員を評価することで実行能力を測ることができます。更に最終的評価方法として、仕組みの改善に結びついた指摘数及びその内容を基準にすることが考えられます。
関連コース
内部監査員2日間コースとして、下記のコースがございます。併せてご覧ください。
【品質】ISO 9001内部監査員2日間コース
【環境】ISO 14001内部監査員2日間コース
【情報セキュリティ】ISO/IEC 27001内部監査員2日間コース
【労働安全衛生】ISO45001対応 労働安全衛生内部監査員2日間コース
【食品】ISO 22000:2018年版対応 ISO 22000 内部監査員2日間コース
内部監査員スキルアップコース(1日)コースはこちらをご覧ください
【品質】ISO 9001:2015対応内部監査員スキルアップコース(1日)
【環境】ISO 14001内部監査員スキルアップ1日コース
【情報セキュリティ】内部監査スキルアップコース