平林良人の部屋は、50回にわたって連載してきた「ISO 19011に準拠した内部監査に関する質問50選」が終了しましたので、今回から新シリーズ「内部監査の実践」を始めます。

新シリーズ「内部監査の実践」では、A社B事業本部のQMSをISO9001:2015に沿って、具体的にどのように内部監査するかを、実例を中心に説明したいと思います。
その際、「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選2019.11.1」
https://www.technofer.co.jp/iso/mr-qa100-01/)、及び
「ISO 19011に準拠した内部監査に関する質問50選」
https://www.technofer.co.jp/iso/hirabayashi-room/)を随時参考にしていきます。

A社の概要は次の通りです。
【会社概要】

A社は,戦後1946年にA製品を主力製品とするメーカとして創業されたが、時代の変遷とともにA製品からB製品に主力製品は変わった。
A社はB製品の生産を続けるかたわらC製品,D製品を独立に開発した結果,その技術の独創性のゆえに市場で飛躍的な発展を遂げ,現在は国内で10事業所,海外に2工場,国内外に30営業拠点を持つまでに至っている。 A社の理念は次の通りである。
 1. 社会に貢献する。
 2. 社員を大切にする。
 3. 独創性を伸ばす。

以下にA社の品質マニュアルを掲載します。
品質マニュアルは従業員全員が知っているべき文書ですが、実際は品質マニュアルを使う場面が来ないと読まないのが現実だと思います。内部監査員も監査の時に品質マニュアルを改めて読むという方が多いと思います。
品質マニュアルは内部監査の基本文書となるもので、内部監査員は事前に必ず読んでおくことが必要です。加えて、品質マニュアルに記載されている標準書を事前に読んでおくことが推奨されます。

【A社品質マニュアル】
この品質マニュアルは,A社B事業本部が製造するB製品・C製品の設計からサービス提供までの品質保証活動に適用する。
〔対象組織〕 A社B事業本部
〔対象製品〕 B製品,C製品
目次
 1 経営
  1.1 組織
  1.2 方針
  1.3 経営会議
  1.4 内部監査
 2 品質マネジメントシステム
 3 営業
 4 設計
  4.1 全般
  4.2 設計及び開発の計画
  4.3 インプット
  4.4 アウトプット
  4.5 設計審査
  4.6 設計変更
 5 購買
  5.1 全般
  5.2 下請負契約者の評価
  5.3 購買データ
  5.4 購買品の検証
  5.5 購入者による支給品
  5.6 購入検査
 6 製造
  6.1 工程管理
   6.1.1 全般
   6.1.2 特殊工程
  6.2 製品の識別及びトレーサビリティ
  6.3 工程内の検査及び試験
  6.4 最終検査及び試験
 7 検査及び試験
  7.1 検査,測定及び試験の装置
  7.2 検査及び試験の状態
  7.3 検査及び試験の記録
 8 不適合品の管理
  8.1 不適合品の処置
 9 是正処置
 10 取扱い,保管,包装及び引渡し
  10.1 全般
  10.2 取扱い
  10.3 保管
  10.4 包装
  10.5 引渡し
 11 文書管理
  11.1 文書の承認及び発行
  11.2 文書の変更・改訂
  11.3 品質記録
 12 教育・訓練
 13 サービス
 14 統計的手法
 15 付録

☆会社内部へ配布する品質マニュアルはすべて管理コピー※とする。
会社外部への配布については品質保証部長の認可した者に限る。この場合,表紙の非管理※表示を明確にし,すべてのページに「非管理」 の印を押す。
注〕 管理コピーとは,配布後,品質マニュアルの改訂ごとに差し替えをするコピーのことをいい,改訂があっても差し替えの必要のないコビーを非管理という。

☆管理コピーの所有部門
 番号 所 有 者
   1 取締役事業本部長
   2 企画室長
   3 総務部長
   4 人事部長
   5 開発部長
   6 生産管理部長
   7 購買部長
   8 設計部長
   9 技術部長
  10 品質保証部長
  11 製造工場長
  12 第1製造部長
  13 第2製造部長
  14 第3製造部長

☆ 品質マニュアル標準 KQM 101

☆ 改訂歴
(1) 改訂にあたっては,追番をつけ,改訂暦表にその概要を記述する。
(2) 改訂部分は品質保証部によって管理コピー保有者全員に配布される。
 ① 改訂コピー受領者は,差し替え後,受領サインをして,旧ページとともに品質保証部へ返却する。
 ② 非管理コピー配布先には改訂手続きは実施しない。
(3) 品質マニュアル改訂の要求は,品質マニュアル保有者全員の権利と義務であり,「経営会議」において,或いは必要となった時は何時でも「品質マニュアル見直し要求書」を用いて品質保証部長に要求、要請することができる。
 ・品質マニュアル見直しのポイントは、各部門の実務における変更管理である。
(4) 品質マニュアルの正式な見直しは「内部監査」の後,最低年に1回は実施される。

次回はA社の品質マニュアルの続きを示します。
(つづく)