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「設計審査標準 KDR105」を対象にした内部監査の実践についてお話をしています。
内部監査で発見された事項を対象に「ナラティブ内部監査」を実践してみたいと思います。
まず<指摘事項1>についてです。
<指摘事項1>
過去3年間に行われたDR議事録を見させてもらい、出席者の力量(どんな基準で選出・任命しているのか?)を確認したところ、第8条に決められている「必要な専門知識・経験を有する適切な委員を選出・任命する」ことのうち「必要な専門知識・経験を有する」基準がなかった。
<根拠となる規定>
「設計審査標準 KDR105第8条」 DR委員長は各部門から、必要な専門知識・経験を有する適切な委員を選出・任命するものとする。必要な場合、社外からの委員を選出・任命する。
「ナラティブ内部監査」とはどういうものかについての説明は、研究会が開かれていますのでそちらを参考にしていただければと思います。一口で言えば内部監査のマンネリを打破するために工夫されたもので、その推進には5つのステップがあります。その概要は次回にさせていただくことにして、ここではナラティブ内部監査の核心である「新しい物語作り」にそって指摘事項を考えていきます。「物語作り」は「起承転結」に沿って行います。
【起】指摘事項を書くに至った経過について書く。
- 監査した職場(設計部)、内部監査で観察したこと、その中でおかしいと思ったこと(観察事項)。
- 観察事項が業務の規定に沿って行われているかどうかについて検討したこと。
- その結果、「設計審査標準 KDR105第8条」に沿っていないことが判明したこと。第8条のどこの記述に反しているのか。
- 当初、被監査者は「必要な専門知識・経験を有する適切な委員を選出・任命」していると主張したが、監査員の「でも明確な基準がないと設計審査に参加する委員の力量にばらつきが出てしまい、設計図書の完成度に影響を与える」との指摘に、「基準(書)が必要である」との共通認識にいたった。
【承】今までどうであったか、今に至った過去の出来事を書く。
- いままで設計審査に出席していた委員(部署ごと2,3名)の経歴を調べる。
―入社後の職歴/年数(a)
―保有資格(b)
―今までに受けた教育訓練(c) - いままでの設計審査で出された指摘について記録を調べる(過去3年分くらい)
―指摘件数
―指摘をした人の経歴 - いままでの設計審査出席者の経歴実績から(a)、(b)、(c)はどうあるべきかを検討する。
【転】これからどうすべきかについて書く。
- 設計審査に出席する人は、設計の対象となっている製品/サービスに関しての知識とスキルを十分に持っている人でないと専門的な指摘は出来ない。
- そのため、「設計審査標準 KDR105第8条」では、「必要な専門知識・経験を有する」基準について触れている。しかし、今回明確な基準(書)が無いことが判明したので、基準を作成することに被監査者、監査員が共通の考えを持つに至った。
- 基準(書)を作成するに当っては、【承】(a)、(b)、(c)を参考にする。
【結】物語の結末ですので、指摘事項の歯止めをどうするかを書く。
- 設計審査標準に沿って、「必要な専門知識・経験を有する」基準を規定書として定める。
- いつまでに、誰が作成するのか決める。規定書の管理番号を決める。
以上のように、「設計審査標準 KDR105第8条」には、「必要な専門知識・経験を有する」基準について触れているだけで、その基準を規定書にするという規定はないが、組織のパフォーマンス向上(設計審査の質向上)のためには、明確な設計審査に参加する者の要件を決めておくことが必要であるという見解に被監査者も同意したところにナラティブ内部監査の今までと異なった点があります。
(つづく)