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「設計審査標準 KDR105」を対象にした内部監査の実践について続けていきます。
「ナラティブ内部監査」を実践して「新しい物語作り」を「起承転結」で行っていきます。
「新しい物語作り」をする前に、「ナラティブ内部監査」の5ステップの続きを説明します。
- 第1ステップ : 今行っている内部監査をレビューする。
- 第2ステップ : どのような内部監査を行いたいか、行うべきかを組織内でコンセンサスを得る。
- 第3ステップ : 内部監査員、被監査者の共同作業の基盤を作る。
- 第4ステップ : 発見された問題(不適合、観察事項、気づき事項)などを解決する。
- 第5ステップ : 問題解決したことを水平展開、歯止めして改善する。さらに、改善したことを革新へのインプットにする。
前回は第3ステップ(新しい物語作り)を説明しましたので、今回は第4ステップを説明します。
https://www.technofer.co.jp/tsubob/index.php/2021/10/13/vol-330/
第4ステップには “発見された問題” とありますが、問題とは何でしょうか?従来の内部監査における「不適合、観察事項、気づき事項など」が問題なのですが、「ナラティブ内部監査」ではそれ以外も「問題」と考えたいと思います。私たちは内部監査で “これはおかしい” と感じたことが多くあると思いますが、この第一印象は大切にしたいと思います。
私たちは “これはおかしい” と感じることはあっても、仕事全体は進んでいるので、それほど多くの問題が存在するとは思わないようです。
しかし、本当にそうでしょうか? もしかすると本当の問題に気が付かないだけなのかもしれません。実は私たち職場には多くの問題があります。問題だらけの世界の中にいると言っても過言ではないと思います。ただその本質に気づかない、気づいても一歩踏み込んでいないのです。
問題の起きる領域は、マーケッティング、労務、調達、製造、環境、安全、経営など現場から管理部門、経営者にいたるまで実にいろいろな職域、すなわち全社にわたっていると言えます。領域がさまざまであるだけでなく問題の質もまたさまざまです。原因のはっきりしているものもあれば、原因がはっきりしないものもありますが、すべての問題に対して切り込んでいくことが望まれます。
この続き(第4ステップ)は次回に回して、早速、<指摘事項3>について「新しい物語」作りをしていきたいと思います。
「新しい物語作り」は、第3ステップの中で行う作業です。
●指摘事項3
DR委員会で指摘された事項について議事録を見せてもらい、DR対象製品の市場での評価を確認した。
市場で問題が出ている製品について、その問題と該当DR後の対策について聞いたが「具体的対策が設計に反映された」記録は無く、DR活動の実施状況を品質管理部が確認した記録も見ることが出来なかった。これは第14条の規定に適合していないと判断できる。
<第14条>(フォローアップ)
設計部は、DR委員会で指摘された事項について、担当設計部門の採否を踏まえ、その具体的対策が設計に反映されたか否かを確認し委員長に報告する。品質管理部は、DR活動の実施状況を確認する。
ここでもナラティブ内部監査の核心である「新しい物語作り(起承転結)」に沿って指摘事項を考えていくことにします。
【起】指摘事項を書くに至った経過について書く。
- 内部監査員は、設計部で観察する重点事項をあらかじめ決めていた(チェックリスト)。重点観察事項の一つは、「設計審査標準 KDR105」の第14条に規定されている事項であった。それは、最近市場で起きたA品質問題について、その原因が設計にあると聞かされていたので、該当A製品のDR記録を確認したいと思っていた。
- 観察した結果、「設計審査標準 KDR105第14条」に規定されていることが確認できなく、適合していないことと判断した。第14条の規定のどこに反しているのか。→ 「DR委員会で指摘された事項について、担当設計部門の採否を踏まえ、その具体的対策が設計に反映されたか否かを確認し委員長に報告する」ことが確認できない。
また、「品質管理部は、DR活動の実施状況を確認する」ことが確認できなかった。
- (議論)
- 内部監査員:最近起きたA製品の市場クレームについて、その原因が設計にあると聞いたのでA製品のDR記録を見させていただきました。
DR記録には「A部品の機械強度は大丈夫か?」という発言が残っているが、それに対する対応が確認できなかったが、どのような設計対応をしたのか聞かせてほしい。 - 被監査者:A部品のDR検討会は3年前のことなので、DR記録に記載以上のことは現在確認できない。「設計審査標準 KDR105第14条」には、「その具体的対策が設計に反映されたか否かを確認し委員長に報告する」となっているので、報告されていると思うが、どんな報告がされたか、いまとなっては確認できない。
- 内部監査員:今回のA製品市場クレームは設計における強度計算に原因があるようなので、どんな対応をしたか知りたいところであるが、事実の確認が出来ないのであれば、今後どうすべきであるか検討する必要がある。
さらに、「設計審査標準 KDR105第14条」には、「品質管理部は、DR活動の実施状況を確認する」と規定されているが、品質管理部がどんな確認をしたか分かりますか。 - 被監査者:それは品質管理部に聞かないと分からないが、DR記録を見た限りでは品質管理部が確認したという記録は見当たらない。
- 内部監査員:A製品については分かりました。他の製品についても知りたいので、今までの3年分のDR議事録を見させていただけませんか。
(つづく)